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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第三章  ワタシに〈ご命令ください〉と押しかけるメイド編(?)

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第二十二話  敵艦見ゆ

前回のあらすじ:


神霊サイレンのいるアンドレス島を目指すと、ロレンスに敢えて伝えて出港した。

 俺たちの“海鷲”号はのんびりと、アンドレス島を目指した。

 ロレンスら海洋警察(カリオストロ)の艦隊が、ある程度のところまでは追いつけるようにと、敢えてのことだ。

 俺の所有する〈潮風の鈴〉があれば、航海にトラブルは発生しない。バルバス船長が鍛えた船乗りたちの操船技術もあり、航行速度は完璧に調整できる。


 途中、バロンボ島に寄って、一泊する余裕すらあった。

 それでついでに、俺たちの指名手配が既に出回り始めていることも、確認できた。さすがは海洋警察(カリオストロ)、俺たちがロレンスらを撃退してからまだ日が浅いというのに、動きの早いことだ。

 ただ、やはりというか、厳戒態勢とまではなっていなかった(それをやろうと思ったら、俺たちが立ち寄るかどうかも怪しいバロンボ島に、多数の人員を配備しなければならない。あまりに不合理だ)。おかげで、お忍びで滞在できたというわけだ。



 そうして俺たちは、ロレンス麾下の艦隊と付かず離れずの距離をコントロールしつつ、アンドレス島の姿をついに、望遠鏡にとらえた。

 しかし同時に、島の手前で待ち構えている、艦隊の姿もとらえていた。

 数はなんと五十隻を超えるのではなかろうか。まさに大艦隊である。


「な、なんですか、あれ……」

「キュジオの用意した艦隊のようだな」


 震え声になったアリアに、俺は即答した。

 声に、感心の響きがにじむのを、隠せなかった。


「マ、マグナスさんは、何を感心してらっしゃるんですかねえ~~~?」

「いや、予想通りだなと思う半面、予測を超えてきたなと」

「……まず、予想通りな方をお聞きしましょうか」

「俺はピートル殿はもちろん、ロレンス殿にも敢えてアンドレス島を目指すことを教えた」

『それはロレンス様に、艦隊で追いかけてきて欲しかったからですよね?』

「加えて、情報があちこちに漏洩すると思ったからだ。もちろん、キュジオにも伝わるだろうとな」


 海洋警察(カリオストロ)もキンコリー商会も、規律と統制のとれた優秀な組織だと思う。

 だが、末端にまで目を向ければ、間者の一人や二人は紛れ込んでいるだろう。

 それもあり得ない一枚岩の組織など、それこそあり得ない。


「だから、俺に海賊王の財宝を渡したくない連中は、こぞって立ちはだかるだろうと、それは予想していたんだよ」

「それ、予想というよりマグナスさんの掌の上ですよね……」


 アリアが呆れ声をこぼしつつ、島前で封鎖線を敷く艦隊を眺める。

 一方、バルバス船長は望遠鏡で奴らの船を観察しながら、


「どうやら二つの艦隊の連合所帯ですね。旗印でわかりまさあ。黒字に三つの金の輪が、ジャンナップ商会の旗。もう一つ……三叉の矛を持った人魚って旗は知りませんね」

「三叉の矛に人魚は、神霊サイレンの似姿だ。キュジオの艦隊で間違いないだろう」

「ジャンナップ商会まで邪魔に来てるんですか!?」

『ゴルメスの豚野郎様。絶対に許せないです』

「財宝を渡したくない連中は、キュジオだけではないということ……のはずだったんだがな。顔を見せたのが、たった二勢力というのは、少し意外だった」


〈攻略本〉情報によれば、もっと他にもいるはずだが。

 結局はこういうことか。

 あちこちに間者を忍ばせている抜け目のなさは言うに及ばず、速やかに対処に出られる行動力、判断力、決断力、何よりポンと艦隊を動かせる財力と権力――それらを有している人間が、如何に少ないかという話か。

