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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第六章  これは〈命令ではないよ〉とおためごかしばかり言う賢者編

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第十六話  高層階への挑戦

前回のあらすじ:


卑怯なイズール教室の面々をナナシが一蹴!

 俺――賢者の学苑生ナナシは、ヒイロたちとともに〈叡智の塔〉攻略の相談をしていた。

〈タウンゲート〉をはじめとした、俺が禁書保管庫で見繕ってきた魔法のいくつかを、ヒイロたちが――そんな代物とは知らないまま――完璧に習得できたので、そろそろ登塔を再開しようという話になったのだ。

 カーマイナー先生の屋敷に四人で集まり、さらにエリスも招いていた。


 俺たちの登塔に協力すると言い出したのは、エリスの方だからな。

 その実力は本物……どころか異常域にあるし、ぜひまた大活躍していただきたいものだ。

 ヒイロたちも大いに期待している。

 と――俺は皮肉っぽく考えていた。


 果たしてそのエリスは、俺たちに向かってこう答えた。


「ゴメン、飽きちゃった」


 ヘラヘラ笑いながら全く悪びれない彼女に、ヒイロたちが目を剥く。


 ……まあ、俺だけはこうなるんじゃないかと予想していた。

 つき合いというほどろくに接してはいないが、エリスが飽きっぽい性格をしているだろうことが、感じ取れたからだ。


 だがヒイロたちはもう堪らない。


「む、無責任よ!」

「大船に乗った気でいろって言ったの、エリスさんなのに~」

「オレたちゃエリスさんのせいで、オリーヴィアたちとの同盟が破談になったんすよ!? ハシゴ外しにもほどがあるぜ!」


 情けない顔になって抗議するモモ、リンゴ、ヒイロ。

 そんな三人を俺はなだめる。


「別にいいじゃないか。元々は俺たちだけで制覇するって決めてたんだ、皆もその覚悟はあるだろう?」

「うっ……それはそうだけど」

「エリスのおかげで三十六階から四十階まで、実に楽に突破できたんだ。それだけで十二分、感謝こそすれ責めるのは筋違いだ」

「確かにナナシ君の言う通りだわ……。ごめんなさい、エリスさん」

「だからエリスとは笑顔で、ここでお別れしよう」

「いやあたしもお別れまではする気はないから! これからもちょくちょく遊びに来るから!」


 ちっ、この女。どこまでも俺たちにつきまとう気か……。


 ともあれ俺としては、エリスのことはあまり信用できない。

 だから同行してくれなくても、大いに結構。

 だが気のいいヒイロたちにそんな台詞は聞かせたくないので、おためごかしを言ったわけだが、モモとリンゴは納得してくれた。


 一方、ヒイロは収まらない。

 ジェリド教室との同盟というか、オリーヴィアにご執心だからだ。

 そもそもオリーヴィアとその同盟を快く思っていない、女性陣とは違うからだ。


「こんなことならエリスさんの提案を蹴ってでも、オリーヴィアたちとの同盟を優先するんだった……」


 ヒイロは盛大に肩を落として愚痴をこぼし、またエリスへの批難げな態度をネチネチ続ける。


「わかってるわよ。その点だけは、アタシだって責任を感じてるの」


 意外にもというか、エリスの方にも少しは悪気があったらしくて、態度はともかく口ではしおらしいことを言い出した。


「だからちゃんと交渉して、呼んでおいてあげたわよ?」


 交渉? 呼ぶ? 何を? 誰を? とヒイロ、モモ、リンゴが首を傾げる。

 まさにそのタイミングだった。

 俺たちのいる屋敷の居間に、不意の来客が訪れたのは。

 誰あろう、ジェリド教室のリーダー・オリーヴィアである。


「この間のことは水に流して、もう一度同盟を組んであげるわ」


 あまり寛容とは言い難い性格をしているオリーヴィアが、鷹揚な態度でそう言った。

 ウジウジしていたヒイロは、それを聞いて一発で、飛び上がらんばかりに喜ぶ。

 逆にモモとリンゴは、何か裏があるのでは? という態度。

 オリーヴィアも別に隠す気はないようで、


「あなたたちと一緒に四十一階の試練を突破できれば、ジェリド教室も一気に塔の高層まで到達できるわ。それだけのメリットがあるなら、この間の一件はチャラにしてあげると言っているの。第一、私が頭に来ているのはその胡散臭い女で、別にヒイロたちに意趣はないしね」


