第68話 兵士たちのPTSD
寝る前に更新しておきます。
第68話 兵士たちのPTSD
私たちは軽傷で済んだ兵士たちに手を貸した。
もう、男性の一人や二人、支えるのに苦は無い。
それだけのトレーニングをしてきたのだから。
でも、兵士の中には、戦場で殺されそうになったがために、気を砕かれてしまった人も多くいた。
「何なんだ、あいつらは‥‥‥。撃っても撃ってもウジ虫のように這い出てきやがって」
兵士は戦場でのショックを隠せないでいた。
これがPTSDなのか。
兵士は突然、銃を出して、口の中に銃口を入れて、引き金を引いた。
パン!
私は寸でのところで、銃を取り上げた。
銃は暴発しただけで、兵士は死ななかった。
こんなところで死なれたら、こっちはたまったものじゃない。
「死んではダメです。生きてください!」
私は兵士を叱りつけた。
私は怖かった。
目の前で自決されては夢見が悪いだけでは済まない。
私たちは私たちの仕事をしなければならないのだ。
戦闘時なら、敵のレーザー弾で死ぬこともあるだろうが、この病院船ではそんな死に方は許せない。
私だって気を引き締めているんだ。
戦いに身を投じて死ぬより、兵士たちのメンタルの方が心配だ。
それでもまだ、ここは木星。
グラデュアル軍も、ようやく転進をしているらしいし、それを追っかけるように、次の惑星へ向かわなければならない。
戦いはまだ、ずっと続くのだ。
私たちも、従軍ナースとして一緒に戦場へ行く。
それまでに、私たちの役割はもっと過酷なものになっていくだろう。
死は怖い。
心を壊されるのも怖い。
それでも、戦い続けるのだ。
私は妹のマリアのために。
皆、それぞれ地球に残してきた家族や親しい人たちがいるだろう。
その人たちのためにも、地球を守るためにも、前線へ出て行って、敵を倒す。
それが与えられた任務なら、完遂することの方が大事だ。
私たちナースは負傷兵を助ける。
それが今の役目だからだ。
もっと気を引き締めて欲しい。
しかし私は分かってなかった。
兵士というよりも、人として皆、大なり小なり心に傷を負っているのだということを。
それが分からなかったのは、完全に私の失態である。
戦争に行く時は、勇敢で自信にあふれた兵士たちが、戦場で見たものは、私たちが想像を絶する出来事なのだということは、私にはほとんど感じてなかったのである。
戦いが終わって、泣き出す兵士もいた。
頭がボーッとなって、フラフラ歩く人もいた。
彼らは何を目にしたのだろう?
とにかく、この木星での戦いは、雪の中で砲撃とレーザー弾の嵐に、精神が耐えきれない戦いだったということだ。
神経の摩耗もひどかった。
こんなんで、次の惑星ではちゃんと戦えるのか心配になってきた。
意気地のない兵士もいるとだけ、思っていた私は、次第に彼らを避けるようになってしまっていた。
この木星での戦いというのは、今後の悪夢にうなされるほどの恐ろしさを、地球軍兵士たちに刻み込んだ戦いだったのだ。
全員をレッドクルス号に乗せ終わると、私はベッドでぐっすりと眠りこけてしまった。
さすがに今日は疲れた。
しかも、今までの疲れ方とは違う、気疲れのようだった。
私も心が疲れてる。
気を引き締めないといけないのだが、今は眠りたい。
私たちナースは、これからどうすれば良いのだろう?
戦場で兵士たちが狂ってしまうんじゃ、どうすれば良いのか分からない。
そう思いながら、私は泥のように深い眠りに入っていった。
ご感想やレビューもお待ちしております!!




