第14話
(今日もご飯がおいしいな―)
なんてこと考えている暇はないんだよな。
今日の午前中に聖属性魔法をならうかどうかを決めなきゃいけないんだから。
聖属性魔法の回復魔法を使えるようになると攻撃魔法の威力が落ちるっていうのは、今のところ聖属性魔法の発動に魔力と慈愛の心が必要だと言われているからなんだよな。
でも、もしかすると慈愛の心なんて言うあやふやな物じゃなくても人体に関するしっかりとした知識さえあれば使うことが出来るんじゃないかとは思ってる。
ただ、これは賭けだからなぁ。
もし知識で何とかなるならば、攻撃も回復もできるようになる。
知識で何とかならなければ、回復魔法が弱いうえに攻撃魔法も弱いっていう最悪な状態になる。
まあ、魔法をあきらめて武術を扱えるようにするっていう選択肢があるけど…。
俺、前世の時体育だけ評価が5だったんだよなぁ。
5分の5ならよかったんだけどうちの学校は十段階評価だから半分ってことなんだよなぁ。
まぁ、幼稚園に通っていた時はよく外で遊んでいたから園内でも足が早いほうだったし、普段の運動量が少なかったのがそんな低い評価になった原因なんだろうけど…
走るのも泳ぐのも人より遅れて出来るようになってたから、一応続けていたら出来るようにはなるんだろうけど…出来るようになるまでなかなか続かないんだよねぇ。
飽きっぽいわけじゃないんだけどやるのがめんどくさくなっていつのまにかしなくなってるみたいな感じだったし。
(あーあ。どうしよっかなぁ)
◇
ガチャ
「おじゃましまーす」
「はーい。カイルくんとノエルちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは。ほら、ノエルもあいさつしなさい」
「ルーナさん、こんにちは!」
「はい。二人ともこんにちは」
ダダダダッ
「ノエルちゃん!いらっしゃい!」
「ミーナお姉ちゃんこんにちは!」
「ん~!いやされる~」
「じゃあまたミーナはノエルちゃんと遊んでてね」
「は~い。ノエルちゃん今日は何をしよっか?」
「さて、カイルくんには答えを聞かせてもらおうかな?」
「う~んとね。やってみたいことがあるの」
「やってみたいことって何?」
「え~と、ルーナさんって体についてよく知ってる?」
結局俺は、すでに聖属性魔法の回復魔法を使うことが出来るルーナさんに人体に関する知識を教えて、それで回復力が向上したり攻撃魔法の威力が上がったりするのかを調べさせてもらおう…という考えに落ち着いた。
「いいえ。誰かに習うみたいなことがなかったから普通の人と同じくらいのことしか知らないわよ?」
「そうなんだ…。僕昨日ね、もしかしたら、慈愛の心がなくても体についてしっかり教わったら、その知識?で回復魔法が使えるんじゃないかな?って思ったの」
ん?ルーナさんが何か不思議な物を見るような眼をしている。
「どうしたの?」
「なんでもないの。ただ、この3歳児にはありえないような知性はもしかせて生まれつき女神の加護を持っていることが関係しているのかなぁって」
「エヘヘ、ルーナさんに誉められた~」
そうか!そういう考え方をしてもらえばいいのか!
俺が変な子供に見えるのは、神に愛された神童だからっていうことにしておけば万事解決だな!
