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「攻略本」を駆使する最強の魔法使い ~〈命令させろ〉とは言わせない俺流魔王討伐最善ルート~  作者: 福山松江
第四章  僕に〈命令しないで〉と強がる光の戦士編

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第四十一話  男と男の約束

前回のあらすじ:


エリスによって事なきを得たベリーだが、城内の惨状を見て、レイの胸の内で号泣する。

 俺――〈魔法使い〉マグナスは、〈光の戦士〉レイを相手に、雌雄を決しようとしていた。


「「ア・ウン・レーナ」」


 ともに〈練気功〉に集中し、〈ステータス〉をブースト。

 俺は〈大魔道の杖〉を純然たる長柄武器として構え、〈ブラッククレイモア〉で斬りつけてくるレイを迎え撃つ。

 上段から斜めに走る太刀筋。真一文字の薙ぎ払い。刺突。

 そのどれもが鋭く、重い。


“魔弾将軍”と、続くエルドラ・カリコーンとの連戦。そして勝利により、レイの〈レベル〉は37まで一気に上がっていた。

 今の彼の斬撃を凌げる者など、人類に果たして何人いるのだろうか?


 俺の〈武道家〉のレベルも35まで上がっていたが、まるで分が悪い。

 そもそも同レベルだったとしても、光の戦士と武道家では、勝負にならないしな。

 自然、俺は防戦一方に追い込まれる。


 だが、やられっ放しの俺ではない。

 そして俺は、ただの武道家ではない。


「シ・ティルト・レン・エ・ヌー・ゲンク・ティルト・ハー」


 激しく斬り結びながらも、呪文を唱える。

 レイほどの戦士が相手の白兵戦闘中でも、Ⅱ系魔法くらいなら同時に行使できた。

 俺は〈ストレングスⅡ〉などの強化魔法を用いて、さらにステータスを上昇。

 レイとの差を詰めていく。

 防戦一方の戦いが、互角の打ち合いになっていく。


「〈スラストラッシュ〉!」


 流れを引き戻すために、レイが〈スキル〉を使い始めた。

 高速の刺突、二十一連。


 良い判断だが、俺には通じない。

〈攻略本〉情報のおかげで、俺はこのスキルを、使えはしないが精通している。

 知識があれば、対処法は練れる。


〈スラストラッシュ〉は剣士レベル21で習得できるスキルだ。

 連撃系のスキルとしては、かなり手数が多い部類に入る。

 その分、一発一発の威力は実は少ない削り技。


 俺は二十一発の刺突全てをいなすことは最初から諦め、喰らうに任せる。

 ただし〈硬気功〉を用いて瞬間的に〈防御力〉を高めて、〈被ダメージ〉を最小に抑える。


 そうしておいて、レイが二十一連撃を放ち終わった隙に、俺も反撃する。


「哈(ハ)ッ!」


 杖の柄頭の部分で、レイのみぞおちを突く。

 とにかく速く、鋭く。

 重くなくていい。威力は二の次でいい。

 実際、レイはこれに対処できず、俺の突きはきれいに入る。


 途端、レイの動きが急に、わずかに鈍る。


 俺が武道家レベル35となって習得したばかりの、〈点穴〉というスキルだ。

 相手に近接ダメージを与えた時に、様々な〈バッドステータス〉を付与できる。

 しかもこのスキルの目玉は、状態異常に強力な〈耐性〉を持つ光の戦士やボスモンスター相手でも、ある程度効果を引き起こすことができるのである。


「隙をついて大ダメージを狙うんじゃないのが、マグナスらしい戦い方ですよね!」

「ふふ、いやらしいか? しかし、君を相手に手段を選んでいたら、暴力的な力で薙ぎ払われてしまうからな」


 俺はレイと打ち合いながら、また〈点穴〉の隙を虎視眈々と窺う。

 さっきの〈点穴〉により、レイには〈素早さ低下:小〉のバッドステータスを与えた。

 次は〈力低下:小〉がいいか? あるいは〈麻痺〉が有効か?


