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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第四章  僕に〈命令しないで〉と強がる光の戦士編

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第七話  俺が武道家になった事情

前回のあらすじ:


戦利品として〈呪われた十字架〉を得たり、マグナスが戦闘中に使った特殊なスキルを、今後はレイに伝授することになったり。

 俺――〈魔法使い〉マグナスは、呪文を唱えていた。


「ティルト・ハー・ウン・デル・エ・レン!」


 強力な雷が〈大魔道の杖〉の先端からほとばしり、夜の闇を切り裂いて、ヴァンパイア()()()に直撃する。


「バ、バカなっ! 吸血種の王たるこの余を一撃――ギャアアアアアアアアアアアッ」


 総じて尊大な吸血鬼が、最後まで現実を直視できない表情で、灰と化して燃え尽きた。


 確かに王侯(ロード)種のヴァンパイアは、レベル24という強力なボスモンスター。

 しかし、“魔海将軍”バーラックを斃したことで、〈レベル〉が39になった俺の、〈サンダーⅣ〉を浴びれば、さすがにひとたまりもなかったというわけだ。


『お疲れ様です! ……というほど苦戦なさってはないですが、ともあれお疲れ様です、マグナス様!』

「ありがとう、ショコラ。威力を確かめるためには、手ごろな相手だったよ。普段、魔法を使っていないと、(なま)ってしまいそうで恐くてな」


 だからこうして週一くらいで、全力で魔法を使うようにしているのだ。


「では、モンリバーに帰るぞ。深夜とはいえ、あまり留守にしていると、レイが怪訝に思うだろうからな」

『そのことでしたら、大丈夫だと思いますよ? ワタシとマグナス様が夜中こっそり抜け出すことを、レイ様はきっとお気になさってないはずです』

「ふむ……そうなのか?」


 仮に俺が逆の立場だったら、気になって仕方がないが。


『レイ様は、ワタシたちがこっそり逢瀬を重ねていると、勘違いされているご様子ですので!』

「お、逢瀬だ!?」

『純朴なレイ様に限って、「ゆうべはおたのしみでしたね」なんて、下世話なことは言ったりしませんよ。気づいていないふりを続けてくださいますよ』

「ううむ、そんな誤解は早く解かなくてはいかんな……」

『え、解いてしまってもよろしいのですか? では何をしているのかと、疑問に思われてしまいますよ?』

「ぐっ……。それもそうか……」


 別に本当は疚しいことはしていないわけだし、誤解されていたままの方が得策か……。


『というわけで、バレないように腕を組んで帰りませう!』

「調子に乗るな!」

『えへへ、怒られちゃいました』


 悪びれないショコラを、俺は「めっ」とひとにらみしてから、新たな呪文を唱える。


「ゲンク・ア・ティルト・エル」


〈タウンゲート〉で、モンリバーに帰還する。

 開いた転移門を通った先は、宿にとったショコラの部屋だ。

 俺とレイは相部屋で、ショコラは仮にも女の子ということで個室にしている。


「さて――」


 俺は〈魔海将軍の金貨〉を懐から取り出すと、その特殊効果を使用した。

 こいつはその名の通り、バーラックを斃した時に得た戦利品(ドロップアイテム)だ。

 世界にこれ一個しか存在しない、ランクSSSアイテム。

 それも、かなり癖の強い〈マジックアイテム〉だ。


 こいつを使用することで、()()()()()()()()()()()()()

