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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第六章  これは〈命令ではないよ〉とおためごかしばかり言う賢者編

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第十五話  VSイズール教室

前回のあらすじ:


学苑生活を営むマグナス。だがある夜、カーマイナー教室の躍進を妬むイズール教室が、待ち伏せていた!

 イズール教室のネイヴは、袋のネズミを前にした猫のようにサディスティックな笑みを浮かべ、俺に向かって言った。


「そちらこそこんな夜更けまで喫茶を楽しみ、帰寮がてらのんびり散歩とは優雅なものだね? 我々のようなエリート中のエリートと違い、キミのような無能学生は本来、寝る間も惜しんで勉学に励むものだよ?」


 尊大極まる口調で説教をしてくれる。

 たった一人を大勢で囲んだ上での余裕風でなければ、少しはサマになっただろうが。

 傍から見て、自分たちがどれだけ格好悪いか自覚はないか。

 まさに付ける薬がないか。


「忠告、痛み入る。早速実行したいので、そこを通してくれないか?」

「いいだろう。ただし、ボクの用が済み次第だ」

「用というのは例えば――イズール教室(おまえたち)が高層階にたどり着くまで、カーマイナー教室(おれたち)は登塔を自粛しろとか、そういう類か?」

「なっ……」


 俺が図星を指してやると――ネイヴたちはまさか言い当てられると思っていなかったのか――一瞬、態度に狼狽を出す。

 だがネイヴはすぐに態度を取り繕い、また尊大な口調で言ってきた。


「キミたちのような弱小教室が高層階にたどり着けたのは、たまたま簡単な試練を連続して引き当てられたという幸運にすぎないだろうに……ね? にもかかわらず学内では昨今、キミたちを持て囃す風潮が絶えず、あまつさえ『三大教室を超えた』などという暴論、愚論がまかり通っているんだ。実に嘆かわしいことじゃないか! ボクはその誤った言説が是正されることを説に願っている」

「だったらここでクダを巻いていないで、さっさとトウシタへ向かったらどうだ?」


 エリート教室サマの実力を以って、四十階でも四十五階でもさっさと攻略すれば、学内の評判も再び高まることだろうに。

 簡単な理屈だろう?


「もちろん、そうするとも――先にキミたち弱小教室の分際を、よくわからせてあげてからね」


 ネイヴがそう告げたのを合図かのように、イズール教室の他の面々が呪文を唱え始める。

 どいつもこいつもニタニタと、これから獲物をいたぶるのが楽しみでならないという顔つき。

 なんと品性下劣な連中だろうか!

 良家出身の、エリート学生ばかりを集めた教室だなどと、聞いて呆れる。

 その風評こそとっくに是正されていて然るべきではないのか?


「野蛮なことだな。仮にも賢者を志す者が、暴力に訴えて恥ずかしくないのか?」

「これは『暴力』ではなく『調教』だよ。エリートの嗜みとして、言葉を尽くす相手は選ぶようにしているんだ」


 ネイヴは恥ずかしげもなく言ってのけた。

 ただ口で説得や警告をするのではなく、俺を散々に痛めつけて見せしめにすることで、ヒイロたちが怯えて登塔する気力をなくすよう仕向けるのが目的なのだ。

 俺にカーマイナー先生のところへ茶菓子を持っていかせたところから、こいつらの仕込みは始まっていた。

 無論、こうして俺を夜道で待ち伏せるためだ。

 実際に付け届けを頼んできたあの新任教師も、ネイヴに脅迫されてやったに違いない。何か弱みをにぎられているのか、ネイヴの親たちが持つ権力に屈したのか、別に興味はないがな。

 とにかく俺はあの新任教師に頼まれた時点で、イズール教室の罠だと見抜いていた。

 見抜いた上で、敢えて乗ってやった。


「モモやリンゴじゃなく、俺を狙ったところだけは褒めてやる」


 そう、イズール教室の標的がこの俺ならば、むしろ望むところだからな。

 下手に対応して、他に向かってもらっては困るからな。


「当然のことだろう! ボクたちのようなエリートが、女性に手を上げるだなんて恥だからね」

「と言いつつ〈ファイアⅢ〉が使えるヒイロを襲うのは、さすがに恐かったのか?」

「き、貴様っ」


 またも俺に図星を指されて、ネイヴが覿面に形相を歪めた。

 ほとんど同時に、取り巻きどもの呪文が完成した。


「「「シ・ティルト・レン・エ・ヌー・ゲンク・ティルト・ハー」」」

「「「ア・ゲンク・イ・レーイ・ティルト・ヨーク」」」


 連中が使ったのは〈ストレングス〉や〈アジリティ〉といった、身体能力を高める強化魔法(バフマジック)

 もし〈ファイア〉や〈フリーズ〉といった攻撃魔法を使えば、もはや私闘の範疇を超えてしまう。

 露見すれば傷害罪や最悪、殺人未遂罪が適用され、重い罰を課されることになる。

 だから身体能力を上げて、拳で俺を痛めつけるならば、ただの私闘と見分けがつかないという寸法だ。もし露見したり俺が学苑に訴え出たりしても、せいぜい厳重注意で済むという算段だ。

 本当に小賢しい連中だな!


