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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第二章  朕に〈命令させよ〉とのたまう愚帝編

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第二十五話  凱旋式と戴冠式

前回のあらすじ:


道を完全に誤ったヘイダルを、マグナスは討つ。

 ヘイダル=ジャムイタンを斃したことで、俺の〈レベル〉は38となっていた。

〈魔嵐将軍のブーツ〉や〈天界の宝石:雷閃〉など、貴重な戦利品(ドロップアイテム)も入手した。

 しかし、俺の気は一向に晴れなかった。


 無言で、漆黒の球体を振り返る。

 まるでこの世界に開いた、虚ろな穴。

 古代の実験によって召喚され、顕現した魔王の魔力。その片鱗。

 人の身にはすぎた、オーバーエネルギー。


 俺は印璽を以って殺戮メイドたちへ命じた。


「以後、誰も近づけさせるな」


 忠実なサーヴァントにしてガーディアンである彼女ら十五体は、永遠にその命令を守り続けるだろう。

 俺はそうして仲間たちとともに、首都アラバンへと凱旋した。


    ◇◆◇◆◇


 俺たちの凱旋式とファラ帝の戴冠式。

 それらを兼ねる盛大な宴が、アラバン宮殿の庭園で執り行われた。

 さすがに戴冠式は別にやった方がよくないか? 新女帝の権威が揺るがないか?

 俺はそう疑問を呈したのだが、


「まとめた方が、予算も安上がりだろう?」


 と、ファラ帝はあけすけなことを言って、ほくそ笑んだ。

 半分は冗談だろうが、経済観念がしっかりしているのは、為政者として大切なことだ。

 俺はそれ以上何も言わなかった。



 そういうわけで、今日がその宴の当日。

 アラバーナ中から集まったという列席者の数は、相当のものだった。

 ただし今日は主役も多い。

 ファラ帝は当然として、俺たち一行は六人もいるのだ。ファラ帝の差配で、俺たちは庭園のあちこちに散り、それぞれが大勢に囲まれ、挨拶攻めに遭うことで、混雑を分散させた。


「やれやれ、アタシらを祝ってくれるっていうから期待してみりゃ、なンだい」

「まったく骨じゃったわい」


 とは、後で聞かされたクリムとラムゼイのぼやきである。

 逆に三つ子たちの方は満更ではなかった様子で、


「正直、僕たちなんて大したことしてないのに、称賛の嵐って感じでこそばゆかったです」

「オレなんかべっぴんのネーチャンにモテてモテて、もうね!」

「こんなこと、生まれて初めてでさあ」


 と、楽しんでくれたのならそれはよかった。

 

 なおグラディウスのことも、救国の英雄の一体として、庭園に飾り立てるようファラ帝に依頼された。

 ミスリルゴーレムなど、この遺跡の国でも物珍しいのだろう。大勢の注目と感嘆を集めていた。特に子どもたちに大人気で、腕にぶら下がって遊ぶ姿も見えた。

 そんな光景を見て、


「うふふ、とっても楽しそうですねー」


 と、俺の隣でクスリとしたのはアリアだった。

 宴に出席するに当たり、同伴してくれないかと頼んだのだ。

 一つは例によって、人づき合いの苦手な俺に代わり、挨拶に来る列席者たちへの応対を、任せるためだ。アリアの人柄に裏打ちされた交渉能力には、本当にいつも助けられる。

 それともう一つ、マルム商会がアラバーナとの貿易を強化するに当たって、責任者であるアリアの顔を売り込んでおいて、全く損はない。何しろ彼らは、戴冠式に招かれるほどの有力者たちなのだから。


