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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第四章  僕に〈命令しないで〉と強がる光の戦士編

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第五話  強い人を見習おう(レイ視点)

前回のあらすじ:


ノーブルヴァンパイアと戦うも、レイがいきなりピンチに。

「ぐっ……うううぅ……!」


 苦しさに、僕はあえぐ。

 ノーブルヴァンパイアに背後から首を絞められ、息ができなくなる。

 しかもヴァンパイアの奴、僕の首筋に牙を立てて、血を吸おうとしてくる。


 恐い!

 ノーブル種に吸血されても、ヴァンパイア化はしないって聞いていたけれど。本能的な恐怖や生理的嫌悪感が、どうしようもなく込み上げてくる。


 でも――


「今、フォローする」


 マグナスが横合いから、ノーブルヴァンパイアを殴り飛ばす。

 どうも脇腹に入ったらしい。そこで体をくの時に折り曲げた格好で、ノーブルヴァンパイアは吹き飛んでいった。


「た、助かりました、マグナス!」

「パーティーだからな」


 マグナスは僕の方を振り返らず、油断なくノーブルヴァンパイアをにらみ、拳を構えたまま、でもうれしいことを言ってくれた。

 ちなみに総ミスリル製の杖は、部屋の外で待機するショコラに預けていた。


 一方、吹き飛ばされたノーブルヴァンパイアは、よろめきながら立ち上がると、


「バカな……。たかが拳が、なぜ貴族種たる余に通用する……?」

「ただの拳ではない。〈武道家〉の拳だ」


 マグナスは淡々と答えた。

 ただの戯れ、言葉遊びかと僕は思ったけど――違った。

 どういう原理かはわからないけれど、マグナスが構えた右拳が、うっすらと輝きをまとっていたんだ。

 それが、物理攻撃に〈耐性〉を持っているはずの、ノーブルヴァンパイアにダメージを与えられた秘訣ってことかな?


「ア・ウン・レーナ」


 マグナスが口中で、何かを唱えた。

 すると、彼の拳に宿った輝きが、さらに強いものに変わった。

 

 それを構えて、マグナスがまるで滑るような武道家独特の足取りで、ノーブルヴァンパイアとの距離を詰めていく。


「ちぃっ」


 ヴァンパイアは舌打ちすると、再び無数のコウモリに変身する。

 散開して、マグナスの拳から逃れようとする。

 しかし、マグナスはそれを読んでいたようだ。


()ッ!!」


 肚の底からほとばしるような、重く大きな声で喝破。

 僕は思わず、剣をにぎってない左手で耳を庇う。これも武道家の〈スキル〉なんだろうか? 鼓膜が破れるかと思った。


 そして、無数のコウモリたちもまた、バタバタと床に墜落していた。

 よたよたと寄り集まって、ノーブルヴァンパイアの姿に戻っていった。


「き、貴様……っ、本当にただの武道家か……?」

「ああ。()()()武道家だとも」


 マグナスが謎の輝きをまとった拳を打ち込む。

 ノーブルヴァンパイアももうコウモリ変身回避は諦め、伸ばした爪で応じる。

 拳と爪、使う部位は違えど、両者の肉弾戦が始まる。

 互角の戦いだ。


 凄いな、マグナスは……。

 レベルが1つ上らしいボスモンスターと、あんなにやり合えるなんて。

 特殊な鍛え方をして、〈ステータス〉が普通より高いって言ってたから、そのおかげなのかな……?


 ――って、感心してる場合か、僕!

 互角の戦いってことは、マグナスが負けてもおかしくないってことでしょ?

 じゃあ、今度は僕がフォローに入る番じゃないか!!


「ふう……っ。ふう……っ。ふう……っ」


 僕は深呼吸をくりかえした。

 フォローに入らなくちゃいけないけど、慌てるのはダメだ。

 さっきパニックになって、ノーブルヴァンパイアにあっさりバックをとられた、反省だ。


 実際、マグナスの戦いぶりを見ていればわかる。

 彼はずっと冷静なままだ。

 あれこそが真の強者だ。

 あれこそが見本だ。


 だから僕はマグナスを見習い、心を落ちつけさせる。

 じっと戦いの様子を観察する。


 マグナスが力強い踏み込みとともに、拳を打ち込む。

 ノーブルヴァンパイアは飛び退ってそれをかわす。

 すぐ後ろは壁だった。なんと奴は、その壁を足場に蹴って高く跳び上がり、さらに今度は天井を蹴って跳躍の軌道を変えて、頭上からマグナスに襲いかかったのだ。


 今だ!

 ここだ!


「〈シャインブレード〉!」


 僕は空中から強襲をかけるノーブルヴァンパイアへ斬りかかる。

 しかし、


「ははは、引っかかったな!? 空中なら身動きとれないと思ったか!?」


 尊大なる吸血種は、僕の考えなんてお見通しだ! とばかりに嘲笑した。

 そして、空中で無数のコウモリに変身して、僕の〈シャインブレード〉を回避した。


 一方、すかされた僕の剣は、勢いがついて止まらない。

 さっきは勢い余って、壁を叩いてしまった。

 今度は勢い余って、マグナスを斬ってしまいそうになる。


『マグナス様!? レイ様!?』


 と部屋の出入り口の外で、ショコラが悲鳴を上げた。


 でも――マグナスは慌ても騒ぎもしなかった。

 さすが、冷静極まりなかった。

 僕の勢い余った太刀筋が、マグナスに当たりそうで当たらないことを、最初から見切っていたのだ。


 そう、僕だってバカじゃない。

 同じ失敗を繰り返すもんか!

 コウモリ変化でかわされることも、勢い余ってマグナスに当てないことも、ちゃんと計算のうちに入れていた。


 そして、マグナスと一瞬のアイコンタクト。


()ッ!!」


 マグナスが再び大音声で喝破した。

 コウモリの群れが、ボトボトと墜落した。

 堪らず寄り集まって、ヒイコラとノーブルヴァンパイアの姿に戻る。


 今度こそ本当の隙アリだ。


「〈シャインブレード〉!」

「ぐぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」


 ヴァンパイアの弱点は〈光属性〉。

 僕の一撃がとどめとなって、断末魔の悲鳴とともに消滅した。



「いいフォローだ、レイ」

「マグナスも上手に合わせてくれて、いい連携になりました。よね?」

「ああ。初めての戦いとしては、お互い上出来じゃないか?」

「マグナスを見ていて、勉強になることが多かったです」

「ほう。しかし、君も戦いのセンスがズバ抜けているという気がするな。今まで、活用しようともしなかっただけで」

「そう……なんですかね……?」


 わからない。実感がない。

 でも、ともあれ――

 僕は初めて誰にも指図を受けず、自分で考えて、自分で工夫して、戦うことができた。

 勝てたのはほとんどマグナスのおかげだけど。助けられてばかりだけど。


 でも、とてもうれしかったんだ。

 言葉にならないくらい達成感があったんだ。


 僕たちはノーブルヴァンパイアを斃したことで、マグナスはレベル13に、僕は一気にレベル12まで成長(アップ)していた。

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