「オレたちがいつヒイロ風情を恐れた!? 言ってみろ、小僧!」


 イズール教室の中でも特に体格のいい一人が、肩を怒らせて俺の方へやってくる。

 魔法で威力を高めた拳を、俺へ向けて振り上げる。


 が、


 俺はほとんどモーションのない裏拳を、先にそいつの脇腹へ叩き込んだ。

 そいつは五メートル以上も吹き飛んでいって、街路樹に叩きつけられ、白目を剥いたままずり落ちていった。



「「「え……………………?」」」



 その光景を目の当たりにしたイズール教室の面々が、一様に絶句した。

 ネイヴも例外ではなかった。

 俺のことを「ただの学生」「ひ弱な賢者見習い」だと決めつけていたのだろう。だから魔法も使っていない俺の、凄まじい拳の一撃を見せつけられ、脳が現実を理解するのを拒んでいるのだ。


「どうした? 俺に分際をわからせてくれるんじゃなかったのか?」

「「「……………………」」」

「そうか。では俺がおまえたちにわからせてやろう」


 俺は噛んで含めるように、ゆっくりと告げた。

 良家に生まれ、さぞ親に甘やかされて育ったのだろう、この頭のめでたい連中にも、ようやく現実が直視できたようだ。

 皆一様に、夜目にもわかるくらい顔面蒼白になっていた。


 だが俺は委細構わず、連中に向かって突撃する。

 拳を見舞い、蹴りを浴びせて蹂躙する。

 無論、死なない程度には手加減してやる。

 だが骨が折れようと内臓が潰れようと、容赦なし。

 こいつらは〈魔法使い〉であると同時に〈僧侶〉でもあるのだから、後で自分たちで治せばいい。

 治癒の魔法というのは本当に便利だな! 

