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ザ・レッドクルス  作者: あばたもえくぼ
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第42話  戦争中毒の恐ろしさ

だんだん暑くなってきました。

第42話  戦争中毒の恐ろしさ


 戦闘は終わった。

火星の民は、守られたのだ。

市街地ノアでは、祝福された。

レッドクルス号で運んだ負傷兵たちの半数は、ノアの病院施設に預けられることになったのだ。

火星からグラデュアル軍が、撤退したのは、その二週間後のことだという。


 私たちもまた、仕事が減って、喜ぶ者もいた。

実際は、負傷兵など一人も出ないことが、一番なのだけど、それは理想論に過ぎない。

戦いとはそういうものだ。

死体がたくさん転がる戦場から、目を背けてはいけない。

現実、そうなのだから。

戦況はニュースで、地球にも報道が行っているだろう。

戦場メディアが、連日報道しているのは知っている。

今回の火星での兵士の活躍は、英雄として紹介されているのだ。

そんな情報すら、私たちのもとへ届くのだ。


 火星を取り戻したが、被害は甚大で、今でも地球では、さらなる戦争参加を呼び掛けている。

軍需工場は徹夜で武器や軍艦を造ってるし、献血で血を多く国民からもらっているのも事実だ。

それにまだ、グラデュアル軍は木星に陣取っているのだ。

連中からすれば、転進なのだろうが、私たち地球人からすれば、火星のグラデュアル軍を、施設や基地もろとも陥落させたようなものなのだ。

戦局はこちらに分があるのは確実だった。


 私たちナースは、交代しながら、負傷兵の手当てに追われていた。

こっちが私たちの戦場だった。

私たちは忙しくしていた。


 兵士たちの治療には、そんなに手間は取らなかったが、数が多過ぎるのだ。

麻酔が足りないこともあれば、痛み止めの薬が不足している時もあった。

地球から来た補給軍艦が、物資を大量に持ってきてくれたので、それ以降はいろいろと助かった。

医療品の確保はありがたかった。

どんなに優れたナースがいようとも、医療道具や薬が無いと、何も出来ない。

病院船であるレッドクルス号と言えども、そこまで万全では無いのだ。


 それでも、私たちナースが一番厄介な直面に立ったのは、ある兵士だった。

傷も回復して、歩けるようになった患者だったが、その兵士は、すぐにでも戦場へ戻りたいと駄々をこねる毎日ばかりだったことだ。

戦場にはもう、地球のマークが描かれた旗が、立てられていることを知らないようだった。

火星は陥落させたというのに、まだグラデュアル軍を殺しに行きたいと、連日言い続けて、昼も夜も、ベッドの上で震えているのが分かった。

彼は、恨み足りない殺し足りないグラデュアル軍を、ひたすら殺しに行きたがっているのだ。

火星のグラデュアル軍は撤退してしまったことを理解しないほど、狂ってしまってるようだった。

いわゆる戦争中毒の患者なのだ。

危険なので、地球に戻して隔離してもらうことになった。

彼ほどの戦争中毒者が出るのは、まれではないようだった。

殺すことでしか、生きてる実感が湧かないのだ。

その闘争心や殺戮心は、恐ろしいものを感じた。

目が殺しに行く人間の目だったのだ。

私も恐怖を感じた。

こういう人が、これからもっと増えるだろう。

私のナースとしての本分を超えることが、この先にもあるような気がした。


戦争は恐ろしい‥‥‥。



読者の皆様に幸あれ!!

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