 そんな彼女と、今は二人で庭園を歩きながら、


「グラディウスさん、ものすごい人気者ですよ」

「子どもは大きくて強そうなものが大好きだからな」

「あら? マグナスさんはお好きじゃないんです?」

「……俺はもう子どもではないぞ」

「あはっ。好きに年齢は関係ありませんでしたねー」


 他愛もない談笑を続け、俺たちは庭園の中心部に到着する。

 そこにはファラ帝がいて、列席者からの熱烈な祝いの言葉を、順番に受けとっているのだ。

 俺の方へ挨拶に来る人間が減ったので、そろそろ頃合いかと思っていたが、彼女の周りにはまだまだ人だかりができていた。

 それもそうか。新しい女帝の覚えをめでたくしたい人間が、後を絶たないのも当然の話だったな。


 俺たちは列に並び、順番が来るの待つことにした。

 そして、いよいよ俺たちの番になると、


「律儀に順番を守らずとも、顔を出してくれてよかったのだぞ、救国の英雄マグナス殿」


 ファラ帝が俺の顔に気づいて、呆れたように言った。

 別にアリアと談笑していれば何も退屈しなかったし、あっという間だったけどな。


「初めてお目にかかります、女帝陛下。マグナスさんの友人で、ラクスタの商人マルムの娘、アリアと申します。このたびはファラ陛下のご戴冠、心からお祝い申し上げます」


 アリアは異国の女帝の前でも畏縮せず、完璧な恭しさを以って祝いを述べた。


「マグナス殿のご友人ならば、余にとっても同じこと。どうか親しくして欲しい」

 

 ファラ帝は実際に、親しげな抱擁をアリアと交わす。

 たちまち周囲の、アリアへの見る目が変わる。マルム商会は、アラバーナでの商売がやり易くなるだろう。生臭い政治の話だが、ここはありがたく、新女帝の権威を笠に着させてもらおう。


「さて、マグナス殿。改めて貴殿には厚く報いねば、余は忘恩の謗りを受けてしまうな」

「俺は魔王を討つための旅をしている、ただそれだけの男だ。陛下のご威光を以って、国内でその便宜を取り計らっていただければ、これに勝る褒美はない」

「あい、わかった。ならば余もラクスタ王同様に、貴殿に号を贈るとしよう」


 ファラ帝はいきなり俺に艶然と微笑みかけると、


「“新女帝の夫”というのはどうだ、マグナス殿?」


 とんでもないことを口走った。

 たちまち周囲から、爆発的などよめきが起こる。


「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」

「なんと、ファラ陛下がご求婚あそばされたぞ!?」

「戴冠式がこのまま結婚式というわけですか!」

「これはめでたい!」

「いや、めでたい!」


 散々に囃し立てられ、俺は渋面にさせられる。

 アリアが怒ってないといいんだが……と恐る恐る確かめる。彼女は思いきり苦笑いを浮かべていたが、別段、気分を害している様子はなかった。俺も一安心だ。


 とはいえ、軽い恨めしさを込めつつ、ファラ帝に答えた。


「お戯れを仰られるな。皆、真に受けてしまっただろう?」

「ふふふ、そうだな。すまなかった。軽い冗談のつもりだった」


 ファラ帝が肩を竦めると、周りも「なんだ」「御冗談か」「まあ、それはそうだろう」という空気になる。誰も彼女の求婚を本気だったなんて考えはしない。

 ファラ帝は冗談めかした空気を漂わせたまま、アリアに向かって言った。


「正直に言って、余はあなたが羨ましい。()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()

「畏れ入ります。でも、御身ほどのご器量でいらっしゃれば、すぐに良いご友人が見つかることと存じます」

 

