第10話
「母さん、おはよう」
「おはよう」
「朝御飯準備できてるから、顔洗って食べて」
「はーい」
ビチャ
「冷たっ!これは…火属性魔法の出番か?」
「お兄ちゃん何してるの?」
「おぉノエル、お兄ちゃんは今から魔法でこの冷たい水を温かくするんだ」
「そんなことできるの?」
「お兄ちゃんはすごいからな!」
水属性魔法で桶に汲んだ水を球体にして中に浮かべる。
そしたら、火属性魔法で小さな火を右手に起こして右手を水のしたに置く。
あとは、水が暖まるのを待つだけだ。
(そろそろいいかな?)
慎重に左手を突っ込んでみると……
「あっつ!」
「お兄ちゃん大丈夫?」
「あ、あぁ丈夫だ。」
思ってたより熱かったぁ。
つい熱いっていっちまった。
水足そう。
今度は大丈夫だな。
「ノエル、少し目を閉じて息を止めてくれ」
「何で?」
「この水を操作して顔を洗うんだ」
「わかった」
「いくぞー」
「ぼびいじゃん、ぼれずぼいお」
「水のなかでしゃべってもわからないよ」
そういってから水をノエルの顔から放すと……
「お兄ちゃん、これすごいよ!」
「そうだろう、お兄ちゃんはすごいんだ」
「カイル~ノエル~早く食べちゃって」
「「ハーイ」」
◇
「「ごちそうさまでしたー」」
「母さん、早く魔法教えて」
「ハイハイ、これ終わったらね」
「行ってきまーす」
「お父さんいってらっしゃい!」
「父さん、気を付けてね」
「わかってるって、ノエル帰ってきたら父さんと遊んでくれよ」
「えぇー、ヤだ!」
「酷い!、なぁそう思うだろカイル?」
この父親は、親バカ街道まっしぐら過ぎるだろ。
「はぁー、何でもいいから早くいきなよ」
「わ、わかったよ。だから、そんな目で見るなって」
「あなた、いってらっしゃーい」
やっといったよ。
あの親父、よくもまぁ毎朝毎朝出掛ける前にあんなに時間をかけられるな。
あんな態度を続けていたら、ノエルが反抗期になったときに当たり前のように避けられるようになるぞ。
◇
「さて、そろそろ魔法の練習を…「カイル~あそーぼー」、はじめられないみたいね」
「ミーナ、どうしたんだ?」
「さっきいったでしょ!遊びに来たの!」
「ミーナお姉ちゃんおはよう」
「ノエルちゃん、おはよう。今日もかわいい、カイルもってかえっていい?」
「お前忙しいやつだな、もちろんノエルは俺のだからあげないぞ」
「少し位いいじゃないケチー」
「あなたたち仲いいわね。でもごめんねミーナちゃん、カイルは今から魔法の練習をする時間なの」
「うーん、じゃあノエルちゃんで遊んで待ってます!」
「そうしてくれるかしら」
(うん?ノエルで遊んで待ってる?)
「おいミーナ、ノエルで遊んで待ってるってどういうことだ?」
「え?あぁ、私が昔来てた服をノエルちゃんに着させてあげるの」
「そういうことか、とても似合っていたらあとで見してくれよ」
「わかったわ」
「カイル、そろそろいいかしら?」
「あ、ごめん母さん」
「そもそも魔法を使うのに何で詠唱が必要なんだと思う?」
戦闘時のバランスをとるため?いや、そんなわけはないな。
うーん、わからない。
「わからない」
「まぁ、詳しいことはわかってないのだけど、今のところ魔法を使う際のイメージを手助けするためにあるって言われているわ」
「イメージを手助け?」
「魔法と言うのは、詠唱と使う魔法のある程度のイメージがあれば使えるといわれているのだけど、いちいち魔法を使うのにイメージをしていたら時間がかかるし疲れるでしょう?だから、詠唱が開発されたとされているの」
「なんでそんなにはっきりしないの?」
「この理論を考えた人は大賢者といわれる人なの。で、この人は初めて魔法の詠唱破棄ができたひとといわれているの。で、この人が言うには魔法とはイメージさえはっきりしていたら詠唱なんていらないといったの」
「じゃあ、なんでさっき母さんは魔法を使うときには詠唱と使う魔法のイメージが必要だっていったの?」
「それはね。詠唱破棄を使えるようになりたくていろんな人が大賢者様に弟子入りしたんだけど、大賢者様以外に誰一人として詠唱破棄を使えるようにならなかったの。でも、魔法を使う際にしっかりとイメージを持ったり、少しアレンジしてみたらできたって人が何人か現れたの。だから、魔法を使う際にしっかりとイメージを持ったりするといいと言われているの」
「はぇー。実は大賢者様が詠唱破棄を使えたのは、『詠唱破棄』っていうスキルを持ってたんじゃないの?」
「そんなことが一時期言われて調べてるたちがいたけど、『詠唱破棄』のスキルを持ってた人は見つからなかったそうよ」
「ふーん」
「というわけで、魔法のイメージをしっかりと持ってもらいたいから今からひとつ魔法を見せるわね」
よ、待ってました!
「それじゃいくわね」
母さんはどこからか持ち出してきた豪華な装飾のついた70センチくらいの高そうな杖を右手に持ち……
『焔よ来たれ 煉獄の火球 ファイアーボール』
と言った。
すると母さんの右手の前に直径15センチほどの火の玉が現れた。
怪談話などにある尾のついたものでなく、完全な球体に近いものだ。
「これが火属性魔法の初級編のひとつファイアーボールよ」
「普通に出す火とは何が違うの?」
「これは標的にぶつけると、爆発するのよ」
危な!
今、その魔法使おうとしてたよ。
「そ、そうなんだ」
「もしかして今使おうとしてた?」
「う、うん」
「使いたくてしょうがないのはわかるけど、ちゃんと説明を聞いてからにして」
「わかったよ」
「じゃあ、今から標的作るから少し待ってね」
そういうと、母さんは杖を前方の地面に向けた。
少しすると、地面が盛り上がり高さ1メートルほどの土壁が出来上がった。
「さぁ、あれに向けてうってごらんなさい」
「う、うん」
詠唱破棄とかできないかな?
詠唱をするとかすごい恥ずかしいんだけど……
よし!、覚悟を決めよう!
『焔よ来たれ 煉獄の火球 ファイアーボール!』
おぉ、出た。
なんか母さんが作ったのよりでかいけど出来た!
「出来た!母さん出来たよ!」
「一回で成功させるなんて、魔法の才能があるわよ」
「母さん、なんかさっき母さんが作ったのよりでかいけどなんで?」
「それは魔力が通常より多く込められてるからよ」
力んだ時に無意識に込めてたのかな?
「さあ、ぶつけてごらん」
「分かった!行っけー!」
ベルトから出したサッカーボールを蹴る少年張りに声を出しながら的に向かって飛ばすと…
ドッガン!
と到底小さい爆発とは言えないような音で爆発し、土壁を木っ端微塵に吹き飛ばした。
(怖っわ!こんなにすごい爆発するのかよ)
「お、思ってたより込められた魔力の量が多かったみたいね」
流石にこんな爆発は想定が気だったみたいだけと、被害なくてよかった。
そう思ったいたら……
「エ、エリザ大丈夫?すごい音したけど……」
そういいながら腰元まで明るい茶髪を伸ばした美女が家の門を開けて駆け足でやってきた。




