第27話
――初めてみる異世界の町に興奮し夕飯も食べずに寝てしまった俺は、隣のベッドから聞こえる人の動く音で目が覚めた。
「父さん、こんな夜中にどこにいくの?」
「カ、カイル!?お前起きていたのか?」
「今起きたとこ。父さん、どっか行くの?」
窓のそとを見ると、夜になっていた。
町の中は酒場らしきところや一部の場所に人が集まっている。
「い、いやちょっとトイレにでもいこうと――」
「アルノルト!まだか?早くいこうぜ!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!……カイル、これはだな?」
父さんはなにか誤魔化そうとしていたが、外から聞こえた声でごまかしも聞かなくなってしまった。
(こんな時間に、子供をおいて遊びにいくところといえば……)
……カマをかけてみるか。
「父さん、このこと母さんにいってもいい?」
「そ、それはやめてくれ。頼む!そ、そうだ。ほらこの金を小遣いにやろう。な?これで黙っててくれないか?」
(父よ、7才の子供を金で懐柔しようとするとは…)
見事に引っ掛かった父さんは、口止めとして鞄の中から金がいくらか入った袋を渡してきた。
中を見てみると、銀貨が8枚に銅貨が6枚入っている。
これでいくらくらいになるのかわからないけど、まぁ母さんには言わないでおこう。
「わかった黙っておくよ。じゃあいってらっしゃい」
「頼むぞ?ほんとに頼むぞ?」
「はいはい、わかったって」
そのあとも何度か念をおしてから父さんは他の人たちと一緒によるの町に繰り出していった。
◇
町に来て二日目の朝、俺は宿の食堂で皆と朝食を食べていた。
メニューはパンとスープだけだが、パンは一個がでかい上にスープはおかわりし放題なので腹はふくれそうだ。
そして、夜の街に繰り出して言った大人たちはというと…明け方まで起きていたためか幸せそうな顔で寝ている人やおそらく二日酔いであろう症状で気持ち悪そうにしている人たちなどが大半だ。
――ちなみに、大人たちに昨日行った店の様子を聞いたところ。娼館などではなく、ただ酒を飲んで女の人と話をするだけの店だったらしい。そういう店で本当によかった。うん、本当によかった。危うく父親のことを親として見れなくなるところだった。
「父さん、今日は何するの?」
「今日は疲れたから動くのは午後からにしよう」
「明け方まで酒飲んだりするからだよ…」
(…それにしても、急に暇になってしまったな)
店でも回って村のみんなにお土産でも買ってこようかな?
父さんからもらった軍資金もあることだし…。
「父さん、ちょっといろんな店とか回ってお土産とか買ってきていい?」
「おう、気をつけていってこいよ?あ、ちょっと待ってくれ。頼みたいことがあるんだが――」
◇
「まいどあり~」
「これでみんなの分は買えたかな?さて、あとは父さんに頼まれたところに行けばいいか」
宿を出ようとした直前父さんに呼ばれて俺は一つ用事をたのまれた。
用事というのは、父さんが村の警備隊として狩った魔物や動物の毛皮や素材などをファンタジーの定番である冒険者ギルドの買い取りカウンターというところで買い取ってもらって来いというものだった。
冒険者ギルドの存在自体は父さんたちが昔パーティーを組んでいた時の話などで聞いていたので知っていたが、実際に見るのは初めてになる。
(それで、冒険者ギルドってどこにあるんだ?)
「すみません、冒険者ギルドってところに行きたいんですけど何処にあるか知ってますか?」
「冒険者ギルドならこの通りを真っすぐ行ってつきあたりを右に曲がるとあるぞ。剣と杖が交わった絵が描いてある看板が出てるからすぐわかると思うぞ」
「そうですか。ありがとうございます」
親切な通行人言われた通りにこの通りを真っすぐ行き右に曲がると剣と杖が描かれた看板が見えてきた。
西部劇に出てくるような入り口を開けてなかにはいると、右側にあるバーのようなものと左側には飲食スペースらしきところで大勢の大人達が朝っぱらにも関わらず酒を飲んだりしていた。
買取カウンターを探して建物のなかを見ていると正面のカウンターの並びの右端に買取と書かれた場所を見つけた。
「すみません、買取をしてほしいんですが」
受付の人に買取を頼むと、ギルドカードを持っているか?と聞かれたので出発前に父さんに渡されたカードを渡すと本人もしくは本人に近しい人であることを確認された。
どうやらギルドにある機械では人の魔力について調べることができるらしく小さい針で指に傷をつけて出てきた血を使って父さんの子供であると言うことを証明してから持ってきた物達を出して買取をしてもらった。
革などを出す際に『アイテムボックス』を使い驚かれる等のちょっとした出来事はあったがそれ以外は特に問題もなく何気に今世初めてのおつかいは終わった。
◇
おつかいも無事何事もなく終わりお土産も買い終わって暇になった俺は、適当にデナントのなかでも賑わっている商店街を歩いていた。
(この町に最初来たときは、子供が一人であるいたらスラれて身ぐるみ剥がされて終わりだろう。なんて考えていたりもしたが思っていたよりこの町の治安はいいみたいだな)
そう、この町の治安は大分いいほうだと思う。
……比較対象がないからなんとも言えないけど。
町のなかに子供が一人でいても連れていかれそうになることはないし、剣とか背負った怖そうな顔の人でもなんか道とか聞いたら優しく教えてくれた。
そして、そんな治安のよさげな町の中心からちょっと外れた薄暗い感じのところへいって見ようかと思い、悩みながらも好奇心には勝てずに危なそうなところに自分から入っていこうとしているところで迷子らしき子供を見つけた。
近くの大人に必死に何か語りかけているが、なぜだか大人は首を捻ってみなどこかに行ってしまう。
最初は誰かが何とかしてくれるだろうと思って気になった店に入ったりしていたのだが、何店舗回っても同じ場所でずっと何か語りかけているのだ。
同い年くらいの女の子が泣きそうになりながら必死に何か語りかけようとしている姿にさすがに我慢できずに俺は近づいて行って声をかけた。
「君、迷子かい?よかったら親御さんを探してあげるよ?」
すると、その少女は話しかけた俺に向かってこういったのだ。
「Where is here?」
思わず、声が出そうになった。
この世界に来てから久しく聞いてない言語に驚いたのだ。
英語なんてもうほとんど覚えていない。
まぁ、元々そんなに覚えていないが。
それから昔の記憶を必死に掘り起こし、俺はなんとか一言少女の問いにたいして返すことができたのだ。
「This is Denant. Where are you from?」
──これが、少女との出会いだった。そして、当時の俺はこの先この少女と深くかかわり合うことになるとは予想もしていなかった。
そろそろ年が明けますね。
私は、朝から大掃除の残りにおせち料理作り、今だにだしていなかったこたつの設置。と、大忙しでした。
最近は、とても一年が短く感じますね。
きっと、代わり映えのない生活をしているからなのでしょう。
それはともかく、この作品を投稿し初めてから早いことでもう半年が経ちます。
この作品を読んでくださっている皆さん。
本当に読んでいただきありがとうございます。
来年もまた頑張って更新していくので、暇なときにでも読んでください。
では、よいお年を。