 ()()()()()()()()()()痛めつけてやっても平気なのだからな。

 二度とカーマイナー教室に手出しする気がなくなるくらい、徹底的に激痛を味わわせてやろう。


「い、イキッってんじゃねえぞゴラァ!」

「わかってんのか多勢に無勢だぞ!?」

「死ねやあああああああああっ」


 イズール教室の連中でも、比較的勇敢――あるいは野蛮――な奴らが三方から襲ってきた。

 だが所詮は素人の動きだ。

 いくら魔法で強化されていても、こいつらはそもそも〈戦士〉でも〈武道家〉でもない。

 俺は最小の動作で連中の拳を避けて、何倍にもした威力でカウンターを喰らわせる。


「「「フラン・イ・レン・エル!!」」」


 イズール教室の連中でも、特に臆病な――あるいは、もはや常識的な判断ができないほどパニクった――連中が、俺に向けて〈ファイア〉の呪文を詠唱した。

 その中にはネイヴもいた。

 ネイヴはさすが〈ファイアⅡ〉を使ってきた。


「フラン・イ・レン・エル」


 俺は慌てず騒がず呪文を唱え、同じ〈ファイア〉で応じた。

 ただし俺にはⅡ系魔法は使えない。

 それでも俺の〈ファイア〉は、俺を取り囲む炎の壁の如く地面から噴き上がり、ネイヴの放った〈ファイアⅡ〉を含む複数の攻撃魔法を、尽く阻んでみせた。

 それを目の当たりにしたイズール教室の連中が、とうとう腰を抜かしていた。


 やがて炎熱の波が完全に消え去り、涼しい顔をして立っている俺へ、ネイヴがかすれた声で訊いてくる。


「き、キミは入学したばかりなんだろう……?」

「もうすぐ二か月にはなるがな」

「お、おかしいじゃないか! それでどうして〈ファイアⅡ〉が使える!?」

「おまえの言う通り、使えるはずがない。今のはただの〈ファイア〉だ」

「う、嘘だっ。そ、そ、そうだ、きっと〈ファイアウォール〉とか、何か特別な魔法だったに違いないっっ」

「違わない。繰り返すが、ただの〈ファイア〉だ。少しアレンジは加えたがな」


 炎を放射する形ではなく、円周上の壁状に顕現させたのが、そのアレンジだ。

 通常の〈ファイア〉で対抗して勢い余り、俺が傷害犯になるのはごめんだったからな。


「……今のがただの〈ファイア〉?」

「あ、アレンジ……?」


 こいつらの狭い常識では、あり得ないことばかりが起きているのだろう。


 まあ、かくいう俺自身も、俺のただの〈ファイア〉の威力が、他の誰かが使う〈ファイアⅡ〉の威力を超えてしまっている――そう、天才ヒイロが使う〈ファイアⅡ〉でさえ――事実に、「理屈に合わない……」と当惑しているのだがな。


 強いて説明をつければ、俺の〈魔力〉のステータスが異常に高いのかもしれないが……。

 それこそ才能だとか天賦だとか、そんな範疇には収まらない「異常な高さ」だ。

 例えば、世の中には食べただけで〈ステータス〉が上昇する、魔法の果実が実在するらしい。

 市場にもほとんど出回らない、あってもオークションで屋敷が建つような値段がする代物らしいが。

 もし俺がそんな希少な果実を、一個二個の話ではない何十個も食べたのだとしたら……俺の〈ファイア〉の異常な高威力にも説明がつく。

 が、あるか?

 そんな荒唐無稽な話が、あり得るか?

 失った俺の記憶の中に、果たして答えは見つかるのだろうか……。

 

 まあ、ともあれ今はイズール教室の連中だ。

 腰を抜かしたまま立ち上がることもできず、顔いっぱいに困惑の色を浮かべる「学苑のエリート」たち。


「お互い勉強に修業に、もっともっと励まねばならないようだな。他人の足を引っ張る暇があったら」


 俺は連中をジロリとにらみ据えると、皮肉を残してその場を立ち去った。

 無論、俺の行く手を阻む気概がある者も、追ってくる者もいなかった。


    ◇◆◇◆◇


 あたし――エリス・バーラック・メヘスレスは、お腹を抱えて笑っていた。

〈遠見の水晶球〉を使って、マグナスがイズール教室? とやらの面々を打ちのめす様を、こっそり見物していたの。

 依然として使っているガクレキアンキの古民家で、アンティークベッドの上で笑い転げるあたし。

 寝る前に「マグナスが何してるか、ちょっと覗いてみようかな♪」なんてオトメゴコロを出してみたのが大正解。

 まさかこんな面白い場面を目撃できるなんて。

 

 もちろんマグナスが、記憶を失った程度のことで、こんなしょーもない連中にどうこうされるなんて思ってないわよ?

 ただね、マグナスの物言いがいちいち小気味いいし、ネイヴ? とやらの道化っぷりがさらに笑いを誘うじゃない?

 これがお芝居だったら、おひねりを弾んでいるところね。


「はー、おっかし!」


 あたしは目尻に溜まった涙をぬぐうと、再び水晶球に映し出された光景に注目する。

 以前はこんな風に「マグナスの冒険」を観賞し、追っかけるのがあたしの生き甲斐だった。

 でもマグナスが〈魔弾将軍の腕輪〉を手に入れてからは、探知系の魔法や魔力をほとんど遮断するあの超レアアイテムのせいで、覗き見ることができなくなっていた。

 でも今のマグナスは記憶をなくしているでしょ? 一緒に装備も全部、なくしてるみたいでしょ?

 どういう経緯でそうなったのかはさっぱり不明だけど、とにかく今のマグナスならまた〈遠見の水晶球〉で覗き見できるってわけ。

 

 あたしは枕元の水晶球を、つついて転がしながら、さてどうしようか考える。

 このまま寝ると、寝覚めが悪くなりそう。

 だから、もう少し覗き見を続けることにする。

 待ち伏せ現場を立ち去ったマグナス――ではなく、イズール教室の動向を伺う。


 あたしは人間という生き物が小賢しいだけの、どれだけ退屈な存在が知っている。

 何を考え、どう動くのか、手に取るようにわかる。


 イズール教室の連中は、マグナスの姿が完全に見えなくなった後も、しばらく呆けていたり、ボコられた痛みにうめいていた。

 でも、やがて我にかえったみたい。僧侶の魔法を使って、お互いの怪我を治しにかかった。

 それが終わると、意気消沈した様子で帰路に就いた。

 胸を張って歩いているのは、先頭を行くネイヴだけ。

 怒りだか闘志だかを燃やしながら、考え事をしながら歩いていた。


 ま、こいつは自分だけ安全なとこにいたから、マグナスにボコられなかったしね。

 プライドは散々、傷つけられただろうけど。

 

 それで連中がたどり着いたのは、王都の一等地にあるひときわ立派なお屋敷。

 様子を伺うに、ネイヴの実家みたいね。

 まあまあ広い食堂(ゼール商会の首領だったあたしから見ても)で、大きな食卓を囲んで作戦会議って雰囲気?