 よく言えば理論的、悪く言えば打算的なオリーヴィアらしい考えだった。


「というわけで、明日にでもトウシタへ行くつもりだから、あなたたちもそのつもりで準備しなさいな」


 オリーヴィアが勝手に仕切りだし、ともあれ両教室は同盟を再結成することになった。


「みんな、頑張ってね。あたしも()()()()()()()()()わ」


 エリスがヘラヘラした顔でヒラヒラ手を振って、俺たちを送り出すようなことを言った。

 最低限の責任はとった形だが、やっぱり心から反省するようなタマではなかった。


    ◇◆◇◆◇


 そうして俺たちカーマイナー教室の四人と、オリーヴィアたちジェリド教室の選抜メンバー十五人は、公共馬車に分乗してトウシタまでやってきた

 前回と違って道中に一悶着はなく、早速〈叡智の塔〉へ向かって攻略することになった。

 一階の広間は今日も今日とて行列ができており、俺たちは並んで待つつもりだった。

 しかし王都から派遣されている衛兵たちに、学生証代わりのメダルを見せると、


「カーマイナー教室のヒイロ君だね?」

「高層階にたどり着いた君を特別待遇するよう、ケンキドゥ師から言われていてね」

「今後はもう列に並ばなくていいよ」


 と、待機列の先頭まで案内してくれたのだ。


 おかげでまあ目立った。

 ウンザリしながら順番を待っている他の学苑生たちに、奇異の目で見られたり、羨ましげに見られたり、逆に嫉妬丸出しの眼差しも少なくなかった。

 オリーヴィアはまるで自分の手柄のようにエラソーにしていたが、ヒイロとモモ、リンゴは特別扱いされても居心地悪そうだった。


 かくいう俺とて気分がいいものではない。

 これが「高層階に挑戦する者は、順番を守らなくてよい」と以前から、公に決められていた措置なら、俺も「実績でつかみとった特権だから」と堂々としていただろう。

 だがこんないきなりのやり方――見方によっては学苑長の依怙贔屓にも見えなくはない優遇をされては、そりゃあ周りの目も違ってしまう。

 ケンキドゥだって気が効かなかったわけではなかろう。

 浅はかだが、ずる賢い男だ。

 これははっきり、ヒイロを依怙贔屓しているのだろう。

 いずれカーマイナー教室が塔を制覇した時、「私が目をかけてやったおかげだ」と、あの男自身が手柄面するための、政治的パフォーマンスなのだろう。

 俺にはその浅はかな意図が透けて見えるから、素直に喜べはしないというわけだ。



 ともあれ俺たち総勢十九人はすぐにでも、四十一階の試練に挑戦できた。

 瞬間移動した先は、ちょっとした石畳の広間で、柱が縦に横に等間隔で立ち並んでいた。


『この試練に挑戦するのは、八名までとする』


〈ジニアスアバター〉がそう宣言した。十一人が指をくわえて待つ計算だ。

 ジェリド教室は念のために大所帯でやってきたが、やはり塔の高層階は制限人数が厳しいのだろう。

 ともあれ俺たちは誰と誰で挑戦するかを話し合う。

 まあ話し合いというか、オリーヴィアがまたも勝手に仕切りだして、


「ナナシ君がただの素人ではないのはわかっているし、カーマイナー教室は全員参加でいいわ。こっちは私の他に三人出すから」


 有無を言わせぬ口調ながら、俺たちに配慮した提案だった。

 無論、こちらに否やはない。

 誰と誰が挑戦するかをジニアスアバターに申告すると、初代賢者の幻影は一つうなずく。

 そして挑戦しない十一人の姿が、ぼぉっと薄い光に包まれた。


「あれはなんだ?」

「あの光に包まれていると、塔の試練に一切干渉できないのよ。でも例えば周りが炎で埋め尽くされるような試練内容なら、自衛しないと焼かれてしまうから注意が必要ね」


