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「どうして? 見ようとして見えなかったことなんて、今まで一度もないのに」
「答えは簡単さ。見せないようにしてるだけだ。それに車の中でも言ったが、他人の色も、見る必要がないときは見ないようにもしている」
「そんなこと、できるわけない!」
力の限り否定した瞬間、一瞬にして黒川がピンク色に包まれた。
黒川は、右の口元にえくぼをつくりながら、「青山君のハダカを想像してみた」と言う。
「もっと違うことで証明すればいいじゃないですか。よりにもよって、なんで僕の……」
「きれいな肌をしている。さぞかし服の下もきれいな身体なんだろう」
「もう! わかりました。恥ずかしくなるからやめてください!」
今度は一瞬にして黒川から色が消え、満足したような表情だけが残る。色と言葉で詰め寄られるのは、なんともエロティックだ。まして、それが意図的なのだから始末が悪い。
「知りたいか」
「もちろんです。こんな力……捨てられるものなら捨てたい、です」
「じゃあ、俺のそばにいろ」
「どうしてそうなるんですか」
「俺たちは一緒にいるべきだからだ」
「もっと具体的に、わかりやすく教えてください。僕は黒川さんみたいに仲間がいたりしないし、こんな風に力について話すのだって初めてなんです」
「力があるぶん、強い色を放つんだな。水色で湿りそうになってるぞ」
「!! 見ないこともできるんだったら、見ないでください!」
水色は不安や焦燥の類の感情を表す色。智也は日ごろから自分の意志とは関係なしに人の色が見えてしまっていたので、見られる側の気持ちについてなど考えたことがなかったが、人に感情を読み取られることが、これほどにも恥ずかしくて屈辱感を味わうものなのかと思い知らされた。
だけど、智也は自身の色を隠す術も、相手の色を見ないようにする術も知らない。
「教えてください。力のこと。黒川さんのこと。……僕のことも」