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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第三章  ワタシに〈ご命令ください〉と押しかけるメイド編(?)
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間章  日中の密談(???視点)

本日、これと合わせて2話更新しておりますので、21話をまだ未読の方はご注意ください!

「私」――ネビスことネビュラのキースは、使い魔である隼の肉体を借りて、キュジオ様の下へ赴いた。


 いつものように、不躾ながら嘴で窓をノックし、執務室の中へ入れていただく。

 息をつく暇も惜しんで、大声でご報告申し上げる。


『“法の番犬”がマグナス捕縛に失敗いたしました! それどころか、マグナスはアンドレス島へと向かっております!』

「……あの島へだって?」


 執務のため書き物をしていたキュジオ様の手が、ピタリと止まった。

 不愉快げに眉をひそめて仰った。


「まさか、必要額がそろったとでもいうのか?」

『そんなバカな話はないだろうと、私も思います。ただ、奴はピートルのところにしばらく逗留しておりました。充分に話し合う時間がありました。もしかしたらマルム商会とキンコリー商会には、我々が想像もつかないほどの蓄財があり、連中が合資をすれば、額に届いたのかもしれません』

「事態は常に最悪を想定すべき……か」


 キュジオ様は執務机に着くと、思慮深げなお顔になった。

 指先で机の天板を叩きながら、しばし黙考された。

 キュジオ様のお考えを邪魔してはいけないと思いつつ、私はもう一つ報告しなければならないことを、恐る恐る申し上げた。


『ロレンスは、マグナスの後を追うようです。しかも、急ぎ海洋警察(カリオストロ)の艦隊を編成するという大捕り物です。それでマグナスの船に追いつけるかどうかは疑問ですが、奴らが島に滞在する日数によっては、島ごと包囲できるかもしれません』

「……ふむ。艦隊か」


 キュジオ様の指先がひときわ強く、天板を弾く。


海洋警察(カリオストロ)に協力するのは、我らカジウの民の義務だ。あの“番犬”どもが追いつけそうもないというのなら、追いつけるようにしてやろうじゃないか」

『具体的には、どのようにでしょうか、キュジオ様?』

「ドモンよりもここからの方が、アンドレス島には遥かに近い。ゆえに我々も艦隊を出し、マグナスが島に到着する前に、海上封鎖してしまうのだ。そしてロレンスらの到着を待って、前後から挟撃する」

『な、なるほど! 大胆にして賢明なご判断かと!』


 もちろん、艦隊を動かすなどと気軽に言える、キュジオ様のご権勢あってのことだが。


「そうだ。もう一つ、いいことを思いついたよ、ネビス」


 さらにキュジオ様は悪辣――というより、意地悪な笑みを浮かべて仰られた。


「ジャンナップ商会も巻き込んでやろう。党首会議でゴルメスは、相当にマグナスのことを目の仇にしていたからね。懲らしめてやるいい機会だと持ちかけたら、あの無能のことだ、大喜びで艦隊を出してくれるだろう。クク、金貨一枚たりと、連中の得にはならないけれどね」

『何も問題はございませんよ。海洋警察(カリオストロ)に協力するのは、カジウの民の義務ですから』

「クククッ、その通りだ」


 キュジオ様はまだ意地悪にほくそ笑みながら、席を立った。

 そして、戸棚の前に行って、中から鈴を一つとりだす。

 掌サイズの、とても大きな鈴だ。

 キュジオ様が八方手を尽くしてお買い求めになった、()()()()()()()


「マグナスがキャプテン・マンガンを討伐したのは、組織にとっては痛手だったけれどね。しかし、奴の手の内を見ることができたという点では、僥倖だったよ」

『はい、キュジオ様! これで我々の艦隊だけ船足が止まるという事態を防げます。でしたら後は、数の暴力で蹂躙するのみです』


 使い魔と精神感応している今、確かめようがないのだが、きっと私も悪意たっぷりにほくそ笑んでいただろう。


「じゃあ、()()()()()の許可をとってこようか。お飾りとはいえ、一応ね」

『それがよろしゅうございます。艦隊を動かすとなると一大事ですし、話を通しておくべきかと。一応は』

「では、私はそちらへ。君は足労をかけるが、ゴルメスの方を頼めるかい?」

『足労なんてとんでもございません! それに疲れるのは、使い魔の翼ですので』

「ははは、それもそうだ! では後で私から、美味しいエサを奮発させてもらおう」


 キュジオ様は冗談めかしながら、またお手ずから窓を開けてくださった。

 私は使い魔を操って、そこから大空へと羽ばたかせた。

 この島から、ジャンナップ商会が縄張りとするエベル島までは、比較的近い。こいつの翼ならば一飛びである。


 キュジオ様の御為にも、ゴルメスを上手におだて上げ、煽り立て、せいぜいたくさんの戦力を供出させてやろう。

 私はそう意気込んでいた。

 同時に、実は――少しホッとしていた。

 この使者を務めるおかげで、私は党首に会わずにすんだからである。

 私はあの女のことが、少々苦手だった。

読んでくださってありがとうございます!

毎晩更新がんばります!!

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