5話 軍人
※特定の個人や団体とは、一切関係ありません。
フィクションです!
清々しい朝、俺の妻であるフラニーの事を見くびっていた事に気づかされた。
フラニーは、容姿は、ブロンドのショートヘアーが似合う、俺より少し小柄で実年齢よりも若く見られる事が多い。
頭は、悪くも良くもなく普通、だが身体能力が高く、オリンピックに出たら良い成績を出せるのでは?と思うほどにあり、明るくアグレッシブな性格だ。
そんなフラニーといつもの様に朝食を終え、お店前の花壇を手入れしていた時の事だった。
「ユウくん大変! 人が倒れているよ!!」
「何処に!?」
この辺は、年配の方も多く、倒れていいるのなら介抱してやらないとと俺は、慌てて辺りを見渡したが誰もいない。
もしかして、変なモノでも見えているのだろうかとフラニーに問いかける。
「何処にもいないぞ?」
「あそこだよ、あそこ!」
「そっちの方は、木々しか見えないんだが?」
「そうそう、その木々の間の葉の隙間から見えるでしょ? ちょうど岩谷のお爺ちゃん家の裏の畑のとこだよ!」
「見えねぇよ!!」
岩谷のお爺ちゃんとは、俺の店にも来る常連さんなんだが家まで1キロメートルは離れている。
しかもその家との間には、ちょっとした林があり、まず見る事は出来ないはずだった。
その隙間から人が倒れてるのを発見できるとは、視力が良いとか悪いとかの問題じゃない!
妻が人なのかどうか疑わしくなったのは秘密である。
最近、変なのが周りに出没するようになったから疑心暗鬼なのだろうか?
それはそうととりあえず、車を走らせて人が倒れているであろう場所へと向かった。
「ねっ、いたでしょ?」
「あぁ、いたな・・・。」
そこには、軍服を着た男が一人倒れていた。
息は、ある様だが意識が無い。
打ち所が悪かったのかどうかわからず、とりあえず救急車を呼ぼうとスマホで電話しようとした時、男の状態を見て俺は、電話をかける事を躊躇った。
何故ならば、この男の顔を何処かで見た事がある、それに来ている軍服がかなり昔のモノだった。
もしかしたら、また余計なモノと遭遇してしまった?このまま電話をかけたら大参事になるかもしれないと俺の第六感が告げている。
「とりあえず、連れて帰って手当てをしようか?」
「そうだね、ただ気絶しているだけみたいだしね。」
「何でわかるの!?」
フラニーが男を観察し、おもむろに首筋等の数ヶ所を触っただけで容体を告げて来た。
男を後部座席に寝せ、家へと連れ帰る。
謎の男を拾い、妻の新たな一面を見た俺は、運転所ではなかった。
ブィ~~~ン!
キキィ~~~!
家に着いた頃には、男の傷が増えていた事は、言うまでもないだろう。
男を寝かせ、店を開店させる。
今日も、いつもの様に常連客がやって来る。
「ユグル坊、いつもの。」
「はい、あっ、岩谷のお爺ちゃん、家の近くで何かオカシナ事起きたりしませんでした?」
「いや、何も起きておらんよ? どうしたじゃ?」
「そうですか。 いえ、何でもないですよ。」
あの軍人の男は、あの人に間違いないと思うのだがどうやって来たのかがまったくわからない。
考えてもわからず、客もいなくなり、落ち着いた頃、悲鳴が聞こえてきた。
「・・・Oh, My God!!!!」
「あの人が起きたみたいだね。」
俺達は、後片付けもそのままにして男のいる場所へと急ぐ。
男は、肩でゼェゼェと息をしながら周囲を見回している。
「起きた様だな?」
「・・・Who are you? Where am I?」(お前は誰だ? ここは何処だ?)
「貴方は誰? ここは何処?って言ってるよ?」
「俺は、ユグル、でこっちがって通じないか、フラニー説明してやってくれ。」
「うん、まかせて! ムニャムニャムニャンヤムニャンニャニャン。」(旦那様のユグルと私がフラニー、ここは、私達の家だよ。)
「Here where I am why?」(私は、どうしてここに?)
「ムニャムン~ヤムムニャンニャ?」(畑で倒れていたんだよ?)
