終章 彼女にとっての始まり(???視点)
今夜は2話UPしております!
まだ33話はご覧になってない皆様はお気を付けくださいませ。
あたし――ゼール商会党首エリスは、自室で〈遠見の水晶球〉を見つめていた。
そこに映し出されていたのは、“魔海将軍”バーラックと、例のマグナス一行の死闘だ。
「……面白かったじゃないの」
なんだか悔しい気もするが、あたしはそう認めた。
バーラックはさすが“八魔将”の一角だと威張るだけあって、強い上に厄介だった。
でもマグナスたちは力を合わせて、それすら斃してみせたのだ。
これはちょっとしたドラマである。
感動である。
人間もやるじゃん。
魔物に負けてないじゃん。
「いや、人間にもやる奴がいるじゃん……かな?」
水晶球に大写しにされたマグナスの顔を、あたしはつっつく。
海賊商会党首の娘として生まれてきたあたしは、幼い時からいろいろな人間を見てきた。人間の裏を見せられてきた。
それで人間というものに絶望した! ――なーんて悲劇ぶるつもりはない。残念ながら、あたしの神経はそんな繊細にできてない。
ただ、失望はさせられていた。なーんかつまんない奴ばっかだなーって思ってた。
海賊商会なんて波乱万丈な組織にいて、どいつもこいつもスケールの小さなこと!
あたしの祖父――先々代党首は、相当なカリスマだったらしいけれど。残念ながら、あたしが物心ついた時には隠棲していて、ただの温厚なおじいちゃんになっていた。
まあそれでも、そのカリスマを引退に追いやったあたしの父親が一番つまんない人間なのも、そのカリスマに懐いていたパウリがまあまあイイ線行ってる男だったのも、当然のことかもしれない。
比べると、魔物って連中は面白い。
まずシンプルに強くて、あげく世界征服なんか企んじゃったりして、なんなら神様や神霊たちだって皆殺しにしてやろうと目論んでる奴ら。アブナいけど、スケールの大きな、何をしでかすかわからない奴ら。
バーラックの使いが来て、仲間にならないかと持ちかけられた時、あたしが二つ返事で受けたのも、それが面白そうだったからだ。
悪党は悪党らしく、せいぜい傲慢に自慢してあげるけど、あたしは裕福な生まれだから。ナニフジユーしたことないから。しかも周りはつまらない人間ばかりだったし、人生に飽き飽きしていたのだ。
あたしがバーラックに頼まれた役目は、“連盟”から“海賊王”の後継者が出ないように、コントロールすること。あたしを利用して、好き勝手やってるつもりのパウリの悪事を、実はあたしの方がしっかりとバックアップしてあげてたりね。まあ、けっこう面白かった。
他にもバーラックには、人類裏切り特典としていろいろ持ちかけられた。バーラックがカジウの征服に成功したら、半分やろうだとか。すぐ要らないって答えたけど。
あたしが魅力を感じた特典は一個だけだ。
万が一、バーラックが斃れた時に、あいつの強大な力を、そっくりあたしが引き受けられるってやつ。
「……ん。来た、来た。これね」
部屋の隅にある鏡台を眺めると、あたしの長い髪が青く染まっていくのが見える。
溢れ出る〈魔力〉が反映され、煌めくような光沢を帯びていく。
実際、戦いの心得なんかからきしのはずのあたしが、体の内側から何か力が漲ってくるのを感じる。魂に強い熱が宿るのを感じる。
今やあたしは立派な人でなし。
レベル40の最高峰ボスモンスターというわけだ!
「この力を好きに使って、人類征服に乗り出すってのも面白そうだけど……」
そんなのはいつだってできる。何しろ今のあたしの寿命は千年くらい延びたはずだから。
「せっかくだし、彼と遊ばない手はないわよね?」
水晶球に大写しになった偉大な魔法使いに、あたしは軽くキスをする。
それから服を全て脱ぎ捨てて、背中からコウモリみたいな翼を生やすと、あたしは窓から飛び立った。
ゼール商会本部にある、党首の部屋を後にした。
あたしがここに戻ってくることは、もう二度とないだろう。
これにて三章完結です!!
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました!!!
また私がここまで書ききることができたのも、読者の皆様の応援の賜物です!!!
重ねてお礼申し上げます!!!!
そして、ここでお詫びを……。
10日だけお休みをください!
第四章は11月3日の土曜(19時ごろ予定)よりスタートいたします。
そこからは毎晩更新がんばります!
なにとぞご理解とご容赦のほど、よろしくお願い申し上げます。




