魔女と涙と。
第2話です。まだまだ導入部分でつまらないと思いますが続けて読んでくれたらと思います。
「...何やってるの?その制服...ここの生徒じゃないよね?」
「ち、違うんです!その、これには理由があって!」
あたふたと辺りを見渡しながらいかにもテンプレのような台詞を言った彼女を見た思わず笑ってしまう。
「はははははっ」
彼女は腹を抱えて笑う俺の方を目を丸くしたまま見つめていた。
「ごめん、ごめん!面白いね、君。」
...キーンコーンカーンコーン...
「やばっ!授業遅れた!君は?転校してきた、とか?」
化学の安村先生はそこまで厳しくないし、トイレ行ってたとでも言えば納得してくれるだろう。
「あ、はい。今日からこの学校にお世話になる予定だったんですけど、諸事情あって遅れてしまって...あの、職員室ってどこにありますか?」
「あぁ、それなら俺が案内するよ。どうせ授業には間に合わないし。」
授業に出たところで何をするわけでもない、だったら誰かの役に立ったほうがまだいい。
「ありがとうございます!私、水島雪乃っていいます。」
にこりと笑った彼女の笑顔にドキッとする。
雪乃、か。彼女はその名に相応しいような白い肌をしていた。腰近くまで伸ばした真っ直ぐできれいな髪の毛。身長も女子の中では大きい部類に入るだろう。165cmくらいか。美しいという言葉が彼女のためにあるような、そんな錯覚すら起きそうだった。
「俺は岡島翔太。えっと、水島さん。あの、一つ聞いていいかな。」
水島さんはまるでお化けでもみたかのように顔が引きつっていた。
「水島さんって、魔女だよね?」
京都のとある寺では昔から代々魔女が当主を務めるというような話を聞いたことがある。水島さんもその類なのだろうか。
「見られてしまったのでは、仕方ないですよね。岡島さんも私が怖いですか?」
"も"という言葉から彼女のいいたいことは大体わかった。魔女だという事実は彼女の単なる性質だけの問題ではないのだろう。魔女であるということが彼女の今までの人生においてそれが少なくともプラスではなかったことは容易に想像できた。
「怖い?なんで?水島さんとはさっきあったばっかだし、怖いかどうかなんてまだわからないよ。」
泣きそうだった彼女の表情がほんの少し晴れやかになった。きっと彼女の心は繊細で暖かいのだろうと思った。思っただけ。
「私、小さい頃からいじめられてました。私に優しくしてくれる子もいたけど、そうするとその子がいじめられる。だから、学校に行くのが嫌になった。なんでだろう。魔女だから?そんなの不公平だよ。だから私学校行ってなかったんです。でも...」
絞り出した言葉は儚く、彼女の心の痛みをそのままに含んでいた。きっとこの学校に来たのには何か理由があるのだろう。でもそんなことを聞くのはさすがに気が引けた。彼女の唇はまるで猛獣に怯える小動物のように、細かく震えていた。
「ごめんね。俺こそ。無理に言わなくてもいいよ。あと、このことも黙っとくから。気にしないで。」
彼女は小さく頷くと涙を拭って微笑んだ。
「職員室、連れてってください」
俺と彼女は何を話すでもなく、微妙な距離感のまま職員室へと歩いた。風が冷たかった。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
暇潰しにでも続きを読んでいただけるとありがたいです。