サブstory
夜勤ナースから日勤ナースへ引き継がれ病棟の新たな1日が始まる。夜勤明けの優愛は病棟をでて足早にロッカールームに向かっていた。当直明けの嵐と待ち合わせをしていた。着替えを済ませ嵐が待っていてくれるであろう場所に急ぐ。その時、鞄の中のスマホが着信を知らせる。
あっ、嵐からだ。
「嵐、今向かってるよ」
「職員通用口にいるわ」
「えっ? いつものように車まで行くよ」
「取り敢えず職員通用口で待ち合わせな!」
「うん、わかった」
職員通用口付近の壁にもたれた嵐を見つけて声をかける。
「嵐」
「優愛お疲れ」
「嵐もお疲れ様」
「おう。それじゃあ行くか」
「うん」
警備室の前を並んで歩く私たちに、お疲れ様でしたと笑顔で声をかけてくれる警備員に笑顔を返し通用口を出た。
そんな私たちに声がかけられた。
「あの、華村さん」
私を呼ぶ声に立ち止まる。
「あっ、渡辺さん退院外来日でしたか? お身体変わりはないですか?」
「はい。あのう」
渡辺さんが言葉を続ける
「退院の時、話せなくてここに居たら会えると思って」
私たちの様子を見ているであろうはずなのに、言葉を続ける渡辺さん。
「華村さん、入院中は親切にしてもらって嬉しかったです。あの優しさに不安だった心が癒されました」
「担当看護師として当然の事をしただけですから」
「それだとしても本当に嬉しかったんです」
一歩も引かない渡辺さんに、困っていたら嵐が
「入院中に担当してくれる看護師って誰でも天使に見えるんだよ。でも、勤務が終わればあの優しい顔をしたナースは豹変すんだよ。コイツは悪いけど俺のだから他を当たって」
「こんな気持ちになったの初めてなんです。やっぱりあの退院の日に伝えていたら良かったんですよね」
「あの退院の日に言われていても何も変わりませんよ。嵐とは昨日今日付き合い始めたんじゃないから」
「そんなぁ」
「そろそろ外来受診にいかれた方が良いんじゃないですか。お身体お大事に」
そう伝えると外来棟に向かって歩いていく渡辺さんを確認して、私たちも嵐と駐車場へと歩き始めた。