第11話
スミマセン、遅れてほんとにスミマセン。
エ、エリザって誰?
「ごめんねルーナ驚かせてしまったみたいで」
あ、母さんの名前だったのか、母さんのこと名前で呼ぶことなかったから忘れてた。
ごめん母さん。
ルーナさんはお向かいにすんでいる人つまり、ミーナのお母さんである。
ミーナと同じ明るい茶髪で少し小柄ながらも笑顔をたやさず家事をしている姿をよく見かけ、ほっこりとした気分にさせてくれる。
「いいえ大丈夫よ。それにしてもさっきの音はなんなの?」
「ごめんなさい。僕がさっき魔法の練習をしてたら魔力を込めすぎちゃったの」
「そうだったのね。何の魔法を練習してたの?」
「ファイヤーボールだよ」
「ファイヤーボール?エリザ、カイル君ってもう魔法が使えるの?」
「そうなのよ。カイルったら物覚えがよくて『魔力操作』『水属性魔法』『火属性魔法』のスキルをもう取得しちゃったの」
「え?『火属性魔法』だけでなく『水属性魔法』も使えるの?」
「うん、そうだよ?」
「す、すごいのね。うちのミーナったらまだまだおてんばで困ってるのに」
「女の子は大きくなると思いっきりはしゃげなくなるから今くらいはそのくらいでいいんじゃない?」
「それはそうだけど……」
「ねぇねえ、お母さんとルーナさんってなんで仲良いの?」
「なんでってそれは私達元々は冒険者で同じパーティーだったからよ」
「え?!」
「ルーナさん冒険者だったの?」
「えぇ、私とうちの旦那のドルクとエリザのところのアルノルト、この4人でパーティーを組んでいたの」
「へー」
「アルノルトとダルクが前衛でそれぞれ剣と斧を使って攻撃。私が後衛で魔法を打って牽制とサポート、ルーナが後衛で回復させる。こんな感じのパーティーでやってたわ」
「ルーナさんって回復魔法が使えるの?」
「ルーナは昔教会でシスターをやっていて女神の加護を持っていたから聖属性魔法の回復魔法が使えたの」
え?
女神の加護って言えば俺も確か持ってたはず……
「ルーナさん、僕女神の加護ってやつ持ってるんだけど……」
「え?そうなの?エリザ」
「私聞いてないわよ?そんなこと」
「カイル君!それほんと?!」
「う、うん」
「エリザ、聖属性魔法を教えてあげてもいい?」
「もちろんいいわ」
「カイルもそれでいい?」
「もちろんだよ!ルーナさん、よろしくお願いします」
「…ルーナ母さん」
「え?」
「これから話す機会が増えるのにさん付けだとなんだか他人行儀で嫌だから、これからはルーナ母さんと呼んで」
「え、でも」
「いいから」
「ル、ルーナ母さん、これでいい?」
「んんー。なんか幸せ」
「私のカイルがとられた!ルーナ!カイルは私のものよ!」
「少しぐらいいいじゃない。男の子も育ててみたいの少し貸して?」
これ、このまま放っておいたらいつまでもこれで話してるよね?
どうしたら収まるかな?
考えてみよう!
その1
「止めて!僕のために争わないで!」と悲劇のヒロイン風に言う。
その2
ミーナたちをつれてきて、なるように任せる。
その1はないな。
場がしらけたら羞恥心で死ねる。
というわけで、ミーナたちをつれてこよう!