 キュジオという人間の、卓越を証明しているわけか。


「実際、キュジオが用意した艦隊はあれほど多い。そこが俺の予想の上を行っていたし、舌を巻いたということだ」

「それもバルコン級が八隻に、サーベ級が二十三隻ですからね」

『凄いことなのですか、船長様?』

「ああ、嬢ちゃん。バルコン級てのは“希望のマリア”号と同じ、最新鋭艦だ。サーベ級は一世代前の戦艦だが、それでもカジウで一番普及している。それだけいい船ってことだ」

『な、なるほど……』

「ジャンナップ商会もサーベ級で統一しているし、数合わせだけのオンボロ艦は一隻もねえ。さすが大商会サマは違うな」

『…………』


 ショコラはもう押し黙った。

 だんだんと恐くなってきた――からではないだろう。

 艦隊の方から、白旗を揚げた小舟が近づいてくるのが、見えたからだ。

 話し合いの使者ということである。


「さあて、どうします?」

「無論、甲板に上げてやってくれ、船長。話をしようじゃないか」

「了解!」


 バルバス船長が部下に命じて、隣に寄せてきた小舟へ板を渡す。

 それを伝ってやってきたのは、まず屈強そうな男が二人。

 そして、彼ら二人に護衛された、二十半ばほどの若い女。肌の色が不健康なまでに青白い。


「ロクソン商会のアリスと申します」


 女は丁重に挨拶をしてきた。

 まあ、存在しない幽霊商会の、偽名の名乗りにすぎないが。


「初めましてだな、アリス殿。で、あの物々しい艦隊は何事かな? 我々はただアンドレス島を目指している、善良な船乗りなのだが」

「お惚けになっては困ります、マグナス様。あなた様は今、指名手配犯でございます。そして、“法の番犬”の艦隊が、すぐ後ろへ迫っております。ならばわたくしども善良なるロクソン商会としては、海洋警察(カリオストロ)に協力するのが道理」

「なるほど、一理ある」

「どうぞ、マグナス様。賢明なご判断を。たった一隻で、わたくしどもの艦隊と戦うのは不可能でございます。マグナス様がここでこのまま海洋警察(カリオストロ)を待ち、大人しくお縄につかれると仰るなら、わたくしどもも手出しはしません。カジウの海を流血で汚さずにすむというものです」

「お気遣いはありがたい。だが俺は断固として島へ向かう。そちらが邪魔すると仰るなら、力ずくで突破させていただくだけだ、()()()殿()――いやさ、ネビュラのキース!」

「な……っ」


 顔色の悪い女が、いきなり俺に本名を呼ばれ、正体を看破され、絶句した。

 肩を震わせ、足を震わせ、覿面に狼狽していた。


 そう、この女こそがネビュラのキース。

 キュジオの腹心にして、使い魔を駆使してカジウ全域で暗躍する、レベル21の極めて優れた〈魔法使い〉だ。


「帰ってキュジオに伝えられよ。いるんだろう、あの中に?」

「なっ……なっ……キュジオ様のことまで……っ」

「無益な流血を避けたいのは俺も同じだ。しかし、そちらが邪魔立てするというなら、容赦はできん。正直に言えば、手加減をしてやれる余裕もない。キュジオはそれだけの戦力をそろえた。()()()()()()()()

「あくまで……戦うというのですね……? 後悔なさいますよ……?」

「それはこちらの台詞だ」


 俺がぴしゃりと言うと、ネビスはまだ狼狽を隠せない様子ながら、変わらぬ丁重さで一礼して、護衛とともに帰っていった。

 遠ざかる小舟を見て、ショコラがボソリ。


『帰しちゃっていいのですか、マグナス様? キュジオの腹心なのでしょう?』

「悪人はあいつらの方で、俺までその流儀に染まる理由はない」


 そう、これは明白にしておかなくてはならない。


「俺は虐殺をしたいわけじゃない。ただ、火の粉が降りかかるというのなら、払いのけるしかないだけだ」

読んでくださってありがとうございます!

そして今夜はもう一話、20時ごろにアップする予定です!

そちらもよろしくお願いいたします!!

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