第63話 アイヴィーの負傷
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第63話 アイヴィーの負傷
私たちは雪原に足を踏み入れた。
今度は戦場の雪降る大地だ。
雪原には多くの戦闘員が転がっていた。
血もたくさん飛び散ってる。
これが白兵戦のアフターマスか。
私は信仰心が強いので、運命の女神に祈ることも稀ではない。
今ここで頼れるのは、女神と他のナースたちだけだ。
私は負傷兵や、戦火に散った兵士たちに対して、必要以上に感情は入れないようにしていたが、今、目の前に内臓が飛び出てる、倒れた兵士の姿を見ると、涙が溢れそうになった。
この人たちは、地球のために戦った英雄だ。
ここで死ぬなんて、どうしても受け入れる準備が出来てなかった。
倒れている兵士の中に、オメガの姿もあった。
ここで負傷したらしい。
オメガは私を見て、手を挙げる。
生きているんだと言う証拠だ。
私はオメガを起こそうとした。
しかし、体の胴体から下は、どこへ行ったのか、無くなっていた。
オメガは、手に持ったハンドガンを、自分のこめかみに突き付けた。
パン!
銃声がこだました。
オメガは自決した。
もう助からないと悟ったのか、その場に崩れ落ちるオメガの死体。
兵士たちは皆、地獄を見てるのだ。
辺りには血と火薬が焼けるような臭いしかしない。
私たちは出来るだけ多くの負傷兵を、その場から運んだ。
ナース総出でだ。
レッドクルス号の中は、騒然となった。
火星での戦いの後よりひどい。
私は負傷兵たちをレッドクルス号へと搬送するために、雪原の上を行ったり来たりした。
そのうち、私はナース服が汚れてくるのを感じた。
ここでは汚れない方がおかしいのだ。
そうしているうちに、敵の残党が100人ほど、こちらへやって来た。
敵は自動光銃で私たちを狙う。
従軍ナースを狙ってはいけないと、新ジュネーブ条約で決まっているのだが、連中はお構いなしだ。
まぁ、先に敵の病院施設や野戦病院を攻撃したのは地球軍の方なので、相手は大義名分があるということなのだろう。
私たちも退避せねばなるまい。
負傷者を全員レッドクルス号に運び込むことは無理だった。
それでも私は、自分の使命を果たすため、一人でも多くの患者を運んでいく。
その時、敵の放ったレーザー弾が私の肩をかすめた。
レーザーの熱が、私の肩の骨まで伝わる。
それを食らうと、私は強烈な痛みを感じ、雪原に倒れた。
強烈な痛みは熱い熱を発したように、赤く腫れあがっていた。
私は敵の自動光銃に撃たれたのだ。
それを認識するのに時間が掛かった。
しかし、一旦それを意識すると、猛烈な吐き気を覚えた。
傷口を見るものではない。
私は血の気が引いて、蒼白の顔になった。
これはマズい。
本当にマズい。
このまま私は死ぬのだろうか?
やり残したことや、妹のマリアの影が、私の脳裏によぎった。
私が意識を失いかけてきた頃、私は誰かに担ぎ上げられたことに気付いた。
この感触は、シュシュだ。
私を運んでいるらしい。
私は負傷兵ではないのに、出しゃばっちゃダメだろう。
ナース一人を運ぶのなら、地球軍兵士一人を運ぶ方が、理にかなっているはずだ。
それなのに、私を先に助けるなんて、あとでお仕置きしなきゃ!
お仕置きするためにも、私は生き残らなければならないという、生きる意味を感じた私だった。
私、アイヴィー・クリステル・ボルチモア一等兵曹は、これより負傷ナースとして、レッドクルス号に運ばれます。
皮肉にも私の後輩のシュシュの手によって、搬送されるという嫉妬心が、私の感情に襲い掛かった。
読者の皆様に幸あれ!!