「それでね、僕家で体について載ってる本がないかなって探してきたの。だから、まずはルーナさんに体について知ってもらって回復魔法とかになにか変化があるか調べたいの」
「それは、私も気になるからやってみるわ。それで、体について載ってる本ってどこ?」
「それはねー、『アイテムボックス』に入ってるの。いくよー?」
(さぁ、でてこい「救急治療について」)
ゴトッ
「えぇ!?」
「どうかしたの?」
「カイルくん、アイテムボックス持ちなのね。驚いたわ」
昨日突然手に入れたこととかは黙っておこう。
「それで、この本の14ページに載ってる、擦り傷についてのところを読んでほしいの」
「え~と」
<擦り傷>
擦り傷は皮膚の表面の浅い傷です。
土や、砂で汚れている場合は、まず流水でよく洗ってください。
早くきれいに洗うことが大事です。
そのあと清潔なガーゼやタオルを当て止血しましょう。
ただの擦り傷だと思って、油断していると傷口から入った細菌による感染症が起こる場合もあります。
気を付けましょう。
特に、免疫力の低い小さな子供などは擦り傷が原因で熱が出たりするので気を付けましょう。
<切り傷>
包丁やナイフなどで切った直線的な傷です。皮膚の表面だけでなく、皮下組織まで傷つき、出血する時が多いです。
まずよく洗います。流水で、汚れを流してください。
<浅い傷の手当て>
清潔なガーゼを傷口に当て、傷の真上を5分位押さえて止血しましょう。
<深い傷の手当て>
清潔なガーゼを傷口に当て、強く押さえたまま傷のある所を心臓より高くします。
「へー、こんな話はじめて聞いたわ。それにしても、エリザはどこでこんな本かったのかしら?こういう、人の体に関わる本は女神教の検閲を通らないと思うのだけど…」
なんか、また新しい単語が出てきたな。
女神教か、名前からして女神様を崇めてるんだろうな。
どうせ、ロクでもないことに巻き込まれたりするだろうから基本的にか関わらないでおこう。
「で、この内容を覚えてどう使えばいいの?」
「魔法を使う前に、傷口を水で洗うとか?あ、あと、傷口にいる細菌を浄化的な?」
「うーん。とりあえずやってみるわ」
というわけで、昨日と同じようにルーナさんが自分の指を少し切ってから、昨日はそのまま治療をしたが今日は水で洗ってから回復魔法をかけてみた。
「変わった?」
「特に変わったところはないけど…」
やはり、体内構造まで知らないとダメか?
何でもいいから、人体に関することを片っ端から教えよう。
◇
「あ、いつもより魔力の使用量が少ない」
「え?!」
やった!成功だ!
「これで、攻撃魔法の威力もあがっていればいいのよね?」
「うん!」
「じゃあ、いくわよ、。外に」
「お願いします」
『水よ来たれ 泡沫の衝撃 バブルボム』
フワフワ
そうルーナさんが唱えると、握りこぶし大のシャボン玉のような泡が大量に出てきた。
なんか、シャボン玉作ってるみたいだな…と思っていると、突然
パンッ!
という破裂音が聞こえた。
そして一個が破裂するとその回りにあった泡も次に次に割れていき、音が少し軽いが映画などにある銃撃戦のようだと思った。
「どうだった?」
「いつもより使いやすく感じたかな?あと、やっぱり魔力消費が少なくなってるかな」
「じゃあ、実験は成功ってこと?」
「そういえるんじゃないかしら」
「それなら、僕聖属性魔法の方の回復魔法を習いたいです!」
「それじゃあ、早速教えようかなっていきたいんだけど…」
そういうと、ルーナさんは辺りを見回した。
つられて俺も辺りを見回してみると、空は茜色に輝き一部は黒くなり始めていた。
おー、見事な夕焼けだ。
きっと明日は晴れるに違いない。
「今日はもう終わりかな」
実験に時間をかけすぎたか…。
「そうですね」
「じゃあ、明日からは本格的に回復魔法の練習に入れるね。体に関しての知識はもっとほしいからわかったら教えてね?」
「勿論ですよ」
「お兄ちゃん、帰るの?」
「あぁ、今日はもう帰るぞ。ミーナに挨拶をしておいで」
「まるで年の離れた兄弟みたいね」
それは兄弟じゃない二人を指すときに使う言葉な気がするんだけど…今の流れだとおれが老けて見えるってことか?
そんなに老けて見えるのかな?
この年でそんなこと言われたらショックなんだけど。
そんなことを考え落ち込んでいると…。
「あ!老けているってことじゃなくて、カイルくんがしっかりしてて大人っぽいからノエルちゃんと一歳しか差がないようには見えないってこと」
「そうかなー?」
「うん、カイルくんは凄いしっかりしているよ。ミーナももう少し女の子らしくしてくれればいいのだけど…」
「ノエルちゃん明日も来てね!」
「まだ無理そうね」
「あはは…」
「じゃあ、明日からは回復魔法を教えるわね」
「はい!お願いします」
「ミーナお姉ちゃんバイバイ!」
「おじゃましました」
ガチャ
「「ただいま!」」
「お帰りなさい、もうすぐご飯だから手を洗ってきなさい」
明日には3属性持ちになっているかな?
回復魔法があれば一人でもある程度の無茶がきくようになるし、早く習得しておきたい。
あとは今日中にアイテムボックス内のものを鑑定したりしておこう。
「早くしなさーい!」
「はーい」
(今日のご飯はなんだろな♪)




