第十九話 自称:共闘(エリス視点)
前回のあらすじ:
マグナスにいっぱい食わされたエリスは、結果として“魔獣狂い”に内通を疑われ、襲われた。
そして空中戦を演じていたそこへ、マグナスが現れ――
【宣伝】
コミカライズ単行本1巻がついに発売されました!
よろしくお願いいたします!!
城最上階のベランダに現れたマグナスを見て、“魔獣狂い”はあからさまに動揺していた。
森ではキマイラ軍団とゴーレム軍団が依然戦っているし、まさかマグナスだけが(お付の戦闘メイドもいるけど!)こんなに早くやってくるとは、夢にも思っていなかったのだろう。
そう、マグナスという男はいつもいつも、想像の数歩先を行き、周囲を驚かせる。
そこが本当に面白い!
「さあ、やっちゃいなさいな、マグナス。大将首がここにあるわよ?」
あたしが自分で獣使いの魔女と戦うのはおしまい!
バトンタッチ!
「ティルト・ハー・ウン・デル・エ・レン!」
そして、マグナスが呪文を唱え、強力極まる〈サンダーⅣ〉を撃ち放つ。
――このあたしに向けて。
「えええええええええええ!?」
驚き半分、抗議半分の悲鳴を上げるあたし。
咄嗟に“魔海将軍”からもらった特殊能力を使い、〈サンダーⅣ〉の流れを操り、あらぬ方に逸らしたからいいものの!
そういうサプライズは要らないから!
いくらあたしでも面白がれないから!
「どこを狙っているのよ、マグナス!?」
「無論、頭上の敵に目がけてだ、エリス」
羽で宙を舞いながら猛抗議するあたしに、ベランダに立つマグナスは涼しい顔で答える。
「敵ってんなら、ちゃんと狙いなさいよね!」
「ああ、ちゃんと狙っているさ。“魔海将軍”の魔力と〈天界の宝石〉を持ち逃げした、性悪女をな」
「あそっかー」
マグナスにとっちゃ、“魔獣狂い”なんかよりあたしの方が、ずっと討伐優先順位高いわけかー。
うっかりしてたわテヘ。
「ティルト・ハー・ウン・デル・エ・レン!」
「――って待ちなさいよ! こっちは心の準備ができてないんだから、ちょっと手心とか加えなさいよ!」
あたしは猛抗議するが、マグナスはおかまいなしだ。
あたしへ向けて、〈サンダーⅣ〉を連発してくる。
ホント、こいつはこういう奴。
容赦も斟酌もない、効率の権化。
そこが面白いんだけど……標的があたしだとやっぱり面白くない!
「あ、そうだ。いいこと思いついた♪」
マグナスが怒涛の如く討ち放つ〈サンダーⅣ〉を、尽く逸らしながら、あたしはほくそ笑む。
今はとにかく一発ももらわないようにと、あらぬ方へ逸らしてるだけだけど……。
同じ逸らすでも、もっと流れを工夫して、“魔獣狂い”の方に向けちゃえばよくない?
「というわけで、どうだ!」
「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ」
あたしはぶっつけ本番で、あたしに向けられた〈サンダーⅣ〉の方向性を操り、“魔獣狂い”へと見事ぶつけてみせた。
マグナスの超高レベル大魔力に裏打ちされたⅣ系攻撃魔法の破壊力を、半人半獣となった魔女はまともに喰らって絶叫する。
「あはっ、これ面白~い♪」
マグナスは容赦なく〈サンダーⅣ〉を連発してくるから、あたしはどんどん“魔獣狂い”の方へと逸らして、攻撃する。
“魔獣狂い”も翼こそ生やしているが、この電撃を回避できるほどの機動力はないようで、面白いほど当たる。
そして、当たるたびに絶叫して、のた打ち回る。
これ、もう共同作業よね?
あたしとマグナスの見事なコンビネーションといって過言はないでしょう!
「おのれ……おのれええええ、やはり内通しておったか、エリス・バーラックうううう!!」
ほら、“魔獣狂い”もこう言ってるし?
「呪われろ、エリス・バーラック! “魔海将軍”の恩寵を裏切りし売女! 貴様はこの世で最も唾棄すべき存在だ! 人類よりも度し難い輩だ、コウモリ!!」
“魔獣狂い”は負け惜しみを叫びながら、墜落していった。
あたしとマグナスの勝利である!
「――というわけで、一件落着したことだし、少しお話しない、マグナス?」
「ティルト・ハー・ウン・デル・エ・レン!」
「空気読みなさいよ! というか、あたしに飛び道具は効かない、無駄だって、まだわからない?」
「ハッタリはよせ、エリス・バーラック」
やっと呪文詠唱を中断し、会話に乗ってくれたかと思うと、マグナスは冷笑を浮かべた。
「おまえのその特殊能力、一回使うごとに〈MP〉を消費しているだろう? ゆえに攻撃魔法を連発することは、決して無駄ではない」
その言葉に、あたしはギクリとさせられた。
なんで!? どうして!?
マグナスはあたしの特殊能力のウイークポイントを知ってるわけ!?
「要は俺の〈MP〉が尽きるのが先か、おまえのそれが先か――それだけの話だ。ああ、言っておくが、俺は〈MP〉を回復させるポーションを大量に持っているが、な」
「くっ……」
あたしはこんな展開になるとは思ってなかったから、全く用意してないんですけど……。
これはもうさっさと退散するしかない。
ないんだけど、これだけは確認しておきたい。
「あたしはあんたが火計で来ると読んで、対策していた。だけど、あんたはそのあたしの対策を読んで、裏の裏の策を用意していた。あたしは自分の策に絶対の自信があったけど、あんたにとってはそんなに読み易かったわけ?」
「さあ。なんのことかな」
「とぼけないでよ! 教えてくれたら、代わりにあたしの知ってる『黒魔女さんたちのちょっとお得情報』を、いろいろ教えてあげてもいいんだけど?」
これはマグナスにとっても、悪くない取引のはずだ。
あたしはそう思って提案したのだが――
「不要だ」
マグナスはきっぱりと断った。
まるで「そんなものは、訊ねずとも知っている」とばかりの、自信あふれる態度だった。
なんともミステリアスな微笑を湛えていた。
つまりはメチャクチャかっこいい「男の顔」だ。
ああ、こいつマジ面白い!
「フン、つまらない男ね。じゃあ、いいわよ。あたしは退散させてもらいまーす」
あたしは内心とは裏腹の憎まれ口を叩くと、これ以上の交渉を諦め、コウモリの羽で大気を一打ちし、その場を飛び去る。
まだ〈MP〉が残っているうちに!
マグナスが裏の裏を用意できた理由が、最後まで気になったけれど!
新連載を始めました。
英雄になりたいと一途に願う少年が冒険を繰り広げ、
様々な出会いを経て、
またそのひたむきさゆえに多くの人々に愛され、
中には伝説的な人物もいて、鍛えられ、見守られ、
いつかは英雄譚と呼ばれることになるだろう物語です。
ぜひぜひこちらもよろしくお願いいたします!
https://ncode.syosetu.com/n8723fs/
URLはこちらになります。