 何レベル分下げるかは、完全に任意だ。

 俺で例えれば、一つだけ下げてレベル38の魔法使いになることもできる。あるいはレベル39分全て下げて、魔法使いとしての能力を封印することもできる。

 また、下げている期間も任意だ。いつでも好きに、元のレベルに戻すことができる。


 これだけならほぼデメリットしかないアイテムだが、リスクを負った分だけ、ちゃんとリターンも存在する。

 レベルを下げている間、モンスターを斃した時に確率で入手できる〈ドロップアイテム〉の、その入手確率がアップするのだ。

 しかもレベルを下げれば下げるほど、上昇率は跳ね上がる。

 これも例えば、本来ノーブルヴァンパイアを斃した時、レアドロップである〈呪われた十字架〉の入手確率は、32%しかない。

 ところが俺がレイと一緒に奴を斃した時、俺は魔法使いとしての能力を39レベル分(!)も下げていたため、ドロップ確率は100%になっていたのだ。


〈魔海将軍の金貨〉はそういう、ハイリスクハイリターンなアイテムなわけだ。

 しかも俺は、レベルを下げるデメリットを、また別のメリットとして利用していた。


 俺はレイをもっと鍛えたいと思っている。

“魔弾将軍”を討つためにも、レイにはもっと高レベルの〈光の戦士〉になってもらわなくては困るのだ。

 しかし〈攻略本〉の記述によれば、「この世界のシステムでは、〈パワーレベリング〉は難しい」のだという。

 実際、レベル39魔法使いの俺とレイがパーティーを組んだら、レイにはほとんど〈経験値〉がいかなくなってしまう。

 アラバーナでクリムやラムゼイ、三つ子とパーティーを組んだ時に、実証済みだ。


 そこで〈魔海将軍の金貨〉の出番というわけだ。

 こいつの特殊効果で俺のレベルをレイに合わせ、且つフォローしてやれる+1、2レベルくらいに調節すれば、比較的危なげなく一緒にレベル上げが可能となる。

 もちろん、レベル12魔法使いとして、レイと戦うこともできた。

 その方が俺も実力を出しやすいし、より危なげなくレベリングできるだろう。


 しかし、俺は敢えてそうしなかった。

 どうせ低レベルからやり直すなら、この際、新たな職業を鍛え始めることにしたのだ。

 それで白羽の矢を立てたのが、〈武道家〉という前衛職。

 それもウーリュー派の、本物の武道家を選んだ。特別な鍛練法は、〈攻略本〉に全部載ってるしな。


 この選択にも無論、理由はある。

 俺はカジウでドラーケンやバーラックと戦った時に、サブ職業(クラス)として前衛職も鍛えていた方が、より便利だなと痛感したのだ。

 それと、回復手段も欲しいと切実に思った。

 とはいえ、〈僧侶〉にはなりたくない。神を深く信仰するという必要条件がもう無理。生理的に受けつけない。

 そこで〈攻略本〉を物色して、ウーリュー派の武道家が習得できる、〈内気功〉という回復スキルに目が留まったというわけだった。

 これなら白兵戦能力も鍛えられて一石二鳥。

 さらには、〈万能学習・前衛〉スキルを持つレイにも、普通は滅多にお目にかかることのできないウーリュー派武道家のスキルを伝授できて、一石三鳥である。


 ちなみに、俺がレベル39魔法使いであることを、レイに隠しているのも、彼を鍛えたいからだ。

 そのことをレイが知ってしまったら、いざとなった時に俺の本当の力を頼る心が、彼の胸に芽生えてしまうだろう。人間なら自然のことだ。

 じゃあレベル12の武道家であり魔法使いと名乗る手もあったかもしれない。でも結局は嘘になるし、どこまで隠して、どこまで魔法を使っていいのか、などの判断が、咄嗟になればなるほど面倒臭い。

 だったらいっそ全く使わない方がいい。俺も武道家としての修業を積む上で、一部とはいえ魔法に頼ろうという甘えが消えるしな。


『ただ、レイ様がなんかナイーブになってしまっているのが、面倒臭いですけどねー。本当ならマグナス様が効率よく、ちゃっちゃと指導した方が手っ取り早いんですけど』

「そう言うな。俺も彼の気持ちはわかる。痛いくらいにな」


 ひどいメンツとパーティーを組んで、使命を課される辛さ、苦しさときたら、筆舌に尽くしがたいものがある。

 ましてレイはその上、裏切られたのだから。

 多少は人間不信になってしまったとしても、それは当然の話。


「それでも聞く耳はちゃんと持っているし、俺から学び取ろうとしているし、人間不信といっても軽度な方だ。根がよほど素直で、何より強い心根の持ち主なのだろうな」

『言われてみると、確かにそうかもです』

「あとはまあ、俺が上手く立ち回ればいいというだけの話だな。レイはあれこれ命令されることが、トラウマになっている。だから押しつけがましいことは言わず、レイが自分でしっかりと考えて、正解にたどり着けるようにと、見守ってやればいい」

『マグナス様って面倒見までいいんですね! さすがです!』

「いや、俺はよくはない。すぐにイライラして、自分でやった方が早いと考えるタイプだ」


 これは謙遜抜きで、本気で思う。

 自分はさほど人はできていない。


『では、レイ様が特別ですかー』

「そうともいえるな。俺は彼のことが気に入っている」


 あれこれ指図を受けないと何もできない奴は、ろくなことにならない。

 俺はそのことをユージンの元で、レイは光の戦士たち相手に学ばされた。

 やっぱり人は、自分の頭で考え、行動しなくてはいけないのだと、痛感させられた。

 レイもまたそのことに気づいて、今、生まれて初めて自分の行く道を、自分で選択しようとがんばっている。もがいている。


 つまりはレイは、俺と志を同じくする者なのだ。


「〈攻略本〉で光の戦士たちの動向を追っていた時、一人また一人と脱落していくのを見て、こいつら大丈夫かと不安に思ったものだがな。いっそレイだけが残ってくれて、よかったのだと今では思っている。俺が欲しいのは、愚にもつかない四人の仲間じゃない。たった一人でも頼れる同志だ」

『レイ様がそうなってくださるとステキですね!』

「なる――と俺は信じているよ」


 俺はそう断言して、ショコラの部屋を後にした。

〈武道家〉マグナスとなって、レイが眠る俺たちの部屋に戻った。

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