魔王を封印しよう。
最後の一文を書きたいが為に、勢いだけで書き上げました。
『封印されし不滅の魔王を再び封印せよ。』
異世界から勇者として召喚された俺、天堂和馬は、剣一本と金貨一枚を渡され、目的だけを告げられて城から閉め出された。
あれから五年が過ぎ、あの国に対して思う所はあるものの、今は勇者として旅をしている。
キッカケとなったのは、魔王復活の場に居合わせたからだろうな。
その暴力的な魔力の嵐の中に佇む魔王は、俺と年齢がそう変わらないくらいの少女で、金色の髪に青い瞳の魔王とは思えないその容姿に俺は見惚れたと言ってもいい程ずっと眺めていた。
ぶっちゃけ全裸だったし?いいネタになりました。
魔王と再び出会うには、勇者としての実力と封印術を身に付けるのが必須らしく、本格的に旅をするため戦士とヒーラー、狩人の三人と知り合い、その後に魔王打倒を目指している騎士と魔道士に出会って、一緒に旅をすることになった。
そして、実力を付け封印術を得た時、俺はその術にゾッとした。
「やったな、カズマ!」
「これで魔王を封印出来るわねっ!」
「あ、ああ…」
仲間達が讃えてくれるが、俺は術に対して悩むことが多くなった。
その様子に仲間達も気づいているようだったが、何も言ってこなかった。
旅の終着点、魔王城へと辿り着いたとき、俺は意を決して仲間達に打ち明けた。
「実は…」
封印術を使う為に自身が封印の一部になること、封印の際に対象以外がいると効果が弱いこと、封印が完了するまで長い時間がかかることを。
「アタシ等は四天王を倒したら脱出?冗談じゃない!」
「そんなの、納得できませんっ!」
「き、キミを犠牲に僕等は平和を享受しろ、というのか…!」
「オメェが悩んでたのはソレかよ、クソ!」
「英雄譚の幕引きには、ハッピーエンドこそ相応しいのです。」
仲間の言葉ひとつひとつが、俺の心に刺さる。
だから俺は少しでも『嘘』を軽くしようと、
「封印が終われば自由になれるから、犠牲じゃないさ。
その時は、みんなに会いに行くよ。」
また、嘘をついた。
そして俺達は四天王を打ち倒し、仲間達が魔王城から離れた事を確認してから、魔王がいるという玉座の間までやってきた。
「焦がれたぞ、勇者よ。」
黒いドレスに身を包む少女が玉座に座り、その表情は恋をしているかのように頬を赤く染め、潤んだ瞳が俺の心を見透かしているようで焦る。
「さあ、封印術を使うとよい。
私はそれを望み、お前もそれを望むのだろう?」
魔王の言葉に心臓が跳ね、高鳴っていく。
はやる気持ちを抑え、何度も深呼吸をし
「ゲッホ!…ガハ、ゴホゴホっ!」
むせた。
「フ…」
魔王がわずかに笑った気がしたが、気のせいか?
落ち着いたところで、俺は意を決して魔王へと近づく。
一歩一歩が重い。
近づいてるはずなのに、遠く感じる…
魔王は悠然としてて俺が封印術を使うのを待っているかのようだ。
ようやく、魔王の目の前までたどり着き、
「好きですっ!付き合って下さい!!」
大声で告白をした。
魔王が驚いたような顔をしたが、すぐに微笑む。
「よいぞ、交際をしようではないか。ただし…」
魔王がスッと立ち上がると、彼女の顔が俺の顔に近づき
「夜は私を『封印』して貰うがな?」
「!?!?」
耳元へそう囁いて、クスクスと笑っていた。
その言葉を聞いた俺は顔を真っ赤にしていただろう。
魔王にキスされるまで固まっていたのだから。
そして夜になり、いよいよ『封印術』を使う時がきた。
ちなみに魔王城からは遠く離れた場所に、俺と魔王は家を持った。
緊張が高まる。
魔王が期待を込めた瞳で見つめてくる。
俺は魔力を高めて…詠唱を開始する。
《あまねく快楽と共に、悠久の眠りへと誘う陣となれ!》
そう、これが神も魔王も絶対に封印する術。
《オフトゥン!》
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