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ザ・レッドクルス  作者: あばたもえくぼ
37/80

第37話  サンジェルマン艦長

二話、同時に更新です。

第37話  サンジェルマン艦長


 私はハープーン発射を命令してくれた、サンジェルマン艦長の判断に、お礼を言うために、レッドクルス号の艦橋へと行った。

艦橋ですべてのレッドクルス号の指示を出しているのだ。

「こんにちは~」

 私は扉を開けて、艦橋へと入る。

ものすごい数のコンピューターシステムがあった。

それぞれにクルーが就いていて、操縦や監視などを行っているのだ。

今は戦闘じゃないから、のんびりとコーヒーを飲むクルーもいた。


 サンジェルマン艦長は、艦長席に座って、ゆっくりしている。

「おう、君か」

 艦長は私に気付いた。

「あ、艦長」

 その時、クルーの一人、海兵隊のロイ・カーク・スチュワートが、私を止めた。

「おい、ここは関係者以外立ち入り禁止だぞ」

 私は気をつけをした。

「すみません!私、艦長に助けられて、ただお礼を言いに来ただけなんです」

 サンジェルマン艦長は、ロイに手で合図する。

ロイは下がった。

「君はナースの、確か、アイヴィー・クリステル・ボルチモア一等兵曹だったな」

 艦長の記憶力がすごい。

 確かに私はアイヴィー・クリステル・ボルチモア一等兵曹なのだが。

「さっきは私たち、助けられました。ありがとうございます!」

「いや、敵が来たら、迎え撃つのは当然だ。礼などいらんよ」

「でも‥‥‥」


 サンジェルマン艦長は、艦長席を下りると、私のところへと来た。

「外へ行くか。ついて来たまえ」

「あ、はい」

「あとは頼む、ロイ中佐」

 ロイは敬礼する。


 私と艦長は艦橋を出た。

火星の砂吹雪が、舞い上がっていた。

艦橋の下をのぞくと、艦橋がどれだけ高いところにあるのかを知る私。

飛行甲板が見渡せる。

「良いながめだろ?」

「はい」

「君は地球の出身だったな」

「ええ。アジアの方の出身ですが」

「そうか。俺は実は農村の出でな」

「農村?」

「田や畑を見たことは?」

「いえ、直接見たことはありません」

「今は都市部の人間の方が多いからな」

「そうですね。今は通信販売で、どこにいてもほとんどの物が、全部揃ってしまいますから」

「若い者は、皆そうだよな。しかし、いつか地球に戻れた時は、田畑を見に来ると良い。大切な何かを知るきっかけになるかもしれん」

「大切な何か?」

「ああ。最後の地球での大戦で、戦火が来なかった、唯一の農村だからな」

 艦長が、農家の出身だとは思わなかった。

 

 私は艦橋から見える地平線を見る。

「あの、さっきはどうして前線に誰もいなかったんですか?」

 素朴な疑問を投げかける私。

「どうやら、グルーヴァー基地の司令部が、前線の座標を間違えたらしいな」

「はぁ‥‥‥」

「こういうこともある。いや、絶対にあってはいけないのだが。そのせいで、君たちを危険にさらした。だからコスモハープーンを使ったのだ」

「そうだったんですか」

「ああ。従軍しているナースたちの命を守ることも、我々の任務の一つだからな」

「おかげで助かりました」

「その気持ちだけで十分だ。君は君の役目をまっとうしろ。俺たちは出来るだけ支援してやる」

 サンジェルマン艦長はいつも、真顔しか見せない人だが、皆を心配しているような心を持っているのだろう。

「アイヴィー・クリステル・ボルチモア一等兵曹、君はなぜナースになった?」

「え?そうですね、人の役に立ちたくて‥‥‥」

「立派な心掛けだ。だが、戦場では皆が狂う。それもまた真実だ。それを忘れないことだ」

 そう言うと、サンジェルマン艦長は艦橋の中に戻っていった。


 人は戦場では狂う。

 それを言いたかったのか?


 艦長が言ったことを、心に留めたまま、私は艦橋を降りていった。



読んでくれる読者の皆様には感謝しかありません!!

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