間章 つまらなくないもの(???視点)
前回のあらすじ:
ドラーケンを撃破!
あたし――ゼール商会党首エリスは、戦いの一部始終を見ていた。
テーブルに置いた水晶球には、氷漬けにされて沈んでいく、ドラーケンの姿が映っている。
「何がレベル37の強大な魔物よ。大したことないじゃない」
と、つまらなくて鼻を鳴らす。
この〈遠見の水晶球〉を使えば、コルセア島の商会本部にいながらにして、アンドレス島近海の光景を眺めることができる。
「でも、ま、死なずに済んで、よかったじゃない」
水晶球の中で、勝ち鬨を上げているゼール傘下の海賊たちや、その中心にいるパウリの飄々とした姿を確かめながら、あたしは独白した。
それから、あたしは〈遠見の水晶球〉を指先で押し弾いて、テーブルの上を転がす。
ゼール商会の財力を以ってすれば、入手できないことはないとはいえ、とても貴重な〈マジックアイテム〉だ。
それがどんどん転がっていって、テーブルの端から床へ落ちて、重い音を立てる。その程度で割れはしなかったが、別に割れても構いはしないというつもりであたしはやった。
「ホントつまらないこと」
床に落ちた水晶球を、あたしは頬杖ついたまま見つめる。
そこには今、マグナスという魔法使いが映っていた。
どういう仕掛けか、天空の一点に立ち尽くしたまま、勝利に沸き上がる艦隊を見下ろしていた。
逆にこの男には、勝利に対する喜びや余韻など、欠片も見つけられなかった。ドラーケンを討伐した立役者は、間違いなくこのマグナスだろうに。
ただただ優しい眼差しをして、勝利に浮かれる者どもを見守っていた。
どうしてそんな表情になるのか、あたしにはさっぱり理解ができないけれど!
このマグナスという男、“魔海将軍”バーラックが言うには、最大の要注意人物らしい。
それこそ、“魔海将軍”の軍勢をして、容易には討てないほどの。
今回も、ドラーケンの潜む近海に、マグナスが向かうことを教えてやったら、バーラックは強い意気込みでドラーケンを差し向けた。
しかし、そのドラーケンも一蹴されたとなると、いよいよもってバーラック自身が戦う以外、マグナスを討つ手はないだろう。
ただ、バーラックの強さは海中でこそ発揮されるし、あいつの方から攻めていく気は全くないと言っていたけれど……。
「さてさて、どうなるのかしらね? ちょっとは面白くなるのかしら?」
あたしは頬杖をついたまま、未だマグナスを映し出す水晶球を、見つめ続けた。
そう、目が離せなかった。
それはつまらない戦いの中で、たった一個だけ見つけることのできた、「つまらなくないもの」だったから。
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