第69話 木星制圧の後で。
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第69話 木星制圧の後で。
二日後の夜、夜勤でナースステーションにいた私とシュシュは、ナースコールで呼び出された。
他のナースたちも当直でいたので、私とシュシュでコールを鳴らした患者のもとに行った。
そこでは、夢にうなされる患者と、他の患者たちがいた。
4人部屋だったので、うなされて苦しんでいる患者の声がうるさいと、私たちを呼び出したのだ。
「こいつ、うるさくて寝られやしない。何とかしてくれよ、ナース」
私たちのことをナースと呼ぶのは、いささかイラッと来たが、それは心に閉まって、うなされている患者のもとへ行く私たち。
まぁ、ナースだし。
「アイヴィー先輩、どうします?」
シュシュは私に尋ねる。
「これは、悪夢にうなされているのね」
「みたいですが‥‥‥。このままじゃ他の患者さんに迷惑ですよ」
私たちにも迷惑な話だが、本物のナースはそんなこと思ったりはしない。
その辺が、私たち臨時で召集された従軍ナースと本物のナースの違いだろう。
私もそこまで人間が出来ている人では無いのだ。
木星を落としたのち、こんな事態は考えていなかった。
ここは地球ではないのだ。
それでも、現代の超ストレス社会の地球では、病んでいる人も多くいたのだが、私は自分には関係ないと思っていた。
自分自身、そういうのにかかったことがないのもあるが、正直分からないのだ。
なった人にしか分からないことだった。
メンタルが弱い人がかかるモンだと思っていたので、戦場での地獄を見た兵士たちの精神の摩耗は、理解に苦しむ。
というか、理解して自分も苦しんだら嫌だとまで思っていた。
これが本音だ。
でも、シュシュは違った。
「先輩、この人を部屋から移動させましょう」
「え、どういうこと?」
「空いている一人部屋に寝かせて、首に巻ける物とかを置かないようにするんです」
「そんな勝手は‥‥‥」
「いいえ。急ぎましょう。それと、アンドロイドのビアンカさんに、精神安定の薬を処方してもらいましょう」
「わ、分かったわ」
私とシュシュで、患者を抱えると、空いている一人部屋を探して、その部屋に移した。
そして、精神安定剤と抗精神病薬を揃えてもらうと、私たちは液状アキネトンを患者に注射した。
ゆっくりと眠りに入る患者。
「これで良しですね」
シュシュは安心したように、笑顔になった。
ホントにこれで良いのか?
まぁいいけど。
私は一応、バイタルサインチェックをすると、ナースステーションの人に報告に行った。
事情を説明して、了解をもらう。
「先輩、ああいう人は、心が苦しいんです。分かってあげてください」
シュシュの言葉に、私は自分の心を読まれているんじゃないかと図星にダサさを感じた。
私よりも、シュシュの方が対応が早かったことに、一抹の悔しさを感じるとともに、自分自身の心の弱さも知ってしまったようだ。
言い訳が必要になるような気分になり、それも自分の弱さへの考えなのだと気づいてしまい、認めたくない心内を知ろうとしなかった。
私は悪くない。
嫉妬してもいない。
自分はもっと強い。
シュシュの行動の速さも、私は私でちゃんと対処は出来た。
そう思う自分がいた。
それはとても恥ずかしいことだったが、私のちっぽけなプライドが、それを理解するのをさまたげた。
強い自分でありたいのが、私のプライドなのだ。
それを曲げるのは、気持ちが悪くなる。
しばらくして私は、自分の心が固まっているということに気付いて、情けなさが感情に出そうになった。
しばらく一人になりたかったが、私は自分の仕事があるのに気付いて、ナースステーションへと戻っていった。
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