 俺の質問にオリーヴィアが、そんなことも知らないの? とばかりに答えてくれた。


「お互いの声は届くのか?」

「ええ、聞こえていますよ」


 また俺が質問すると、今日も挑戦メンバーから外され、憮然顔になっていたジェリド教室の少女・ミントが、実証という形で答えてくれた。


「俺はてっきり制限人数からあぶれた者は、一階に追い返されるものとばかり思い込んでいた……」


 四人しかいない俺たちカーマイナー教室は、これまで制限人数で困ったことがないし、試すことすらできなかったので、知らなかった。

 まさかこうして観戦まがいのことができるとは……。

 というか、これなら外から助言もし放題ではないか。

 ……いや。この塔は挑戦者の知恵を試すものだから、「試練の難度を上げるための人数には制限を課す」が、「大勢で知恵を絞る分には制限を課さない」ということか。


「しかし、これなら〈ブリザード〉の試練の時、俺をメンバーに入れるか入れないかで揉めたのは、本当に無駄だったな……」


 魔法の実力の足りない俺は観戦に回り、あの光に包まれた状態で、外からヒイロたちにアドバイスするだけでよかった。

 もちろん、俺は耐寒魔法を使えなかったから、事前にかけておいてもらう等の何か工夫は必要だったが……。


「私はあなたたちが、『そんなことも知らなかった』だなんて思ってもみなかったわ」


 オリーヴィアは呆れ口調で言った。

 ただし批難口調ではなかった。むしろ彼女の声音には感心のニュアンスが含まれていて、


「それだけあなたたちが異例の人数の少なさで、且つ異例の順調さで高層階まで(ここまで)登塔できてしまっていた、ということなのでしょうね」


 高慢な彼女が珍しく、脱帽だとばかりに賞賛してくる。

 その素直な賛辞に、オリーヴィアにご執心のヒイロは有頂天になり、彼女を内心嫌っているモモやリンゴでさえ満更でもなさそうにする。



 しかし、和やかな雰囲気はそこまでだ。

 いよいよジニアスアバターが試練の内容を宣告したからだ。


『私が二百を数える間に、十六体の〈スチールゴーレム〉を消滅させよ』


 同時に俺たち挑戦者八人を包囲するように、十六体の〈スチールゴーレム〉が出現した。

 あたかも歴戦の兵士の風貌の如く、妙に傷だらけのゴーレムだ。

 またそれぞれの左胸には、一番から十六番までのナンバーが割り振られ、大きく刻印されている。


「あ、〈アイアンゴーレム〉よりタフな〈スチールゴレーム〉を十六体も!?」

「しかもたった二百秒で!?」

「ただ倒すのではなく、消滅させろですって!?」

「む、無茶苦茶ですよ~」


 ヒイロ、モモ、オリーヴィアが驚嘆し、リンゴが泣き言を漏らす。

 しかも加えて言わせてもらえば、ただの〈スチールゴーレム〉ではなかった。

 巨大且つ分厚い体を持っており、通常のものよりさらに何倍もタフそうだった。

 これを消滅させるのは、たとえヒイロの〈ファイアⅢ〉でも簡単ではないだろう。

 それこそ二百秒どころか、二百分もらっても難しそうだ。


 実際、ヒイロたちも闇雲に攻撃する気にはなれないようで、早速襲い掛かってくるゴーレムどもから、悲鳴を上げて逃げ惑う。

 幸いなのはこの「耐久特化型〈スチールゴーレム〉」とでも呼ぶべき連中、スピードは本当に鈍重で、近接戦の心得のないヒイロたちでも、逃げ回るだけなら容易にできた。

 あちらはなまじ巨体を持っている分、立ち並ぶ柱が邪魔して、ただ移動するだけでも苦労している様子だしな。


 なるほどやはり、この試練は俺たちの戦闘力ではなく、知恵を試すものらしい。


