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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第三章  ワタシに〈ご命令ください〉と押しかけるメイド編(?)

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第十三話  暗中の会話(???視点)

前回のあらすじ:


キャプテン・マンガン率いる海賊団を討伐した。

「私」は使い魔のコウモリを操り、キュジオ様のお屋敷まで向かわせた。

 夜更けのことであり、我が主が既にお休み中か、未だ執務を執っていらっしゃるかは、半々というところだった。

 そして、まったく頭の下がることに、キュジオ様はまだ執務室にいらっしゃった。勤勉とはきっと、この御方のためにある言葉に違いない。

 私は忠誠心を新たにして、窓の外から呼びかける。


『キュジオ様。夜分に申し訳ありませぬ。ネビスにございます』

「ああ、君か。こんな夜更けまでご苦労だね」


 キュジオ様はそう言って、手ずから窓を開けて、私の使い魔を中へ招いてくださる。

 本来ならば、首領(ドン)であるこの御方に、わざわざ窓を開けさせるなど言語道断。しかし、使い魔(コウモリ)の体では致し方なく、私は無礼にも甘えさせていただく。

 そして、キュジオ様はそんなことなど、ちっともお気になさらない御方なのだ。私は忠誠心を新たにして、主の執務机の隅に使い魔を平伏させた。


『キュジオ様に、ご報告いたしたき儀がございまして、罷り越してございます』

「ふむ……。君がこんな時分に訪ねてくるだなんて、よほどの急用かな?」

『はい。キャプテン・マンガンとその一団が討伐されました』

海洋警察(カリオストロ)か……思ってたよりも早かったね。またぞろ番犬君が出しゃばったのかな?」

『それが……違うのです。例のマグナスという男が、ほとんど一人で討伐してしまったのです』

「マンガンたちに与えた五隻を? たった一人で? 君の弟子たちもちゃんといたのだろう?」

『信じがたいことですが、事実なのです。私が使い魔の目を通して、見て参りました』


 私はマグナスという男が、如何にしてキャプテン・マンガンたちを圧倒したか、細大漏らさず報告する。


「ふうむ……“魔王を討つ者”とやらは、それほどの大魔法使いだったか……」

『はい、キュジオ様。私も〈ファイア〉のみはⅢ系を習得しております。しかし、マグナスの用いた〈ファイア〉系統は、私のそれを遥かに凌駕しておりました。単なるステータス差の問題という次元の話ではありません。つまりは奴が使ったのは、〈ファイアⅣ〉ということです。かの学院の開祖レスターが習得していたと伝えられ、存在のみは確認されております。しかし実際、いったいレベルいくつであれば習得できるものか、私如きでは見当もつきませぬ……』

「ネビス。君とて世界有数の〈魔法使い〉と知って、私はネビュラから招聘したんだ。その君を、マグナスという男は圧倒していると?」

『正直に申し上げて、大人と子ども……いえ、アリとゾウほどの力量差かと……』

「そこまでか……」

『おかげでますます、わからなくなってしまいました。なぜそれほどの男が、わざわざカジウまで来て、急に商売など始めたのか……。そんな真似をせずとも、ラクスタなりアラバーナなりで、望むさま立身栄達を極められるでしょうに」


 私は本気で理解できず、首をひねった。

 一方、キュジオ様はしばし考え込んでいらっしゃっていたが、


「……もしかしたら、海賊王の財宝を狙っているのかもしれない」


 ぽつりと、そう独白なさった。


『ま、まさか!? 奴もでございますか!?』


 私は驚きを禁じ得ず、思わず声を上ずらせてしまう。

 対してキュジオ様はさすが冷静な語り口で、


「そう考えれば、辻褄が合わないか? その男がどれほど強大な魔法使いであろうと、海賊王の財宝を欲するならば、このカジウで商売を始める他はない」

『確かに仰る通りですな……』


 キュジオ様のご指摘を受け、考えれば考えるほどに、私もうなずけるものを感じた。



“南の海賊王”。

 百年前にこのカジウを統一した伝説の人物は、九人の息子にそれぞれ島を一つ与えた。

 つまりは、息子の誰一人として、実力を認めていなかったということだ。自分の後継者に指名し、彼の持つ全てを与えようとは決してしなかったという話だ。


 そして、“南の海賊王”は死の間際、九人の息子たちへ遺言を託した。

 彼が持つ財宝の中で、最も貴重な三つを、とある場所に隠した――と。

 では、三つの財宝とは何か?


