第19話 妹との交信、二回目
本日二度目の更新です。
第19話 妹との交信、二回目
レッドクルス号に戻ってから、出発前に一日だけ休みをもらった。
妹のマリアに会いに生きたかったが、妹は地球の反対側にいる。
シュシュは普段着に着替えてから、レッドクルス号で出来た友人と、ショッピングに出掛けたようだ。
私はというと、仕事に時間を潰したせいで、なかなか友人が出来なかった。
唯一、医大の時のシュシュだけが、私の知る限りの友人だった。
いや、友人というより、先輩後輩の間柄だったので、友人かと問われると、違うのかもしれない。
私はレッドクルス号の中を散策した。
中は迷路のようになっていたが、それでもあまり人が行かないような、暗い通路へと足を運んでみた。
やがて、階段を上ったり下りたりしながら、明るいところに出ることが出来た。
「ここは?」
明るい部屋があった。
そこへ行く私。
ドアが開いていたので、静かにコンコンとノックをしてみた。
「こんにちは~」
私は部屋の中を覗く。
さまざまなコンピューターシステムが、たくさん並んでいた。
数人の男女が、しきりにコンピューターに向かって、交信しているのが見えた。
ここは通信室?
私に気づいた女性がいた。
コーヒーを飲みながら、コンピューターから離れている女性だった。
「おや、あんたは?」
インカムを外すと、コーヒーをテーブルに置いて、私に近づく。
「あ、どうも。私はレッドクルス号の看護師です」
「そのナース服を見れば分かるわよ。お名前は?」
目がつり目で怖い印象を受けるが、その人は何だか穏やかな感じがした。
「あの、私はアイヴィー・クリステル・ボルチモア一等兵曹です」
「そう。ここは通信室よ。そして私は通信手で、通信室室長のレイヴ・クリアスよ。覚えておいてね」
「は、はい」
「それにしても、今はあんたたち、休みでしょ?どうしてこんなところにいるの?」
「あ、私は別に、外に用事もないので‥‥‥」
「そう」
「こちらこそすみません。お仕事の邪魔をしてしまったみたいで‥‥‥」
「気にしないで。今は月基地と交信してるのよ」
「はぁ‥‥‥」
レイヴは私を通信室内に招き入れた。
「ここで現在の月基地やドーン・キャリアーQWと、連絡のやりとりをしているの」
「月は大丈夫なんでしょうか?」
「グラデュアル星人のこと?」
「ええ」
「まだ戦火は止まっているみたいよ」
「そうなんですか」
しばらくの間、グラデュアルの軍は、火星に留まっているようだ。
「あんた、誰かと交信したい相手はいる?」
「えっ?」
交信したいといえば、妹のマリアだろう。
「います。妹です。でも今は、この地球の反対側にいまして‥‥‥」
「大丈夫。交信可能よ」
「そうなんですか?」
私は驚いた。
「交信してみる?」
レイヴはインカムを私に貸してくれた。
「住所をそのまま声で言えば、相手の様子が分かるわよ」
「はい。え~と‥‥‥」
私は住所を口にした。
コンピューターがすぐに、ホログラムで妹の映像を出した。
ベッドで眠っているようだった。
「妹は寝てますね」
「時差で、向こうは夜中みたいね。起こす?」
「いえ、そんな‥‥‥」
眠っているマリアを起こすのは、ちょっと気が引けた。
「でも、いつが最後の交信になるのか、この先は分からないわよ?」
「そうですね。でもいいです」
マリアの安らかな寝顔が見れただけでも、良しとしよう。
しかし、これではプライベートが丸見えなのではないか?
「ありがとうございます」
私はインカムを外し、レイヴに返した。
「ホントに良いのか?」
「ええ。私にも里心が付いてしまわないように‥‥‥」
「そうか。ならいいが‥‥‥」
私はお礼を言って、通信室から出た。
また月に戻ることになるのだ。
私たちの戦いは、前線に出てからだ。
グラデュアル星人を退けるために。
妹との再会は、それからだ。
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