転校初日の苦悩。
登場人物紹介シリーズその1
岡島翔太
どこか日常を客観的な視点で見てしまう癖のある17歳の男子。何事もそれなりにやり、普通の高校生活を送っている。水島雪乃の正体を知る。
片道1時間の登校時間も毎日通っていると慣れてくるもので、その時間に心地良ささえ感じている。昨日、魔女に出会った。想像していた妖艶な姿、性格とは似ても似つかない彼女。儚げな笑顔を浮かべた彼女のことがどこか頭から離れずにいる。あの後職員室に連れて行くと彼女は俺と同じ2年9組の生徒であることがわかった。
「おはよーっす」
教室に入るとすぐ近くの席に座っていた小松が声をかけてきた。
「なぁ、翔太。今日転校生くるらしいぜ!それもめちゃくちゃ可愛いって!」
一体こんな噂はどこから流れるのだろう。まぁかく言う俺はその転校生と既に話しているんだが。
「あぁ、会ったよ。その転校生。朝職員室前にいたから。」
少し遅れて教室に入ってきた武田がそう呟く。
「えぇ!ずりぃな!で?どうだった??」
「可愛かったよ。ん、どっちかっていうと綺麗って感じかな。まぁとにかく美人だった。ま、悠人には高嶺の花だな。」
小松と武田のやり取りを聞いていると、チャイムが鳴り先生が入ってきた。
「おー、ショート始めるぞー」
『起立、礼。』
みんな、どこか落ち着かない様子で同じ方向を見つめている。先生の右側に少し俯いたような佇まいでいる少女の方だ。
「今日からうちのクラスに入る水島さんだ。じゃあ水島さん。自己紹介お願い。」
震える唇が、彼女の心をそのままに写していた。
「み、水島雪乃です。よろしくお願いします。」
人が外見から得るイメージとは恐ろしいもので、恐らく生徒の殆どはきっぱりと澄ましたような声で自己紹介をすると思っていたのだろう。予想外にもごもごと可愛らしい恥ずかしげな様子で自己紹介をした彼女のギャップに驚いているものは少なくなかった。
「ねぇ、水島さんって彼氏とかいるの??」
ショートホームルームが終わるなり水島さんを取り囲むように集まった女子たちが転校生に聞くお決まりのような質問(初対面の人に聞くような内容ではないと思うのだが)をしている。
「え、えっと、そういうのはないかなぁ」
明らかに怯えた様子でなんとか返事を返している水島さんから少し離れたところにいる男子の話す話題もまた彼女のことであった。
「これは、首位交代かなー。なぁ翔太はどう思う?」
小松が何やらメモ帳のようなものを眺めながらそんなことを聞いてくる。男子の中で秘密裏に作られているクラスの美少女ランキングの話だ。
「どうだろうな。水島さんも可愛いけど、矢島とはタイプが違うんじゃないか?水島さんは大人しい日本の美少女って感じで、矢島はどっちかというと人気アイドルっていうか...」
以前までのクラス美少女ランキングは2位以下に大きな差をつけ、矢島亜衣が1位であったがとりあえず矢島の独走状態は終わったと見て良さそうだ。
「俺は矢島派かな。」
「ほうほう、克也は矢島派ね。」
正の字を2個矢島の方へ書く。どうやら俺の分も矢島に入れられたらしい。
「ち、ちょっとすみません!トイレに!」
後ろを振り返ると水島さんが急いだ様子で教室を飛び出て行く。女子の方からはどうしたのかな?などという言葉が聞こえてくる。
その日。水島さんはそのまま帰って来なかった。
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