第41話 戦争捕虜はどうすれば?
もう夏ですね‥‥‥。外は暑いです。
第41話 戦争捕虜はどうすれば?
大規模な戦闘が終わる頃、夜が明けた。
太陽の光が強い。
私たちナースは、前線に立つ、負傷兵たちのボロボロの体に、手を貸していた。
特殊合金のヘルメットや、パワードスーツを脱がせて、一人ひとりレッドクルス号まで、歩かせていた。
中には手や足を失って、出血のひどい兵士もいて、止血帯を使って血が流れるのを止めていた。
私たちの周りを、地球軍空中戦艦が多数、移動を続けている。
戦況は地球側のモノとなった。
グラデュアル軍は撤退するか、死体になるかしていた。
前線はおびただしい数の死体が転がっている。
顔面が潰れて、顔がよく確認できない死体もあって、これこそ地獄だと思った。
普通なら吐くところだが、有事の今は、そんなの気にしてられないのだ。
私たちが負傷兵をレッドクルス号まで担ぎ込んだあとは、倒れている兵士たちの生存者探しになった。
グラデュアル軍の死体も、ものすごく多かった。
生きてる生存者は、かなりいた。
見捨てることはしないので、息があって、手を貸せば歩ける者から順に、レッドクルス号へ運ぶ。
その中に、グラデュアル星人もいた。
衛生兵のクリスは、グラデュアル星人の確認をした。
「こいつはまだ、生きているな。捕虜として扱おう」
クリスは、私にこのグラデュアル星人の治療を頼んできた。
「捕虜はどうなるんですか?」
私はレッドクルス号へ入れる前に、クリスに訊いた。
「まぁ、尋問して、敵の作戦やいろんな情報を訊きだすんだ。グラデュアル星人の軍備や秘密事項なんかを吐かせてから、保護しよう」
尋問‥‥‥。
戦争してるんだから、捕虜への拷問などはしないだろう。
新ジュネーブ条約で、捕虜への虐待は、固く禁じられているのだが、よその星から攻めてきた宇宙人にも、それは対象になるのだろうか?
どっちにしろ、手当てしてあげることが私たちナースの任務だ。
その時、そのグラデュアル星人は、どこから出したのか、アンプルに入った液体を口に入れ、飲み込んだ。
苦しみの中で、そのグラデュアル軍の兵士は言った。
「グラデュアル総統閣下、万歳!」
そう言うと、そのグラデュアル星人は白目をむいて、倒れる。
クリスがそばに来て、生死を確かめた。
「毒だ。青酸系か何かの毒を飲んで、自分から死んだんだ」
冷静に判断する、衛生兵のクリス。
「こいつの死体は戻してきてくれ。もうここに置いても意味無い」
私は、足元に倒れたグラデュアル星人の体を引きずって、レッドクルス号の外に出した。
その時、グラデュアル星人の着ている軍服から、何かが落ちた。
地球で言う写真のような、肖像画だった。
女性と子供の顔が、血で汚れたところから、見え隠れする。
このグラデュアル星人の家族なのだろうか?
妻子を置いて、戦場へ来たのだと思う。
それをその肖像画は物語っている。
私にとってのマリアや、おじいちゃんおばあちゃんだ。
皆、大切な人たちを残して、戦争へ駆り出されているのかもしれない。
敵も同じなのだ。
私は心がチクリと痛んだ。
国に尽くして、毒で死んだのだ。
このグラデュアル星人も、私たち地球の人類と遜色ないのかもしれない。
でも今は、私の心の内に、そういう思いは閉まっておこう。
戦場で迷いが生じれば、やっていけない。
敵をよく知るつもりはない。
未来のために、私は大事なことを忘れる努力をしよう。
過去はいい。
今現在、私が出来ることは、戦場で、多くの地球軍兵士を救うことだけなのだ。
それに集中したい。
敵も私たちを殺す気で来ているのだ。
どちらかが降伏するまで、この戦争は終わらない。
いや、きっと地球側が勝利するに違いない。
そのためにも、私は自分の任務を果たす。
こんなところまで、駆り出されているのだから‥‥‥。
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