「皆、各ゴーレムの額に注目しろ!」


 俺も一体から逃げ回りつつ観察し、一つの気づきを得て、ヒイロたちに向かって叫んだ。


「おでこって、ただ傷があるだけじゃねえか!」

「こいつらが傷だらけなのはカモフラージュだ! よく見れば小さく模様が刻印されている!」


「ε」の文字が刻印されたゴーレムが二体、「ζ」刻印の奴が二体、「η」刻印の奴が二体、「κ」刻印の奴が二体、「ξ」刻印の奴が二体、「σ」刻印の奴が二体、「ψ」刻印の奴が二体、「ω」刻印の奴が二体という具合だ。


「ど、どれがどれだかわっかんないわよ、ナナシ!」

「ナナシ君のことだから、デタラメ言ってないのは信じてるんだけど……」


 モモとリンゴも刻印文字の見分けがつかないようで、困り顔で訴えてきた。

 ヒイロやジェリド教室の面々も同様だ。

 これは致し方ない……。

「ε」も「ζ」も「η」も「κ」も「ξ」も「σ」も「ψ」も「ω」も全て、俺たちが日常使っている大陸共用語が生まれる遥か昔、太古の時代の一地方で使われていた文字だ。

 そして人間というものは、自分が知らない文字を、正しく認識するのが難しい。

 ヒイロたちの目にはミミズが這った跡のようにしか見えない――いや、この場合はただの傷跡にしか見えなくても仕方がない。


 とにかくだったら、俺自身が動くしかない。

 これも幸い、誰かの命が脅かされる類の試練ではない。

 そして塔の試練は、何度失敗しても構わないのだ。

 精神的余裕がある。


「いろいろ試させてもらうぞ!」


 同じ「ε」文字を額に刻印された、一番ゴーレムと九番ゴーレムを、敢えて引き付けるように俺は動く。

 わざわざペアに作ってあるからには、何か意味があるのだろうと踏んでのことだ。

 それで手始めに、敢えて挟撃されるように誘導し、本当に挟み撃ちされる――寸前――素早く身をかわすことで、一番と九番の同士討ちを誘発してみる。

 するとどうだ?

 一番と九番番は互いに触れ合うや融合して、体積を倍にした一体のゴーレムに変化したではないか!

 額の文字も「α」に変わった。

 さらにより巨体となった分、ますます柱と柱の間で引っかかりやすくなって、逃げ回るのも引き付けるのも容易になった。


「素晴らしい観察眼ね、ナナシ君! 私も試してみるから、どれとどれが同じペアか教えて頂戴!」

「五番と十三番が同じ文字だ!」


 俺が答えると、オリーヴィアがなかなかの度胸で二体のゴーレムを引き付け、同士討ちを誘発させることに成功した。

 やはり体積を倍にしたゴーレムが新たに生まれ、額の刻印文字は「α」に変わった。


 その結果を見て、俺は直感的に動く。

 俺が誘導することで生まれた一体と、オリーヴィアが誘導したことで生まれた一体。

 またペアになるゴーレムが出現したのだ。

 その額に「α」が刻印されたペアを、俺はオリーヴィアにも指示して二人で一か所におびき寄せ、またギリギリまで引き付けて同士討ちを誘ってみた。


 これでもし都合四体分が合体し、体積が四倍になれば、もう柱がつかえて完全に身動きがとれなくなるのでは? と予想し、試してみたのだ。

 果たして――

 結果は俺の予想外のものとなった。

 だが、攻略法としては正解のようだった。。

 二体の「α」刻印ゴーレムは互いに触れ合った途端――まばゆい輝きを放ち、そのまま消滅したのである。


 なるほど、敢えて「討伐せよ」ではなく「消滅させよ」と無理難題を吹っ掛けたのも、ちゃんとヒントになっていたわけだな。

 面白い!

 エリスがもし来ていれば、今度こそ喜んだのではないか?