スキル『隠密』を発動して…
発動したのかどうかはわからないが、なんとなく自分の存在が薄くなった気がするので行動開始。
ノエルを着せ変えて遊んで待っていると言っていたから、ミーナの部屋にいけばよいのだろう。
ミーナの家の玄関扉を開けてから、最短ルートでミーナの部屋にいく。
すると、
「やっぱりノエルちゃん可愛い!なに来ても似合う!」
と、ミーナの興奮する声が聞こえてきた。
(まだ、着せ変えてるのかよ)
トントンッ
「ミーナ、俺だカイルだ。今って入っても大丈夫か?」
「はーい、大丈夫だよ」
ガチャ
「お兄ちゃん、この服似合ってる?」
「オッフ」
「カイル、何言ってるの?」
「いや、扉を開けたら天使がいて驚いただけだ。大丈夫」
いやー。
マジで、可愛いわー。
You are my angelだわー。
つい、できもしない英語が出てくるレベルで可愛い。
「カイル、それはキモいよ?」
グフッ
今のは効いた。
「しょうがないだろ、ノエルがかわいすぎるのがいけない」
「ノエルちゃんがかわいすぎるのは確かにそうだけど…」
って、こんなバカな話をしてる場合じゃないんだった!
「ミーナちょっと来てくれないか?」
「なんで?」
「色々あって、俺の母さんとルーナ母さんが口喧嘩してる」
「ルーナ母さん?なんなのその呼び方」
「あっ、ま、まぁ色々あったんだよ」
「ふーん、まぁいいや。それでなにすればいいの?」
「えっと、二人を止めてもらう?とかかな。詳しいことは歩きながらで」
「分かった。ノエルちゃん一緒にいきましょう」
「うん!」
◇
その後、ミーナたちをつれていった頃には二人は仲良く話していた。
どんな決着になったのか気になったが、聞かなくても困らないので聞かなかった。
聞いたらまた喧嘩しそうな気がする。
きっと冒険者時代から何かと張り合ったりしていたのだろう。
夕食を食べていたら母さんが明日の予定について言い出した。
「カイル、明日からは午前中はお母さんと魔法の練習。午後はルーナのところで治療魔法の練習ってことになったんだけど、これでいい?」
いや、これでいい?って言われてもすでにそれ決まってるやつじゃん。
「うん、いいよ」
「ノエルも!ノエルも魔法の練習する!」
「パパも!パパもカイルと遊びたい!」
「じゃあ、ノエルちゃんも一緒にやりましょうか」
「うん!」
「あれ?パパは?もしかしてみんなで無視してるの?」
父さんがまた何かを言ってるけどあんなの気にしてたら疲れるだけだから無視しよう。
「あなた、子供がみてるのよ。父親としてその態度はどうかと思うわ」
「あ、はい。すみません」
あれ?父の背中が小さく見えるな…なんでだろう。
前世の父親はこんな感じじゃなかったから最初は少し楽しかったけど、でもそんなのは最初のうちだけだった。だんだんうるさく感じてきて、最近ではもううざくてしょうがない。
「父さん、また今度遊んであげますからもう少し父親としての威厳を持ってください」
「うむ、わかった。その時はノエルも一緒がいいな」
「ノエル、父さんあんなこと言ってるけど?」
「お兄ちゃんと遊べるならいいよ!」
「俺はカイルのオマケかよ!」
「父さん、まあいいじゃないか」
「お兄ちゃんいつ遊ぶの?」
「うーん。母さん、ミーナ達も誘ってみんなでピクニックでもしようよ」
「そうねぇ。久しぶりにパーティーメンバーで集まってピクニックってのもいいわね」
「あなた、どうする?」
「もちろん行くさ!」
「そういうわけで、遊んであげられるからもう今日は寝なさい」
「カイルは何をいっているの?あなたももう寝なさい」
「は~い」
「お兄ちゃん、おやすみなさい」
「おやすみ、頼むから明日の朝は普通に起こしてくれよ?」
「お父さん、お母さんおやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
「あれ?ノエル、聞こえてるよな?おーい、何で部屋に行くんだ?おーい」
ポンッ
「なに?お父さん」
「お父さんの気持ちがわかったか?」
さてと、早く寝てあしたに備えようっと…
「おーい、カイル?またか?またなのか」
聞こえない、聞こえない。
明日から回復魔法の練習だな。
早く傷がなおるようになると便利だし絶対覚えよう。
ノエルが普通に朝起こしてくれるといいんだけど…




