第32話 アイヴィーの過去・前編
女子を主役にした方が書きやすいのは、自分の個性だと思います。
第32話 アイヴィーの過去・前編
私はシュシュとレッドクルス号へ戻った。
看護師長さんは、私がレジスタンスの負傷者を、グルーヴァー基地の医療施設に運んだことに、ちゃんとした弁解があるのかを訊いてきた。
なぜそんなことで、咎められなければいけないのだろう?
私はキチンと説明をした。
説明を省くことなく、懇切丁寧に自分の意見を言った。
別に命令違反ではないはずだ。
従軍するナースにとって、上官の命令こそが絶対であるのは分かる。
だけど、特に指示が無かった場合は、自分の判断を優先する。
それがたとえ間違いだとしても。
それならば、ただの命令違反ではないのだ。
私の意見は、少々の時間はかかったが、ちゃんと伝わりはしたようだ。
サンジェルマン艦長が、少し味方をしてくれたのも、理由にはあったのだし。
艦長がどこへ運べとは言わなかったのが、そもそも悪いということだった。
だいたい、私は誰の命令違反をしたというのだろう?
まぁ、命令違反者は地球軍刑法及び懲罰令の適用を受けるのが決まりだ。
私はそれには該当しないはずだ。
そう思う。
私は営倉行きにはならなかった。
ただし、レジスタンスの患者をレッドクルス号にではなく、基地の医療施設へ運んだことは、規則に反するということで、それを勝手な判断で行ったことは、咎められ、罰として皿洗いの仕事、一週間を命じられた。
そのくらいなら、特別、罰とは思えなかった。
今の時代、皿洗いなど機械で自動で洗えるのだ。
それの補佐的な役割しかやらないのだから、別に罰でも何でもない。
それよりも私は、シュシュを巻き込んだことが気がかりだった。
シュシュもまた、私の指示に従ったことを咎められた。
何だか見せしめのような感じに思えた。
シュシュも、調理場の掃除を一週間やる羽目になったのだ。
私とシュシュは、同じ調理場を片付けていた。
「シュシュ、ごめんね。私に付き合わせちゃって」
「いえ。先輩は正直過ぎただけなんでしょ?私は構いませんよ」
「でも‥‥‥」
「誰でも間違いはあります」
「そうだけど‥‥‥」
「確かに私も、〝ん?″って思いましたけど、先輩のあとをついていっただけだったんですから。もっとちゃんと言えば良かった」
「ごめん。私は目の前のことしか見えてなかった」
「それも先輩の長所ですよ。まぁ、短所でもあるけど」
さすがシュシュ。
この状況でもやっぱり一言多い。
この子の、人をイラつかせる特技は半端ない。
「でも私には、あなたが高校に行ってないことの方が、初めて聞いて驚いたモノよ」
「なぜですか?不登校なんて、この時代じゃすごく多いですよね?未成年の半数が不登校の時代ですよ」
「ああ、そうね。ただ耳じゃ聞いても、そういう人って初めて見たから」
「珍獣のように言わないでください」
「ごめん。でも、本当に初めて会ったから、そういう人に」
「別に言わなくて良いことだし、特別なことでもないことですから‥‥‥」
「まぁ、確かに言いたくない過去があるなら、言わなくても良いかもね」
「そういう先輩は、語りたくない過去はあるんですか?」
私は逆に訊かれて、言葉を詰まらせた。
「私?」
「ええ。妹さんがいるのは聞きましたが、先輩が医大に行ってたのは、どういう理由だったんですか?」
「私の過去を知りたいの?」
「ええ。聞けるのなら聞きたいです」
「なら、話してもいいよ、シュシュ」
私は仕事で手を動かしながら、語り始めた。
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