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6話 バーサーカー&アマゾネス

前略母さん、お元気ですか?

仕事の方は、軌道に乗り、固定客も得て順調と言って良い状態だと思います。

これからも初心を忘れずに頑張って行きます。

ただ、今ちょっとした問題に立ち向かっています。

少し前から非常識な現象に巻き込まれ、次第に体調にも影響を及ぼしてきました。

病状は、便秘です。

現状を打開しようとトイレの住人となる事を決意てして30分、ついに解放される時がやって来たと思った矢先、トイレの個室が暗くなりました。

なんだ? 停電か?と思い顔を上げるとトイレの壁までの距離が異様に近くなっていました。

うっすらと目が慣れて来た頃、壁にしては凹凸がしっかりして事が解り、さらに慣れて来た頃には、壁では無い頃が判明しました。

見上げるとそこには、灰色の肌をした半裸の壁の様な男が立っていたのです。


「きゃ~~~~!・・・」


と声にならない悲鳴を上げ、今に至ります。

先立つ不孝をお許しください。

by息子より。     



「・・・。」

「・・・。」


冗談はさておき、互いに沈黙のまま警戒?し合う事数分、永遠にも感じられる短い時間が流れ、俺は、真面目に死を覚悟していた。

相手は、歴戦の戦士を思わせるオーラを纏っており、方やこちらは、周りに武器も無く、半脱ぎのズボンで身動きも取りずらい喫茶店の一マスターだ。

だがここで助けが現れた!

俺の声にならない悲鳴を聞きつけて、フラニーは走って来る音が聞こえたのだ。

これで俺は、助かる!と希望の光が見えて来た。


ガチャ!

「ユウくん! 大丈夫!?・・・」

「フラニー!!」

「ちょっとユウくん、妻がいる身で何してるの? ましてや男って・・・。」

「バカヤロウ! どう解釈したらそうなるんだよ!? 良いから助けろ!!」

「ユウくんにバカっていわれた! うわ~~~ん;;」

タッタタタ・・・

「俺を一人にするな~!!」

「オデ スマナイ。」

「しゃべった~!!」


いや、人型だから話は通じるとは、思っていたが見た目に反して低姿勢の言葉だったので驚いてしまった。

まず、フラニーの誤解を解き、トイレで立ち話?もアレなので居間へと移動しようと提案してみたが思いもよらない言葉が帰って来た。


「とりあえず、部屋で話しましょうか?」

「オデ ヨゴレテル。 ソトデ キレイニシテカライク。」


外で水が欲しいと言われ、園芸用のシャワーホースを渡すと頭から綺麗に洗い出した。

大男のシャワーシーンなんて誰得なんだろう?と思いながらもバスタオルを抱えて待つ事となった。

その後、フン!っと数度体を振って水を飛ばし、完全に乾いていた。

礼儀正しさと豪快な対応に唖然となりながらも問題解決へと気持ちを無理やり切り替えていく。


「なるほど、貴方は、戦いの最中に敗れたが多くの命を宿していて生き返る事が出来ると?」

「ソウ オデ シンデモシナナイ。」

「そして、生き返ったらここに居たと? 何故かわかりますか?」

「オデニモワカラナイ。」


困った。いきなり、暗礁に乗り上げた気がする。

少しでも情報は欲しいトコだがあの手に持っている釘バットを更に凶悪にしたようなモノの事を聞いて良いのだろうか?

いやな予感しかないのだが・・・。


「あの、その手に持っているモノは、何ですか? 見た感じ鈍器の様ですが?」

「コレハ タダノボウ モリヲアルクトキニツカッテイタ。」

「普通かっ!!」


おっと、思わず突っ込んでしまった。

しまった!と思い、恐る恐る顔を覗き込むとムッとさせてしまったのか、黙ってこちら睨んでいる。


「・・・。」

「・・・スマナイ ジョウダンダ。」

「冗談なんか~い!」

「コノブキ ハノブブンガカイテンスル アノヤマクライナラ ヒトフリデナクナル。」

「むしろそっちの方が冗談であって欲しかったわ!!」

「デモコノユミノホウガ モットツカエル。」

「その情報は、またの機会にお願いします!」

「ユウくん、お手洗い行って来るね~。」


フラニーは、今の会話の流れでもまったく、動じることなく、マイペースだった。

二人きりにさせられた俺達は、話題も無くなり、茶菓子を譲り合っていたらフラニーの声が聞こえて来た。


「・・・まぁまぁ、これはご丁寧に。」


お客さんかな?と思い廊下に出てみるとフラニーは、トイレに向かってお辞儀をしていた。

困惑しながらもフラニーに近づいた俺は、見てしまった!