「Did you help me? Thank you very much。」(助けてくれたのか? ありがとう。)
「ムニャンニャムンニャ。 アハハ」(気にしなくいいよ。 アハハ)
「HAHAHA!」(アハハ)
「通じているとだと~ぉ!!?」
英語は、辛うじてわかる。
問題は、フラニーが何語を話しているかさっぱりわからないのに通じていると言う事だ。
それからしばらく、未知の会話は続いたがどうやら俺の予想していた人物で間違いなかった様だ。
「この人の名前は、マッサオサーって言うんだって。 軍隊の元帥をしているらしいよ?」
「どうしてそんな人が畑で倒れていたんだ?」
「えっとね、初めての視察の時に畑に掘られた穴に落ちて、気づいたらここにいたらしいよ?」
皆さんご存知だろう、学生時代に歴史の教科書に出ていたあの偉人は、肥溜めに落ちて時間跳躍していた事が発覚した瞬間だった。
これは、世間に公表するべきだろうか? いや、とてつもないタイムパラドックスが起きそうだらかやめておいた方が良いだろう。
俺が思考している間にもフラニーとマッサオサー元帥は会話している。もちろん英語とムニャムニャでだ。
「ユウくん、この人、本当は、怖くて仕方無かったんだって?」
「ん?どうしてだ?」
「領土になったとは言え、戦争で恨まれている国に一人で視察に行かされて、何されるか分かったものじゃないからだって。」
「ああ~、なるほど。 元帥クラスの偉い人でも苦労してるんだな。」
「分かってくれるか!君!!」
「日本語喋れるんか~い!!」
「いや~、だって日本語理解できるって分かったら恨み言とか言われそうじゃないか?」
「言われそうだな。」
「しかし、こんなに親切にしてもらえるとは、本国に帰ったら優遇してもらえるように取り払うつもりだ。
」
「問題は、どうやって帰るかだな。」
「ん? 私が載って来た専用機で帰れば良いだけではないのか?」
「いや、何と言ったら良いか、あんたがこの国に降り立った時から80年ほどたっているんだ。」
「なんだって~! 私は、そんなに長い間、気絶していたのか!?」
「そんなわけあるか~い!!」
頭を抱える問題が次々と増えて行く、さっさと終わらせようよ考えるがさっぱり帰し方がわからず悩んでいるとお客がいた。
「師匠、向こうの世界で屋台を出す事にしたからぼくちんにあの料理を教えてくれ!」
「帰れ!」
本当に次から次へと押し寄せて来る問題。
だがここでまさかの解決方法へとたどり着く事になる。
「ふむふむ、その者は、こちらの世界の過去から来たが帰る手段が解らないと言う事か?」
「そうなんだ。 お前の力でどうにかならないか?」
「う~む、とりあえずその者が倒れていた場所へ連れて行ってくれ、手掛かりがあるかもしれん。」
「そうだな、行ってみるか。」
俺の愛車の後部座席に魔王と元帥が乗っているシュールな光景。
誰か変わってくれませんかね~?
現場に着くと早速、魔王が周囲の確認を行う。
「ふむふむ、その穴は無いのか?」
「同じものならあそこにあるが。」
「ほうほう、なるほど。 これで精霊エネルギーの代用をしているのか。」
「精霊エネルギー!!?」
「うむ、大地を潤すのは、精霊達の仕事だからなそれをこの穴で疑似的に行っているのか。この世界の人間もなかなかやりおる。」
「じゃ、この精霊エネルギー?があれば帰れるのか?」
「いや、少し力不足のようだな。その者が倒れていた場所は、龍脈が通っている様だからそれで時間跳躍が出来たのだろう。」
「なるほど、どうにかならないか?」
「あの料理を教えてくれるなら、その分の力をぼくちんが出そう!」
「分かった、やってくれ。」
「交渉成立だな。 お前が倒れた時を教えてくれ。」
「私は、1945年8月31日の昼さがりだったか?」
「この世界の今は何年だ?」
「フンニャカムンニャカ。」
「ふむ、では始めるとするか。」
「お前もわかるんか~い!!」
魔王は、肥溜めの周りに魔方陣を展開し、準備を整えている。
それをバックに別れの時が近づくマッサオサー元帥は、惜しみの言葉をかけて来た。
「世話になったな。この恩は、一生忘れる事は無いだろう。」
「いや、気にするな。」
「準備が整ったぞ。 これでこの穴に飛び込めば、元の世界に戻れる。」
「「えっ?」」
時が止まり、緊張の空気が漂う。
「達者でな。」
「ま、まて! まだ心の準備が!!」
「いいから逝け!」
躊躇するマッサオサー元帥を穴へと突き落とす。
「ああ~~~ I'll be back~~~!」
「二度と帰ってくんな~!」
無事、マッサオサー元帥を送り届け、魔王にも料理を教えて無事に平穏な日々が戻って来た。
ふと懐かしく思い押し入れから取り出す、歴史の教科書を見て目を見開く。
マッサオサー元帥のページに喫茶店を営む2人の夫婦の写真が掲載されていた。
知らぬ間に、あのおっさんは、隠し撮りをしていたのだ。
「私達、有名人になっちゃったね♪」
「タイムパラドックス・・・。」