間章 サーヴァント ショコラ(???視点)
本日2話UPしております!
まだ15話を未読の皆様はご注意くださいませ!!
ワタシはサーヴァントです。名前はありませんでした。
普通、サーヴァントには「265号」とか「777号」とか、識別しやすい名前をつけてもらえるのですが、ワタシの開発者は決してワタシに名前をくれませんでした。
それどころかワタシの開発者は、いつもワタシに謝っていました。
「すまない……おまえには、本当に悪いことをした……。心の在り方を必要以上に、人間に近づけてしまった……。それがサーヴァントにとって、どれほど酷なことかも想像せず、ただ便利だろうと思い込んで……。おまえには『辛い』という感情も、『苦しい』という感情も、存在するのだろう……? 許してくれ……そんなものまでおまえに与えてしまった、私を許してくれ……」
そう言って、いつもワタシに謝っていました。
正直、理解できません。
確かにワタシは、他のサーヴァントたちとは性能が一線を画しています。えっへん。
他のサーヴァントたちは、人間サマに命令されない限り、ずっとボケーッとしてます。「使えない」奴らです。
その点、ワタシは気が利くサーヴァントなので、そのように開発者が作ってくれたので、自発的に仕事を探し歩き、御用を聞いて回ります。お利口さんでしょう?
今日もそうでした。
久々に一階層まで上がってみたら、いつの間にか人間サマが、たくさん町に戻ってきているのを発見しました。
開発者がずっと眠ったままになって、結局一度も目を覚まさないまま骨になって、十八万飛んで百三十七日ぶりのことです。
ワタシは大喜びで、御用を聞きに向かいました。
だって、ずっとずっと寂しかったんです。何度も何度も目から水が出てきたんです。開発者だけじゃなくて、町に住んでいた兵隊サマたちが全員、眠りについて、骨になって……。
誰もすんでいない町というものは、とっても恐かったです。うすら寒かったです。だからワタシがもう滅多に近づかないようになって、十八万飛んで十九日間。ずっと話し相手もいなかったんですよ?
他のサーヴァントたちには、ワタシと違っておしゃべりするというウィットがありません。乱暴なだけで口も利けないガーディアンどもは論外です。
やっと誰かとおしゃべりできる。ご奉仕できる。そう思って駆けつけたワタシを、新しく来た人間サマたちは、棒で殴ってきました。特殊な性癖なのかな?
それならそれでよかったのですが、どうも違うようです。人間サマたちは、ワタシを叩いても全然楽しくなさそうでした。むしろ苦しそうでした。怯えていました。
だからワタシは、彼らを安心させてあげなくてはと、がんばりました。サーヴァント魂メラメラです。
『御用はございませんか?』とお訊ねしました。何度も何度も声を張り上げました。
ですが、無意味でした。新しくきた人間サマたちとは、まるで意思疎通叶いませんでした。もしかして、人間サマじゃなくて新種のガーディアンなんでしょうか?
ワタシもいよいよ不安を覚えずにいられなかった、その時でした。
この御方――マグナス様がいらっしゃったのは!
マグナス様は理路整然と他の人間サマたちを説き伏せ(知的!)、棒で殴られていたワタシを助けてくださいました(優しい!)。こんな姿をしたワタシのことを「バケモノではない」と言ってくれました(慈悲の権化!)。
ワタシはマグナス様についていくことにしました。がんばって、マグナス様のお役に立つことを決意しました。サーヴァント魂メラメラです。
ところが、嗚呼……マグナス様はいったい何者なのでしょうか? 開発者たちがその名を唱えることを禁じた、造物主なのでしょうか?
このワタシに、生まれて一度も名前で呼ばれたことのないワタシに、名前をつけてくださったのです。
とっても甘い声音で、優しく呼んでくださったのです。
「ショコラ」
――と。
うっかり目から水が出そうでした。
だって。
だって。
ワタシは別に、開発者に謝って欲しくなんかなかった。
ただ、名前で呼んで欲しかった。
ずっと。
ずっと。
ただそれだけの願いが、ワタシが製造されて五百年が経って、今ようやく叶えられたのでした。
次回、伝説の冒険者たるラムゼイを案内人に、最難関遺跡に挑む……!
というわけで、読んでくださってありがとうございます!
ブックマークや評価や等々していただけますと、大変励みになります!!
毎晩更新がんばります!!!