「フラニー、どうかしたのか?」

「あ、ユウくん、私もまだまだだな~って思い知らされたよ。」

「はぁ??」


さらに強まった困惑に恐る恐るトイレを覗くと先住民族ぽい衣装に鍛え上げられた肉体が美しい女性が便座蓋の上に三つ指立てて正座していた。

うん、見ても意味が解らない。


「・・・あの、どちら様でしょうか?」

「私は、ティアともうします。 こちらで夫がお世話になっていると思い、突然ではありますが挨拶にまいらせていただきました。」

「・・・夫?」

「ティア。」

「アナタ!」

「あんたかい!!」


後ろについて来てた大男が夫であり、2人は、再会を喜び合っていた。

余談だが子供が2人もいる妻子持ちだという事が判明した。

まぁ、来ちゃったものは仕方ない、ティアさんの方がしっかりしてそうだからすぐに帰す事が出来るかもしれないと思い、場を移し、質問をぶつける事にした。


「あの、彼はどうしてここに居るんですか?」

「私達の世界は、戦争の真っ最中でして、私達夫婦は、戦士として戦場を駆け抜けていました。 夫は、何度か生き返る術を持っているのですが戦争中と言う事もあり、慌てて生き返った所、魂の復活座標がズレてしまい、その場所に体が引き寄せられ、今に至ると思われます。」

「なるほど、むちゃくちゃですね。」

「はい、別の空間に肉体を無理やり引き寄せればミンチになると思うのですが我が夫ながら非常識だと思います。」

「うん、そこじゃないですよ? それでティアさんは、どうやってこちらへ?」

「それは、上司である主神に頼み同じ座標へ飛ばして貰いました。」

「神様からんでた~!!!」


薄々は、分かっていたが恐らく天上界の戦争なんだろうな、恐ろしくて聞く気になれないが。

俺が頭の中で整理しているとフラニーとティアさんが仲良さげに話していた。


「フラニーさんでしたか? 貴女は、見込みがありますね! よろしけれ私と一緒にアマゾネスの復興をしませんか?」

「アマゾネス? なんだか楽しそうな響きだね~♪」

「私の種族は、私以外戦争で死んでしまったのです。」

「可哀想;; ユウくん、私達もお手伝いに・」

「いきません。 それで帰る手立てはあるのですか?」

「残念ですが無理強いは出来ませんね。 はい、合図を送ると主神が呼び戻してくれます。」

「そうですか、それは良かった。」

「そういえばユウくん、便秘は治ったの?」

「あんな状態で出るか~! むしろ引っ込むわ!!」


出来るだけ話を早く終わらせ、戻って貰う様に務めた。


「それでは、名残惜しいですが私達の世界が気になるのでこの辺で失礼させてもらいます。」

「セワニナッタ。」ギュ!

「痛い! 痛い! 死ぬ~!!」

「やっぱりユウくん、男の人の方が良いんだ・・・?」

「いやいや、どう見てもおかしいだろう!!」


ようやく解放され、きしむ体で涙ながらに見送った。

一息付けると部屋へ戻るとテーブルの上に何やら置いてあった。


[色々とお世話になりました。 少しばかりですがお礼として、神界産の便秘薬です。 1日1条づつ食後に服用ください。 3日後には、完全に治ると思います。]

「こんなモノ使えるか~!!」


軽く、医療界から狙われる様な代物を置いて行かないで欲しい。

処分に困り、使う事にしてみたが前よりお腹の調子が良くなった。

流石は、神の薬だった・・・。


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