 一つは彼自身が愛用し、数々の海賊団を滅ぼした伝説の武具。

〈海嘯の剣〉。


 一つは彼自身が記し、伝説の偉人だけが知る様々な情報や真実が、文字に起こされた書物。

〈海賊王の日記〉。


 最後の一つは、なんの変哲もないメダルだ。

 ただしその所有者をこそ、“南の海賊王”が自分の後継者として認めると遺言した、特別な意味を持つメダルだ。

〈海賊王の証〉だ。



“南の海賊王”の死後、九人の息子たちは特にそのメダルを求めて、血眼になって探し回ったという。

 そして、およそ十年の歳月を費やし、とうとう財宝の在処が発見された。

 しかし誰も入手は叶わなかった。

 強力な番人が、財宝を守っていたからだ。

 その番人を斃して奪いとることなど、人の身には不可能であったからだ。


 その番人の名は――()()()()()サイレンという。


 そう。

〈勇者〉を選んだ運命の神霊タイゴンや、我ら魔法使いが敬愛する魔法の神霊ルナシティと並ぶ、超越存在だ。

 神に直属する下僕の一柱だ。

 人間風情が、逆立ちしても敵わない。

 海原の神霊を屠ろうと思えば、このアルセリア世界から、海という存在そのものを消滅させなくてはならないとされている。不可能だろう?


 海原の神霊(サイレン)は、世にも美しき乙女の姿をした存在だと伝えられる。

 また美しい声で、海賊王の息子たちに告げたという。


「海賊王の後継者に相応しい男と、わたくしが認めた方にのみ財宝を与えましょう」


 では、その具体的な条件とは何か?

 一つは当然、海賊王の直系男子であること。

 もう一つは、国が買えるほどの莫大な大金を用意し、サイレンに奉納すること。

 それもカジウの海域に関わる、まっとうな商売で稼いだ金のみが対象となる。他国で完結した商売で稼いだ金や、海賊行為等で荒稼ぎをしてもダメということだ。神霊をだますことは決してできない。


 なぜこんな奇妙な条件を出したのだろうか?

 それは少し考えればわかることだった。その条件を満たすためには、カジウの平和を維持し、商業を振興し続けなければ、絶対に達成できない。

“南の海賊王”はそんな未来を夢見て、それを成し遂げた子孫をこそ、後継者として認める――そう言いたかったのだろう。


 彼の実像は諸説あるが、案外、夢見がち(ロマンチスト)な男だったというわけだ。

 百年経った今でも、確かにカジウの平和はまあまあ保たれている。経済圏の振興ならば百年前とは比べ物にならないだろう。

 しかし“連盟”党首たちはもう、さほど海賊王の後継者になりたいとは思っていないだろう。


 繰り返すが、〈海賊王の証〉は何の変哲もないメダルなのだ。

 他者に命令を絶対遵守させる〈マジックアイテム〉のような類ではないのだ。

 仮に“連盟”党首の誰かが、ついに〈海賊王の証〉を手に入れたとしよう。

 それを掲げて、「我こそは海賊王の後継者なり」と(うそぶ)くとしよう。

 他の八党首はこう答えるはずだ。


「で? それが何か?」


 海賊王の後継者となれば、それは確かに「権威」であろう。

 しかし、「権力」そのものではないのだ。

 他者に何かを強要する、実行力も法的根拠も伴わない。

 せいぜい商会の看板に箔がついて、少し商売がやりやすくなるかもしれない、その程度のもの。


“南の海賊王”はまさか百年後、自分の権威が形骸化するとは、思ってもみなかったのだろう。

 これを夢見がち(ロマンチスト)と言わずして、なんと言う?


『マグナスという男もまた、ロマンチストなのでしょうか? 理解に苦しみます。何より彼は、海賊王の直系男子ではありません』

「そこは、“連盟”党首の誰かを抱き込んで、後継者に仕立て上げるつもりかもしれない。それこそフェリックスの子どもはまだ赤子なのだろう? 利用するには都合がいいじゃないか」

『確かに……』

「とはいえ、全ては憶測にすぎない。そのマグナスという男の真意を、確かめてみたいね」

『はッ。でしたら、早急に場を設けます』

「そうだな。久しぶりに“連盟”党首会議を開催するというのはどうだい? アズーリ辺りはきっと、彼を帯同するだろう」

『畏まりました。では、そのように』


 私は使い魔の体を借りて、キュジオ様に平身低頭させた。

 だが、キュジオ様のご興味は既に遥か遠くのことへと移り、思いを馳せるかのように、窓から夜空を見上げていらっしゃった。

 そして、再びぽつりと独白なさった。


「海賊王の財宝は、決して誰にも渡しはしない」

読んでくださってありがとうございます!

毎晩更新がんばります!!

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どちらもぜひご一読&応援してくださるとうれしいです!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 〉海賊王の後継者となれば、それは確かに「権威」であろう。  しかし、「権力」そのものではないのだ。  他者に何かを強要する、実行力も法的根拠も伴わない。  せいぜい商会の看板に箔がつい…
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