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序章
彼が教師を志したのは高校生の頃だった。
進学校としても名高い高校で彼が見たのは予想外の光景であり、自らの価値観を全否定するものだった。
希薄な付き合いを心情とし、形式的な交友関係で塗り固められた15年間でいつしか彼は自分を吐き出すことをしなくなった。そんなことをしなくても自らを高め全うに過ごせばそれなりの人生を送れるだろうと。
だから進学した彼はその高校の、議論の交わし合いとぶつけ合いの激しい校風を目撃し、そこで三年間を過ごし、変わった。進学先決定の頃には人の持つ持論とその掛け合いの素晴らしさを感じられる人生を送りたいと思うようになっていた。