 夜も遅いのに使用人を叩き起こして、酒と料理を運ばせてる。


『カーマイナー教室は、絶対に許さない。ああ、このままにしておくものか!』


 ネイヴがドンとテーブルを叩いて、威勢のいいことを言った。

 それでうつむきがちだった他の連中も、のろのろと顔を上げた。


『そりゃオレだって許せないけど……』

『じゃあ具体的にどうするんだ、ネイヴ?』

『あのナナシとかいう、一番ザコそうな奴を狙ったのにこのザマなんだよ?』

『ヒイロにケンカを売った日には、今度はどんな目に遭うか……』

『だったら別の奴を標的にすればいいだろう?』


 こんな簡単なこともわからないのかと、ネイヴは呆れ口調で言った。


『モモかリンゴかあるいは両方か、拉致でもなんでもしてわからせてやればいい』


 それが自明の理だろうと、ネイヴは下劣な顔で口元を歪めた。


『いやでも、女の子を襲うのはさすがに……』

『風聞が悪いってか、もしバレたら私闘(ケンカ)じゃ済まないだろ? 下手すりゃ犯罪扱いだろ?』

『それはさすがにナイってか、ドン引きってか……』

『僕たちは将来を約束されたエリートなんだぜ?』

『わかってないな、キミたち。もし犯罪になりそうなら、揉み消してもらえばいいだけさ。ボクの父は誰だい? 言ってみなよ?』


 ネイヴがいっそ清々しいほどの卑劣さで、恥ずかしげもなく言い出した。


『法務大臣のエンザー師……』

『そう。“十三賢者”の一人にして、我が国の司法を長年支え続けた偉大な元勲――それがボクの父だ』

『そりゃ法務大臣なら、罪の揉み消しの一つや二つは可能だろうけどさ……本当に助けてくれるのか?』

『ボクたちは将来を約束されたエリートだと言ったのは、キミだろう? つまりは父にとって、ボクの将来が傷つくような犯罪は存在しない――してはいけないんだ。わかるね?』

『ハハッ。そういうことなら!』

『ボクとて父の威光にすがるのは、面白いことじゃない。だがカーマイナー教室はボクのプライドを傷つけた。絶対に許さない。手段は選ばない』


 口とは裏腹に、矜持のかけらもない台詞を臆面もなく言ってのけるネイヴ。

 プライドのない男ってほんっと~~にダサイ。キライ。

 でもイズール教室の連中はネイヴに保証されて、モモとリンゴを誘拐する算段を、ウキウキで相談し合う。


 まあ、あんたたちみたいな人間なら、そう来るわよね。そう考えるわよね。

 ほーんと自明の理(わかりやすい)

 見世物にしても退屈で、醜悪で、嫌になるわ。


「どうしてやろうかしら、こいつら?」


 あたしは水晶球を右に左に、指先で弄びながら思案する。

 モモやリンゴは、あたしのお気に入りなの。

 その二人を害すって? それもあんたらみたいな無価値な人間(ゴミ)が?

 たとえ天や法が許しても、あたしが許さないわ。

 手っ取り早く今から行って、皆殺しにしてもいいんだけど……なんか芸がないわよね。

 ふーむ?


『まあ、今夜はもう遅いしね。明日、またここで話し合おう。それまで各自の宿題ということで』


 あたしが考えている間に、ネイヴが音頭をとって解散の運びになった。

 だから今度は〈遠見の水晶球〉で、ネイヴ一人を追う。

 もう床に就くつもりだろう、三階にある寝室に入った。

 天蓋付きの大きなベッド。高価な書物がぎっちり入った本棚が四つも。

 そして、男が使うには立派すぎる姿見(どーせナルシストなんでしょ?)の前で、寝巻に着替え始める。


「キモ……」


 好きでもない男のヌードになんて興味ないあたしは、ネイヴが上着のボタンに手をかけたところで、覗き見をやめようとした。

 まさにその瞬間だった。


『動くな』


 ――と。

 ネイヴの背後に()()()()()()()()()()()、ネイヴの痩せた首を右手でわしづかみにしたのだ。


『は……?』


 絶句し、蒼褪めるネイヴ。

 立派すぎる鏡のおかげで、マグナスに背後から喉元をにぎられている己の様が、皮肉なくらいよく見えているはず。

 動くことはおろか、大声で助けを呼ぶこともできないわよね。

 マグナスが武道家としてもどれくらい強いか、思い知らされたばかりだもの。

 自分の細い喉笛なんて、あっさりにぎり潰されてしまうことくらい、想像できるわよねえ?


