プロローグ
クラスメートの諱小明は変わり者だ。
いつでも、どんなときでも一人だ。特に仲の良い友人と一緒にいるわけでもなければ、他の女子達のように集団でいるわけでもない。
教室の隅っこに、ただぽつりと居て窓の外をぼーっと眺めながら、自前らしきヘッドフォンで何かを聴いている。見るからに大人しそうで、ろくに言葉も話さない。
けれど、窓をの外を眺めるその目はどこか虚ろで、自分達とは違った世界を見つめ、憫笑しているかの様だ。
クラスの女子達は、彼女に近寄りたがらない。諱は、普段から表情の欠片も見せず、委員長が話しかければどうでもよさそうにこちらに視線を向けてくる。
肩までのうねった黒髪。細めの体躯。決して高くない背丈。一見すればどこにでもいるような少女だが、目の合う者全てを貫くような銀色の瞳だけは、他の誰とも違っていた。
クラスの女子達が諱に近寄りたがらないのは、明らかにクラスに馴染もうとしない諱を、異端として認識し、弾き出そうとしているからだと俺は思った。少なからず、俺を含めたクラスの男子はそれに気づいているんじゃないだろうか。けれど誰も助けようとしないのは、‘それが女子という生き物‘だと悟ってのことだろう。
だから俺も、余計な口出しはするまいと黙認せざるを得なかった。女には、女しか分からないことだってあるかも知れないので、せめて可哀想とだけ思っておこうと、何も言わなかった。