第26話 前線での仕事
宇宙戦争ものは書くのが難しいです。
第26話 前線での仕事
戦果大なりといっても、負傷兵は必ずいるはずだ。
ドローンを使った爆撃さえ、今の時代では普通なのだが、兵を投入すれば、敵の反撃にも遭うだろう。
私たちナースを乗せたレッドクルス号は、退却したと思われるグラデュアル軍がいないことを確認し、前線の地に着陸した。
衛生兵のクリスは、私たちを指揮して、宙に浮く担架を二人一組で持たせると、レッドクルス号を下りるよう指示した。
火星の砂はやはり赤かった。
テラフォーミングしても、それは変わらない。
担架にはそれぞれ、スライムセルを載せていた。
これがあれば、すぐに治療にかかれるからだ。
それにゲイルさんも、治癒能力で、すぐに負傷兵の傷を治せる。
地球軍が戦った場所には、大勢の兵士たちが倒れていた。
軽傷で立っている兵士たちもけっこういた。
「ようやく来てくれたか」
兵の一人はそう言って、指さした。
「あっちの方を見てくれ。まだ生きている地球軍兵士たちが大勢いる。こっちは大丈夫だ」
言われた通りに私たちは、担架を運ぶ。
グラデュアル軍の兵士たちの屍が、たくさんあった。
これがグラデュアル星人?
初めて本物を見た!
死んでるけど‥‥‥。
私は興味本位が働いて、まじまじと倒れているグラデュアル星人を見る。
シュシュが私に声をかけた。
「先輩、よそ見しないで!」
後輩に怒られた。
私は気を取り直すと、兵士の救出の方に専念した。
特殊なパワードスーツを脱がすと、兵士たちを担架に乗せ始める私たちナース。
それにしても、戦場はグロいというか、エグい。
砂の大地に赤く染まる血の海。
五体満足な人を見る方が少なかった。
今は、細胞研究の発達により、体の一部を失っても、再生できる技術があるが、リハビリには長時間の訓練がいる。
生きてさえいれば、必ず元の体に戻せるのが、今の時代だ。
さすがに首を失えば、再生は無理だが、それはもう、どうしようもない。
ま、医学も日進月歩だ。
着実にその進化は遂げているということなのだ。
それでも悲劇は無くならないのだけれど。
当然、即死なんてのは、治しようもないし、ましてや、脳死は人の死という概念も、今でも変わらないのが現実だ。
戦場でも、その悲劇は終わらない。
私たちは、生きていそうな兵士に声をかけて、返事をさせた。
返事があれば、すぐに担架に乗せる。
返事が無くても、指が動いたり、呼吸が確認できれば、すぐに担架に乗せた。
逆に、臓物を大量にぶちまけているような兵士は、悪いけどお断りさせてもらう。
さすがに治しようが無いのだ。
兵士たちを乗せた担架は、すぐにレッドクルス号に運ぶ。
意識があっても、失血のひどい者は、後回しにするというか、もうこの場では助からないだろうと判断するしか無いのも現実だ。
生殺与奪の権限でも持っているのか、私たちはそれで判断をするしか無かった。
血で足元が滑る。
生々しい光景が、私たちの神経をすり減らせている。
それでも私たちは、仕事を続けなければならない。
ここは戦場なのだ。
「気をつけてください。もうすぐ砂嵐が来ますよ!」
クリスが大声をかけた。
火星も砂嵐はあるのか。
ここでモタモタしてたら、巻き込まれるのがオチだ。
手早く負傷兵たちを、一人でも多く助けなければならない。
死ぬ覚悟は死ぬ前にしたい。
私は生きたいので、負傷兵も自分も助かりたい人なのだ。
悪いけど、仕事を優先させるが、死にはしない。
やることは多いのだ。
私は他のナースたちが、負傷兵たちに手を貸している間、むごい死体を前に、気が張ってしまっていた。
あちこち血が多いのが、私にとっては苦痛だった。
血が出過ぎている兵士たちは、残念だが、もうダメだろう。
引き上げようかと思っていた時、死体の下にグラデュアル星人が潜んでいるのに気が付いた。
気が付いたが、遅かった。
グラデュアル星人は、起き上がると、手に持った爆弾を投げてくる。
「グラデュアル総統閣下のために!」
それは私の頭の上を越えて、負傷兵を運んでいる別のナースの足元に転がった。
ドーンという音が聞こえ、5人のナースと10人の負傷兵たちが吹き飛ばされた。
いきなりのことだったので、皆はあっけにとられていた。
しかし、すぐに正気に戻り、死傷者の様子を確認するナースたち。
武装していた地球軍兵士の一人が、私の足元にいたグラデュアル星人に、激しいレーザー光線の弾幕を浴びせる。
「コンチクショウ!死にやがれ、このグラデュアルのカス野郎め!」
グラデュアルの兵士は、完全に死んだようだ。
まぁ、あれだけレーザーを食らえば、即死だろう。
それにしても、〝カス野郎″呼ばわりとは恐れ入った。
相手を憎まないと、戦える前線でも戦えないのだ。
私はその場を動けなくなっていた。
足が震えてる。
こんなはずじゃなかったのに。
4人のナースが死亡。1人のナースが軽いケガ、さらには7人の負傷兵たちが犠牲になった。
これが本物の戦場の現実か‥‥‥。
私は不思議と、自分が情けなく思ってしまっていた。
本当にこんなはずじゃなかったのだ。
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