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サヨナラ、テイトク  作者: 遠坂遥
デルタとは(解説&年代記)
1/11

デルタとは……

今作の敵、デルタについての解説とこの世界の歴史について。

 デルタ(Delta)、それは突如として宇宙より飛来した謎の生命体である。

 デルタはあらゆるものに伝播し、浸食する。デルタ細胞に汚染された者は、デルタ化と呼ばれる現象を起こし、自身の細胞をデルタ細胞へと変質させる。一度デルタ化した生物はその進行を止めることはできない。故にデルタ化した人間は、隔離以上の厳しい境遇に置かれることとなる(実際の処分について詳しく知る者は少ないだろう)。

 ちなみに、デルタ細胞は三角形の形状を持ち、それが記号のΔ(デルタ)に似ていることからその名がつけられたということは、意外と知られていない。


 地球上において、デルタが初めて人類の前に姿を現したのが、今から19年前。

 一機の謎の飛行物体が米国首都上空に出現。政府の呼びかけに対し一切の反応を見せないそれに対し、すぐさま魔導師が急行。するとそれは突然熱線を放ち都市を破壊。魔導師が迎撃するも、恐ろしいほどの回復能力を持つそれに彼女らはなす術を持たなかった。


 夜が明けるとそれは煙のように姿を消してしまったが、それでも被害は甚大であった。

 その騒動において死亡した魔導師に付着した細胞から、米国政府はそれを「デルタ」と名付け、宇宙からの侵略兵器であると発表したのだった。


 その後政府は「対デルタ殲滅部隊」を組織。世界各国から優秀な魔導師を集め、デルタに対する攻撃を指示した。

 それが、その後20年に渡って続くデルタとの戦いの第一幕、第一次デルタミッション「First Strike」の始まりであった。


 結果的に、この作戦により数百人の魔導師、数十万の一般市民が命を落とした。

 デルタとの初戦は、人類の大惨敗であったことは間違いないだろう。

 人類はこの戦いで、地球の中枢である北米、さらには南米、アフリカ大陸を次々に放棄。デルタへの対抗策を持たない人類は、滅びの時を待つのみとなった。


 しかし、そんな人類の前に1人の男が現れる。その人の名を、アレン・ダイという。

 風変わりな風貌に、奇妙な発言の数々のせいで、人々は初め彼を奇人変人扱いした。

 だが、そんな彼をSEADの前身組織である旧地球防衛軍において第一航空戦隊の司令官を務めていた青山一二三(あおやま ひふみ)が見出し、彼を軍にスカウトした。

 青山は、アレンを初めて見た時から確信していたのだ。

 彼こそが、この世界を救いうる、救世主であるということを。


 彼は現代技術では到底不可能な科学技術を持ち、捕獲したデルタの一部から対デルタ決戦兵器である「AD-ウイング」を創り出すことに成功した。

 ウイングは魔導師に空を飛ぶ力と、デルタを死滅させ得る「波動砲」を与えた。

 そして地球軍は、その兵器を持って再びデルタと相対した。

 それが第二次デルタミッション「デモンズ・リベリオン」である。


 この戦いにおいて、人類は初めてデルタとの戦いで勝利を納める。

 奪われた北米を奪還し、反攻の足がかりを掴むことに成功したのだ。

 彼は新兵器を次々発明した。「ストライク・ウイング」を皮切りに、「モーニング・グローリー」「コンセントレーション」「サラマンダー」「アディッショナル・タイム」は絶大な効果を発揮し、約3年の月日をかけて、ついに地球軍は全ての領土の奪還に成功した。