 アリアは極めて大真面目に答えた。

 まるで二人の間でしか、通じないやりとり。

 そう、俺は首をひねらされていた。「別に友人ということなら、いくらでも歓迎なのだが?」と。


 だから真意を訊ねようとしたのだが、ファラ帝は俺の機先を制し、


「では、余も大真面目な話をしよう。マグナス殿――我が国はラクスタ同様、貴殿に“魔王を討つ者”の称号を贈ろう」


 ファラ帝のこの宣言により、俺は魔王を討つために必要なことに関して、アラバーナ内であらゆる便宜が図られることとなった。地味だが、大変に助かることだ。


「ありがたい」


 と、俺は今度こそ感謝を述べる。


 ファラ帝に挨拶をしたい者はまだまだいた。だから俺たちは彼女の前を辞去することにした。

 去り際、ファラ帝がまた戯れを言った。


「余の寝室(へや)の鍵は返さずともよい。いつでも遊びに来ておくれ」

「……わかった、遠慮はしない。ただし堂々と正門からお邪魔しよう」

「ふふ、マグナス殿らしい返事だ。しかしだからこそ、余は貴殿を好ましく思うのであろうな」


    ◇◆◇◆◇


 宴があった翌日は、俺とアリアは首都アラバンの観光をした。

 俺は未だゆっくり回ったことはなかったし、アリアにとっては商売上、町のことをよく知ることも大事である。

 案内をしてくれているのは、この町生まれのこの町育ちという二人だった。

 二人とも目深にフードをかぶって、人相をしっかり隠している。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()



 実のところ――

 地帝宮でヘイダルを斃した後、二人は主君に殉じて、溶岩の中に身を投じようとした。

 それを俺が引き止めたのだ。


「おまえたちは祖国のために、敢えてその手を汚していたのだと思ったが、俺の勘違いだったのかな?」

「何をバカなことを!」

「姉上の言う通りです! 私たちは無論、アラバーナのために――」


 俺は二人の反駁を遮って言った。


「ならば、死んでなんとする? その生ある限り、アラバーナのために尽くすべきではないのか?」

「そ、それは……そうだけれど……」

「殿下とともに大逆を犯した私たちが、どうやってアラバーナのために貢献できるというのですか!?」

「ならば、俺についてこい。おまえたちにその『場』を与えてやろう」


 俺の言葉がさぞや意外だったのだろう。

 姉妹は驚き、互いの顔を見合わせていた。

 しかし、やがて意を決したように、


「……わかりました。……あなたについていきましょう。その言葉が真実かどうか、確かめさせていただきましょう」

「もし真実であったならば、私たちの罪をせめて贖いましょう」



 と――そんなやりとりがあって、俺は姉妹にアリアを紹介したのだ。

 今後はアリアの近くで働き、彼女のアラバーナ交易を助けるべしと。

 特にナディアが使える〈タウンゲート〉は、物を輸送することに関して、反則的な効果を持っている。


 姉妹の方でも、強い意欲を見せてくれた。

 食糧の輸入には常に頭を悩まされるアラバーナにおいて、フェアな商売を始めようというマルム商会で働くことに、遣り甲斐や生き甲斐を見い出してくれた。


「マグナス殿にわだかまりがないと言えば……嘘になります」

「しかし誓って、身を粉にして働きます。これからはアリア様に誠心誠意お仕えします」

「私たちの祖国のために」

「ヘイダル殿下が愛したアラバーナのために」


 俺の見立ては間違っていなかった。

 満足してうなずいた。



 そして今――

 姉妹に首都(アラバン)観光を案内してもらいながら、俺は思う。

 アリアが早く打ち解けるように努め、姉妹もその想いに応えるようにし、まだどこかぎこちなくはあるが、それでも女三人で談笑しているところを眺めながら思う。


 ヘイダル殿下。あなたはやはり立派だった。

 ラクスタではテンゼンという愚かで小心な近衛騎士隊長が、多くの部下を巻き込んで、魔物に魂を売るよう唆していた。

 でも、殿下。あなたは違った。

 人の道を完全に外れる危険は、自分一人のうちのみに留め、姉妹を巻き込まなかった。

 だからこそ俺はこうして、姉妹たちに更生と贖罪を促すことができた。

 再起の道を提示できた。


 もしかしたら、それはあなたの狙い通りだったか?

 だとしたら……ふふ、一本とられたよ。

 その一点において、俺はあなたの掌の上だったわけだ。


 だが――それが痛快で堪らない!

読んでくださってありがとうございます!

毎晩更新がんばります!!

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どちらもぜひご一読&応援してくださるとうれしいです!
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[気になる点] 溶岩に沈んでも、しっかりドロップするのか…w
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