秋・諦念のソネット【詩】
快速電車が行き過ぎる バラストのその傍らで
ほととぎすが もの言わず花開く
いえ なにかひっそり囁いているにしても
ガタン タタン タタタン 聞こえやしない
電車線の向こうを 椋鳥が飛び越えていく
その曲線の緩やかさ まるで
琴線に触れるかどうか
試しているみたいな
柿の実が ため息のたび色づく
頬染めて 朝晩ごとの冷えを
その身にしんしんと 積み重ねる
今日もそこへは行けなかった
切られることのなかった切符を
野分にのせて 捨てることもできなかったのに
2018年10月制作。