『カーマイナー教室に二度と手を出すな。他の連中にも徹底しろ。口約束は要らない。行動で示せ。俺はいつでもおまえに報復ができる。この通りな』


 淡々と脅迫の文句を連ねるマグナス。

 ほんと敵と見れば容赦ないわよね。

 好・き。


 一方、ネイヴはマグナスがどうしていきなり現れたのか、わけがわからないわよね?

 最近しばらくマグナスの様子を、〈遠見の水晶球〉で見守っていたあたしには予想がつく。

〈インヴィジブル〉を使って、姿を消して尾行してたのよね?

 イズール教室の待ち伏せを撃退した後、立ち去ったふりをして実は……ってやつ。

 あたしがこの卑劣な連中が、次はモモやリンゴを狙うんじゃないかって踏んだように、マグナスも当然見抜いて、釘を刺しに来たってこと。


『き、貴様こそボクに手を出せば、法務大臣の父が黙ってはいないぞっ』

『いい部屋に住んでいるな、ネイヴ?』


 ネイヴの安っぽい脅迫には返答をしないで、マグナスは芝居がかった態度で部屋の中の調度を見回した。

 う~ん堂々たる役者っぷり。いや、悪役っぷり。

 ス・テ・キ。


『俺は自分が何者かさえわからない記憶喪失でな。だから野良犬同然、もう失うものはないんだ。ひろってくれたカーマイナー教室の皆以外には、何もな』

『っ……』

『おまえはどうだ? 野良犬のために全てを失う覚悟があるか? あの世から、パパが復讐してくれるところを眺めることができれば本懐か?』

『うぅ……っ』


 その気になったら恐い恐~いマグナスに、これでもかと脅されて、ネイヴはもう子供みたいな泣き顔になっていた。イヤイヤをするように首を振っていた。

 

『憶えておけ。俺はいつでもおまえを見ているぞ?』


 マグナスはとどめの一言とともに、ネイヴの延髄に手刀を叩き込む。

 それで昏倒させると、窓を使って身軽に屋敷を抜け出した。


「なるほど、そう来るわけねえ」


 あたしは事の顛末にすっかり満足し、〈遠見の水晶球〉の機能を消した。

 マグナスのことだもの、あたしが気づくことくらい、そりゃ気づかないわけはないと思ってた。

 モモやリンゴを守るため、なんらか手を打つとは思ってた。

 でもまさか今夜のうちに、しかもこんなヤクザ商会(ウチんトコ)もかくやのやり口を平気で使うなんては、さすがに予想の外だった。

 本当に見てて退屈しない奴!


「はぁ~~~~~~~~~~、おもしろ」


 あたしはベッドに仰向けに寝転がり、目を閉じる。

 今夜は気持ちよく眠れそうだった。

次回もお楽しみに!


そして宣伝が続いて恐縮ですが、拙著「完璧令嬢クラリーシャの輝きは逆境なんかじゃ曇らない」の、コミカライズ連載がFLOSコミック様で始まりました。

URLはこちらです(この下の方や活動報告に、直で飛べるリンクも貼ってあります)。


https://comic-walker.com/detail/KC_007000_S/episodes/KC_0070000000200011_E?episodeType=first


とってもステキにコミカライズしてくださっておりますので、ぜひぜひご一読くださいませ!

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拙著「追放村」領主の超開拓のコミカライズが連載中となっております!

こちらピッコマさんのページのリンクです

さらに拙著「完璧令嬢クラリーシャの輝きは逆境なんかじゃ曇らない ~婚約破棄されても自力で幸せをつかめばよいのでは?~」のコミカライズも連載中です!

こちらがFLOSコミックさんのページのリンクです

こちらがニコニコ静画さんのページのリンクです

そして拙著「魔術の果てを求める大魔術師」コミカライズも連載中です!

こちらDREコミックスさんのページのリンクです

大変ありがたいことに2025年は三作品もコミカライズしていただきました。
どちらもぜひご一読&応援してくださるとうれしいです!
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