 そう思えど、今度はレイが専守防衛の構えに入って、隙を見せてこない。

〈素早さ低下:小〉一つ喰らったくらいで、上手の彼ならまだまだ互角の範囲だろうに。

 この辺りがレベルが高いだけのバカには真似できない、レイの戦闘センスだ。賢さだ。

 

「〈ファルコンブレード〉!」


 そしてカウンタースキルを用い、俺の後の先をとってくる。

 今度は逆に、俺がいいのを一発もらう。

 畳み掛けるように、レイの〈ファングスラッシュ〉、〈熱風剣〉、〈纏気功〉が炸裂する。


 武道家――特にウーリュー派のそれ――はかなり多彩なスキルを習得できる職業(クラス)だが、他者から見様見真似で会得できるレイの多彩さには、逆立ちしても敵わない。

 そもそも俺の使える武道家スキルは、会得したばかりの〈点穴〉を除いて、全部レイも使えるしな。

 その〈点穴〉だってこの戦いの間に、レイは会得してしまう公算大。


 そして、俺が〈点穴〉のような、地味で長期戦向けのスキルしか使わないように、レイもまた〈プロミネンスブレード〉や〈レインボウラッシュ〉のような、大技は使ってこない。隙をさらさない。

 白兵戦ではレイの方が上手なのだからと、焦る必要はないのだからと、ジリジリと差を開いていって、最後には勝っていればいいのだからと、そういう当を得た戦いぶりに徹している。

 実に俺好みの戦法だ。

 君は本当に、俺のものの考え方まで会得していったな!


