第23話
遅くなりました。
すみません
「それじゃあ、行ってきまーす」
作戦の実行は今日、というかこれからだ。
無事、俺もミーナもアルクとユーリ姉を誘うことに成功し作戦は実行することになった。
アルクと合流するため、家を出るとちょうどミーナも出てきたところだった。
「カイル、頑張ろうね!」
「あぁ、しっかりと誘導しろよ」
「うん、任せて」
今回の作戦で重要になるのは場所に誘導できるか、だ。
しかも、ユーリ姉にはこっそりと聞いてもらうために物音をたてないで近づいてもらいたいが、どうもミーナだと不安が残る。
しかし、ミーナ以外にもこの件を広めるわけにもいかないしちょうど良さそうな人がいなかったのであきらめた。
そして、別れる直前考え付いたことがあったのでミーナに伝えておいた。
◇
「すまん、遅くなった」
アルク、なんでまた遅いんだよ。
村の中に時間感覚がないとはいえ、さすがに30分もまたされるのはおかしいと思う。
それに、今回はミーナと時間を会わせて動かないといけないんだからこんなに遅れるのはやめてほしい。
幸い今回は、ミーナにアルクが遅れてくる可能性があると伝えて近くの物陰で待機してもらっているから作戦に支障はない。
今頃、遅れたフリをしてユーリ姉に会い行っているはずだ。
「で、今日は何を話すんだ?俺の相談ならもう解決したっていったろ?」
「いや、このままアルクに全部任せるのはなんか不安だなって思って。相談されたことは最後までしっかり責任持ちたいし。なにより、前相談されたときにもう一回話をするっていったろ?」
「おいおい、不安ってなんだよ」
でっち上げた呼び出した理由を伝えると、アルクは迷惑そうにしながらも嬉しいようで照れていた。
「じゃあ、移動しようか」
この村の中には、空き家となっている家がある。
今日はその中のひとつである家の中に俺たちは移動した。
空き家と行っても誰もすんでいなかったり使われていないわけではなく、倉庫として村で管理しているものを入れたりしているので中はきれいになっている。
ちょうど腰を掛けるのに良さそうな木材があったので、そこに座り相談を始めた。
「まずは、告白の場所と時間決めからやる?」
そう切り出して相談を始めようとしたところアルクが口をはさんできた。
「ちょ、ちょっとまってくれ、実は俺も相談しておきたいことがあってさ、告白って具体的に何すればいいのかよくは知らないんだけど」
(え?)
数日前に五歳児の言葉に惑わされて、人の話も聞かずに「告白するよ!」なんてことを叫んだやつと同じに見えない。
「告白って言ったら、好きな人を呼び出したりしてからその人に好きです付き合ってくださいって言えばいいんだと思うけど」
「へー、それでいいのか。なんか簡単そうだな。もっとなんか色々やるのかと思ってた」
「告白ってのは、好きな人と付き合うためにやることだから手順が少ないんだろ。でも、言うのが難しいんじゃないのか?」
「そうか~?」
おれも告白なんてしたこともされたこともないからよく知らないけど。
アニメとかではこんな感じだったはず。
「じゃあ、本題に入っていくぞ。さっきも言ったけど、場所と時間は非常に大事だ。しっかりと考えていこう」
「頼むぞ、カイル」
そう言うと、アルクは寝転ぼうとしたので横腹を蹴っ飛ばしてやった。
「いってぇ!何すんだよ!」
「いや、お前も考えろよ!」
2,3分ほどグダクダしてから、場所について二人で考え始めた。
「家でいいだろ」
「なんでそうなるんだよ!もっとムードのいいところ選べよ」
◆ミーナ◆
「ごめーん。遅くなっちゃった」
アルクがカイルと出会うまで待機してたら遅くなっちゃった。
「もぉ、おそいよ~」
「ごめんって、色々あったの」
「まぁいいけど、で今日って結局何をしたいの?」
そうそう、ここからが大事。
カイルにもしっかりやれって言われたし頑張らなくちゃ。
「えっと、相談についてカイルと話し合ってるんだけど、なかなかいい案がでなくて困っちゃったからとりあえず今決まっていることとかユーリ姉としてはどうしたいのかとかを具体的に聞きたいなって」
「思ったから聞いてこいってカイルに頼まれたの?」
えっと、どうしよう。
このいいわけを考えてくれたのはカイルだし、こうやって言ってこいっていってたから…あってる、のかな。
「えーと、そんな感じ」
「自分で聞きに来ればいいのに、わざわざミーナちゃん使うなんて」
「カイルが言うには、女の子同士の方が話しやすいだろうって」
「なんか、考えが大人みたい。まぁ、実際そうなんだけど…」
◇
「っていうこと?」
「そうそう。そんな感じがいいかな~って」
村の中や回りを散歩しながらいい感じに時間を潰せたとおもうし、そろそろカイルたちのところに言ってもいい時間帯になったはず…。
あとは、カイルたちのいる空き家に向かって行って静かに近づいてユーリ姉に話を聞かせれば作戦は成功。
「ユーリ姉疲れたから近くの空き家で休まない?」
この近くにある空き家は、カイルたちのいるとこだけ。
このまま誘導できればオッケー。
「そうね。空き家っていうとあそこね」
ユーリ姉は休むことに賛成のようで、指を指した空き家に向かって歩き始めた。
そして、近づいていくにつれて中の声が漏れて聞こえてきた。
「ーーお前をわしの妻にしてやろう!ってのはどうだ?」
そんな、アルクの声が聞こえたと思ったら何かをはたく音が聞こえた。
「お前、バカか?!どこのどいつが告白のときにそんなこと言うんだよ!真面目に考えろって」
突然聞こえた二人の声に私とユーリ姉は顔を見合わせてしまった。
「ねぇ、ミーナちゃん。今のってアルクの声だよね?」
声だけで判断ができてる?!
「わかんないけど、そうかもしれない」
今の声がアルクかも知れないというのに同意しただけで、ユーリ姉がなんか、ワクワクしてる顔になった。
顔が「なに話してるのか聞いてみない?」って語りかけてきてる。
ためしに聞いてみよう。
「ユーリ姉、なに話してるかちょっと聞いてみる?」
すると、ユーリ姉は首をたてに降り始めた。
そして、人指し指を、口元でピンとたてて静かにと合図してきた。
壁に耳をつけて中の音がほとんど聞こえるような状態になると、何を話しているのかが壁の隙間などから漏れて聞こえてきた。




