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ザ・レッドクルス  作者: あばたもえくぼ
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第30話  戦死者の弔い

今日はコーヒーを控えます。

第30話  戦死者の弔い


 レッドクルス号がグルーヴァー基地に戻る途中で、私たちは艦内にあるチャペルに集合させられた。

前線で戦って、命を落とした兵士は、3分の1くらいいた。

その弔いのために、私たちはチャペルでキチンと並び、手を握り合わせると、その死を悼んだ。

看護師長さんが、私たちに語り掛ける。

「皆、今回の仕事で、一人ひとり、胸の内に思うことがあるでしょう。しかし、それはしまいなさい。心に余裕が無ければ、この仕事は続けられません。死と隣り合わせのこの火星で、普通に生きることでさえ困難なはずです。それにあなた方は、この戦争の兵士たちを助ける任務を負っています。忘れてはなりません。亡くなった命を。戦ってくれた兵士たちを」

 

 私は、火星にいる限り、誰一人体を休められる者はいないと感じた。

戦場で戦うことは出来なくても、戦ってくれる男の人たちを看護することは出来る。

私たちはもう、実戦の真っただ中にいるのだ。

これはもう、戦場で戦うのと同じだろう。

眠ることさえ許されずに、仕事をまっとうするのだ。


 そして、死者のために祈ろう。


 私は心から祈った。

それで心を沈められるのなら、たくさん祈ってやる。

そのためのチャペルだし、祭壇には十字架が立ててあるのだ。

祈りも人を助ける。

人を救うのが、宗教の成り立ちなのだし、私のような、よくミサへ出ていた者は、信じることこそ救われるのだと思っている。

私は神は信じてないが、運命の女神はいるのだと思っている。

自分にとっても、愛する妹のためにも、そして地球の人たちのためにも、心を空っぽにして祈った。


 私の宗派は特殊だ。

十字架にどんな意味があるかといえば、運命は東西南北にある聖地を指しているのだ。

そして、女神に祈るのだ。

そのためのチャペルなのだ。

決して汚すことの無い、まっさらな宗派だ。


 よくキリスト教と間違われるが、たぶん起源は同じなのだろう。

900年前は一緒だったらしい。

9世紀を経て、いろいろと別れたらしいのだが、私はそういう宗教学的な見解は持っていない。

産まれた時からこの宗派だっただけだ。

それでも、教えは守っているのだ。


 今は戦死者のために祈ろう。


 これからは、祈る暇もなく、忙しくなりそうだからである。

敵は待ってはくれない。

祈っているうちに攻撃を受けてはたまらない。

今もまだ、前線の奥で戦っている地球軍兵士たちがいるのだ。

私は彼らに届くように、しっかりと祈った。

このチャペルも負傷兵たちのために空けなければならない時が来ても、おかしくない。

血みどろを覚悟でここにいるのだ。

火星は広い。

前線など、一か所だけでは無いのだ。


 私の祈りよ届け!


 そして人一倍、祈りに力を込める私だった。



読者の皆様に幸あれ!!

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