リンゴ
―僕の家に毎日遊びに来るリンは必ずリングを持ってきた。
そのリンゴは完熟のしみ1つ無い真っ赤なきれいなリンゴ。
綺麗な赤色で中の蜜まで甘くとても美味しかった。
それといつもセットでついてくるリンの笑顔。
リンゴの甘さとリンの笑顔は絶妙なハーモーニーを生み出し静かで殺風景な僕の部屋は華やかで明るい日を浴びて生き生きと育った花の中に居るようだった。
ずっと続くと思ったこの幸せ。だけどあの日を境にその幸せは途絶えた―。〜2月〜
「お邪魔しまぁーす!」
とても明るい声を発して僕の部屋の扉を開けたリン。机の前の椅子に座った僕を見て微笑みリンは
「はぃ!いつもの!!」
と言ってリンゴを手渡してきた。
「……ありがとう」
「ううん?龍が喜んでくれるならいつでも持ってくるよ!」
そう言うと僕のベッドに寝転がり本を読み始めた。
「…今日は何時までいるの?」
そう僕が問うとリンは少し考えたような仕草をして
「7〜8くらいかな?」と言った。
彼女は一人暮らし。少額年の頃に両親を亡くし僕の両親が一緒に住まない?と問いかけても両親との思い出の場所から離れたくないと言っていつも断る。
僕が問いかけた時もそう言ったので僕が条件を出した。
『その代わり毎日僕の部屋に来ること…いい?』
リンはその言葉を聞いてうれしそうに頷いたのを今でも覚えている。
リンと居ると幸せだという気持ちが実感でき時間がたつのも忘れてしまうようだった―。