桜と魔女。
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昼休みが終わってすぐの授業は数学だった。暖かな陽射しを気持ちよく感じてぼーっとしていた。まわりを見渡すと数人の生徒は暖かな陽射しを受けながら気持ち良さげに頭を揺らしている。文系クラスの数学の時間ともなれば真面目に授業を受けている生徒は半分くらいなものだ。そのうちの一人、俺の隣の席の女子が眩しかったのか、カーテンを閉めた。俺は文句を言うわけにもいかないので数人の生徒と同様に麗らかな午後の空気に身を委ねた。鐘が鳴り目を覚ます。不運なことに次の授業は移動教室であった。麗らかな午後の移動教室ほど足が重くなるものはあるだろうか。いっそのこと一人教室に残ろうか。そんなことを考えつつも移動の準備をする。いつものことだ、実際に頭で考えたことを全て実行する人間なんているのだろうか。人は人に嘘をつくが人は他の誰でもない自分に最も嘘をついている。時計を見ると、時間がなかったので急いで教室を出て化学室へ向かう。教室にいたときには麗らかだと思っていた空気は廊下に出ると首筋を刺すような冷たさがあったので脱いでいた学ランを羽織った。小走りに階段を上がり、新校舎から旧校舎へと繋がる連絡通路を渡る。そのときだった。桜が舞っていた。1月なのに。桜の花びらがひらひらと空を舞っていた。それがどうしてなのか、それはすぐにわかった。連絡通路の真ん中に手を広げた女の子がいた。その子の右手には細い木の棒。いや、きっと杖なのだろう。女の子はそれを振るい桜を舞わせていた。俺はその姿をいつまでも見ていられると思った。いや、いつまでも見ていたいと。ふと、目が合う。女の子の右手の動きは止まり桜も一枚、また一枚と消えていく。
17歳。高校二年生の1月、俺は魔女と出会った。
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