 人類は勝利の歓喜に沸き立った。

 だが、この物語には続きがあった。


 人類は「デルタ」の完全なる消滅を目論み、デルタ帝星への攻撃を計画。

 救世主であるアレンを筆頭に、地球軍の主力魔導師を次々とデルタ帝星へと投入していった。


 しかし、これこそが本当の悲劇の始まりだった。



 アレンが突如として地球軍との通信を断ったのだ。



 その事実に、世界中に激震が走った。地球軍は全力でアレンを捜索したが、彼を発見することは叶わなかった。

 そして、彼が見つからないまま半年が経過した。


 その日、複数の戦艦が地球に飛来した。

「どこの星の戦艦か?」

 地球軍の通信士が問うた。

 それに対し相手が応える。

「地球軍だ。デルタ帝星より帰還した」と。

 確かに、その戦艦は地球艦隊の反応を示していた。

 アレンが生還したのだと、地球軍は英雄の帰還を喜んだ。


 しかし、実際はそうではなかった。

 地球に飛来したのは地球艦隊ではなく、デルタ艦隊であったのだ。

 油断した地球軍は出撃が遅れ、デルタ艦隊は一挙に欧州の大都市群へと押し寄せた。

 地球軍は反撃を試みるも、彼女らの攻撃はことごとく退けられ、誰一人として街を守ることはできなかった。

 滅びゆく世界で、とある将校はかつての救世主に対して必死に呼びかけを続けていた。

 その人物は、アレンとは旧知の仲にあったのだ。

「どうして君が世界を滅ぼさんとするのか? どうして悪魔に加担したりするのか?」

 そしてついに、彼は応えた。



――悪魔はどっちだ?



 その通信を最後に、デルタ軍の一斉攻撃は信じられないことにピタリと止んだ。

 しかし、欧州はこの戦闘で焦土と化した。なんとか逃げ出した人々が世界各国へ難民となって押し寄せ、世界中が大混乱に陥った。

 そして、民族間で大きな衝突が巻き起こった。

 人間同士が殺し合うその様を見て、あの将校はこう言ったという。


「悪魔はどっちだ?」



 世界が大混乱へと陥ったのを見計らったかのように、再びデルタが地球に飛来し、各地への攻撃を開始した。

 英雄を失い、土地を失い、仲間を失った人々は以前の様な猛烈を反抗心を抱く者は少なかった。


 しかし、この地にまた人々に希望を抱かせる人間が現れた。


 彼女の名前を渡真利哀華(とまり あいか)という。


 彼女は激烈な戦闘力を誇り、次々とデルタを退けていった。

 彼女の活躍に人々は徐々に輝きを取り戻し、地球軍は残った魔導師を集め部隊を再編した。第三次デルタミッション「エリミネート・ネメシス」の始動である。


 彼女を筆頭に、地球軍は戦果をあげ、またしてもデルタを退けていった。

 政府は今度こそデルタの完全消滅を目指すべく、再びデルタ帝星への攻撃を計画する。

 前回の悲劇が皆の頭を過る中、彼女は勇敢にも本作戦の遂行を承諾する。


 そして運命の日。彼女らはデルタ帝星中枢まで進撃を行うことに成功した。


 しかし、それから彼女らの通信が一切届かなくなる。

 再びの悲劇の予感に震撼する人類。

 それから数日後、地球に複数の戦艦が飛来。

 なんとそれはデルタ帝星へと向かった地球軍であった。

 戦艦から降り立った魔導師達は出撃前の半数以下に減っていたものの、その多くは命に別状はなかった。

 だが、その中には、救世主たる哀華の姿はなかった。


 一人の魔導師が涙ながらに語った。


 デルタ帝星における、英雄の最期を――




 デルタは未だ、攻撃を続けている。

 彼女を失った世界は、それでも戦いを続ける。

 なぜアレンがあのような行動を起こしたのか。彼の言葉の意味は何だったのか。大いなる疑問を抱いたまま、そして人類を襲い続ける「デルタ」とは一体何なのか、何一つ分からないまま人類は戦い続ける。

 いつか答に辿りつけると信じて、そしていつか、この戦いに終止符を打つ事ができると、ただひたすらに信じて……。

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