 あるいはあの謎の女ならば、十六体の〈スチールゴーレム〉が相手でもなんのその、力技で消滅させてしまったかもしれないが。


「攻略の糸口が見えたわね! ナナシ君、同じペアの番号をどんどん教えて!」

「お、オレも試すぜ!」

「無理はしなくていいぞ! 特にモモやリンゴは自分の身を守るのに専念してくれ!」


 オリーヴィアの手前、いい格好したいヒイロは止めても効かないだろうが、モモやリンゴがおっかなびっくり二体を引き付けようとするのには、制止がかけた。

 攻略法さえわかってしまえば、二百秒でカタがつく試練だ。

 最初からやり直してもいいしな。

 運動神経に自信がない者が、無理をする必要はどこにもない。


「二番と十番がペア! 四番と十二番がペア! 五番と十三番がペア! 六番と十四番がペア! 七番と十五番がペア! 八番と十六番とペアだ!」


 俺は残るゴーレムたちの額の刻印を、調べては皆に報せつつ、途中で番号とペアにも法則性があることに気づいた。

 俺のように特殊文字を全部は判別できなかったとしても、クリアできるようにヒントがちりばめられていたわけだ。

 そして、オリーヴィアたちも俺の指示を聞いて、法則性に気づいたようだ。

 ヒイロ以外は「何番と何番がペアだって!?」と聞き返してこなかった。


 かくして皆でバタバタと走り回りつつも、残る十二体のゴーレムを六体のゴーレムに合体させた。

 額に「β」「γ」「δ」の刻印を持つゴーレムが、二体ずつとなった。

 そのペアをさらに同士討ちさせることで、どんどん消滅させていった。


「これで仕舞だ――ア・ウン・レーナ!」


 最後に残った「δ」刻印のペアが、ヒイロを追いかけ回しているところへ、俺は片方のゴーレムの背後から強襲する。

〈魔力〉を眉間から振り絞り、練り上げるのと同じ要領で――〈生命力〉のような「何か」をみぞおちの辺りから振り絞り、練り上げ、身体能力を魔法の如く激増させる。

 そして、ゴーレムの一体に背後から強烈な飛び蹴りをかまし、ペアの方へとぶつけ合わせて、強制的に消滅させた。

 その常人を超えた蹴りの威力に、見ていた皆も「おおっ!」と沸いた。


 最近、図書館で知ったのだが――ウーリューという遥か東方の〈武道家〉たちは、彼らが〈勁〉と呼ぶ生命のエネルギーをみぞおちから捻出し、練り上げることで、自身の身体能力を爆増させて戦うという。

 俺の髪や瞳の色など身体的特徴は、文献にあるウーリュー人とは違う。

 だがもしかしたら記憶をなくす以前、遥か東方まで旅したことがあったのかもしれない。


『十六体全ての消滅を確認。試練突破と認める』


 ジニアスアバターもそう宣言し、観戦に回った十一人も合わせて、さっき以上の歓声が沸いた。


「高階層の試練っつっても大したことなかったな!」

「ラクショーじゃないのよ!」

「そうは言っても、ナナシ君が額の刻印のヒントに気づいてくれなかったら、私たちではお手上げだったけれどね」

「お姉ちゃんも、オリーヴィアさんの言う通りだと思うなあ」


 いつものように調子に乗りまくるヒイロとモモを、オリーヴィアとリンゴがたしなめた。

 まあ、そうは言っても皆、笑顔だ。

 高階層の試練をまずは一つクリアできて、うれしくないわけがない。

 観戦組も包まれていた光が消えて、俺たちの方へ駆け寄ってくる。


 しかし、和やかな雰囲気はそこまでだった

 いきなりジニアスアバターが宣告したからだ。


『汝らは過去、第一の〈特別〉試験を突破した。さらに現在、短期間において六つの試練を突破した――』


 聞いて、一同がざわつく。

 オリーヴィアたちジェリド教室の面々は、いったい何が始まるのだろうかと、興味津々の様子で。

 だが俺たちカーマイナー教室の四人は、過去の悪夢を思い出して、顔面蒼白となって。


『――ゆえに第二の〈特別〉試練として、一足飛びに四十六階への挑戦を許可する』

次回もお楽しみに!

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