 百手先の詰みが決まったチェスのような戦い。

 実際、俺がただの武道家であれば、淡々たる敗北へと突き進むしかなかっただろう。

 しかし、そうはいくか。

 レイ。君がそのつもりなら、俺とて考えはある。


 俺は再び、専守防衛の構えをとった。

 今度はレイが攻めあぐねる番となった。

 ただし、俺も決して攻めを放棄したわけではない。


「フラン・イ・レン・エル!」


 レイと白兵戦を演じながら、〈ファイアⅡ〉の呪文を唱える。

 烈火が広がり、避けようのない範囲攻撃がレイを炙る。

 Ⅱ系の攻撃魔法など、今のレイに与えられるダメージは、たかが知れていた。

 しかし、ゼロではない。

 そちらがジリジリと優位を広げていく戦法なら、俺もこれでコツコツとダメージを蓄積していくまでのこと。


「さすがです、マグナス!」

「君こそな」


 超高レベル同士だからこその、地味にして煩悶とした攻防が続く。

 いつ果てるとも知れないそれに、しかし終止符を打ったのはレイだった。


「〈バーラックメイル〉!」


 自分の前面に水の膜(ウォータースクリーン)を展開すると、俺の攻撃呪文の連打を「ぬるり」とあらぬ方向へ逸らす。

 と同時に、とうとう大技を放ってくる。


「〈ブルーライトニング〉!」


 電光石火の突進技だ。

 レベル35の武道家となった俺といえど、見切れる速さではなかった。

 紫電をまとった〈ブラッククレイモア〉の刀身で、抜き胴を打ち込まれる。


「ちゃんと大技も交えていかないと、怖さがないですよね」

「ふっ。そこに気づいたか」


 俺は痛みを堪えながら、油断なくレイへ構えをとり直し、追撃に備えた。


 だが、レイは追撃どころか、突っ立ったまま。

 まるで戦意を失ったように、ただこちらを見つめていた。


「どうした?」

「マグナスもちゃんと“怖さ”を見せてくださいよ」

「…………」

「こんな戦いは、あなたの本当の戦い方じゃない。だったら、いくら続けても茶番だ」

「…………」

「お願いします、マグナス。掛け値なしの、全ての力を総動員して、僕と戦ってください」

「…………わかった」


 君の覚悟を酌もう。

 全ての力を君に見せよう。


 俺は一歩を踏み出した。

 レイから遠ざかるように。

 そして、見えない階段を上っていくように。

 一歩一歩、〈魔嵐将軍の靴〉の特殊効果を使って、大空へと上り詰めていく。

 レイの〈軽気功〉でも届かぬ高みへと到達する。

 だが、俺にとっては魔法の射程範囲である。


「ティルト・ハー・ウン・デル・エ・レン」


 俺は〈サンダーⅢ〉の呪文を唱えた。

 敢えてのⅣ系ではなく、Ⅲ系攻撃魔法だ。

 理由はある。


 地上では、レイが〈ブラッククレイモア〉を溜めるように構えていた。


「〈ソードウェイブ〉!」


 そして、俺に向かって剣波を放ってきた。

 そう、レイは並の前衛職ではない。遠距離攻撃用のスキルだって会得している。

 ただ距離を大きくとったという程度では、魔法使いは今のレイには勝てない。


 地上から撃ち放たれた剣波が、俺へと迫る。

 その行方を、結果を、レイが見つめる。

 その少年の目が、大きく瞠られる。


 そうだ、よく見ておけ。レイ。


 レイの放った〈ソードウェイブ〉は、俺を害することはできなかった。

 俺の周囲に球殻状の、不可視の力場が張り巡らされ、遮ったのだ。


“魔弾将軍”とエルドラ・カリコーンから得た膨大な〈経験値〉により、俺はレベル40魔法使いとなった。

 人類未踏の40台に、ついに到達した。

 同時に、一つのスキルを習得した。


〈余剰魔力放出〉という。


〈サンダーⅢ〉を用いるのに、俺の〈魔力〉はあまりに過剰すぎる。

 その余った分の魔力を周囲に放ち、障壁とし、呪文詠唱中の術者を守るスキルなのだ。

 これがある限り、レイの〈ソードウェイブ〉程度の威力では、俺にダメージを与えられない。

 そして俺は、魔法によって一方的に攻撃が可能だ。


 烈しい電撃が地上を蹂躙する。

 後に残ったのは、大の字になって倒れる、レイの姿だけだった。


    ◇◆◇◆◇


「起きろ、レイ」

「痛くてもう起き上がれません」

「嘘をつくな。君がⅢ系魔法一発でやられるタマか」

「無理と言ったら無理です。僕の負けです」


 大の字に寝転がったまま、レイがさっぱりと笑った。

 憑物が落ちたような笑顔だった。


「昨(・)日(・)か(・)ら(・)ず(・)っ(・)と(・)抱(・)え(・)て(・)い(・)た(・)、(・)悩(・)み(・)は(・)消(・)え(・)た(・)か(・)?」

「はい」


 レイは逡巡なく即答する。


「マグナスは本当に強いですよね」

「ああ」


 まだまだだ、とは敢えて答えなかった。


「魔王なんかに負けませんよね」

「当然だ」


 俺は平気で嘘をついた。


「僕(・)な(・)ん(・)か(・)い(・)な(・)く(・)て(・)も(・)、(・)へ(・)っ(・)ち(・)ゃ(・)ら(・)で(・)す(・)よ(・)ね(・)」

「ああ。エルドラ・カリコーンを討ったおかげで、新たな〈天界の宝石〉もドロップした。これで新たな予定表を立てられる」


 俺は懐から〈天界の宝石:鷹眼〉を取り出してみせた。


「ベリーが独りになっちゃったんです」

「聞いた」

「独りで、この荒廃した国を立て直さないといけないんです」

「難儀だな」

「支えてあげたいんです」

「わかる」


 大の字に寝転がったままのレイ。

 その隣に、俺は腰を下ろす。

 そうして二人で、青空を見上げる。

 見上げ続ける。

 だから、互いの表情は窺えない。


「でも、マグナスと旅も続けたかった……!」


「俺もだよ。レイ」


 そこで互いに言葉が途切れる。

 無言になって、空を見上げ続ける。

 もし、このまま一緒に旅を続けたら――そんな仮定の未来に、しばし想いを馳せる。

 俺とレイとショコラと三人で、様々な土地を巡り、様々な人と出会い、様々な魔物を討ち――そんな情景を、あの青空に重ね合わせる。


「後から追いかけますからね」

「そうか」

「一日でも早くルクスンを立て直して、追いかけますから」

「ベアトリクシーヌ姫を置いていってよいのか? また独りになってしまわないか?」

「ベリーのことですからね。もうこの国が大丈夫ってなったら、今度は世界を救ってこいって、僕の尻を蹴飛ばしますよ」

「ははは、なるほどな!」


「追いかけますからね」

「急げよ? でないと俺が先に魔王を斃してしまう」

「わかってますよ。メチャクチャ急ぎますよ」

「そうか。ならば期待して待っている」


 男と男の約束だ。

これにて四章完結です!

ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます!

16日より五章を更新していく予定ですので、今後ともよろしくお願いいたします。


そして『「攻略本」を駆使する最強の魔法使い』1巻がついに発売されております!

なにとぞなにとぞ応援のほどよろしくお願いいたします!!

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大変ありがたいことに2025年は三作品もコミカライズしていただきました。
どちらもぜひご一読&応援してくださるとうれしいです!
― 新着の感想 ―
[良い点] かつて仲間に捨てられた二人が、本当の仲間と互いのために一時別れる とっても感動しました 二人とも大変な道のりですが、二人の未来は明るい。そう信じられます
[一言] レイと別れる日が来るとわかっていたけど… いい別れっぷり!あつい!
[一言] 4章まで読みました。 光の戦士のラッドって、 マグナスから送り込まれた偽物じゃなかったのか。 遺跡漁りの三つ子のラッドかと思ってた。 単なる同名か。
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