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Colorful  作者: さわうみ
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 ちょうど同じことを智也も考えていたので、即座にOKの返信をしようとしていったん思いとどまり、自宅へ電話をした。

「あ、おばあちゃん? 智也だけど。今日の夕飯なに?」

「カレーにしたよ。昨日、智也が食べたいって言ってたから」

「いっぱい作った?」

「たんとあるよ」

「じゃあさ、あの、黒川さん呼んでもいいかな?」

「ああ、この間来た智也がお世話になってる人でしょ。それは歓迎しなくちゃだね」

「ありがとう。じゃあ、連絡してみる。僕はもうすぐ帰るからね」

 祖母との通話を切り、黒川に夕食の誘いのメールを返す。黒川からもすぐに返信があり、有難く受けるとのことだった。


 3人の食卓はやはりいいものだった。

「家庭のカレーを久しぶりに食べました。すごく美味しかったです」

「あら、独り者なの? それならちょくちょく食べにいらっしゃいな。智也もいつも黒川さんの話ばかりしてるから、来てもらえたら嬉しいでしょう」

「おばあちゃん! 余計なこと言わないでよ」

 黒川が顔を覗き込むようにしてくる。恥ずかしい。

「ええっと、おばあちゃん、血圧の薬飲んだっけね?」

「さっき飲んでたじゃない。そんなこと忘れないでよ」

「そうか、飲んだっけね。嫌だねぇ、年取ると、物忘れがひどくって」

「もー、しっかりしてよ」

 さして広くないダイニングが笑いに包まれた。

 祖母はいつも22時に風呂に入るのが習慣になっているので、それまでテレビをみてくつろぐ。智也は祖母の淹れてくれたお茶の乗った盆を持ち、黒川を連れて2階の自室へと向かった。

「へえ、きれいにしてるんだな」

 物珍しそうに黒川が部屋を見回す。畳敷きの6畳間に学生時代から使っている古びた勉強机、背丈ほどある本棚、ちいさな折り畳みテーブル。布団は押入れに閉まっているので、意外とすっきりはしているかもしれない。

「あ、お茶、どうぞ」

 テーブルに盆を置き、急須から茶を注ぐ。

「智也」

「は、はい」

 名前で呼ばれるのは久しぶりだった。クリニックでは長谷や柴田の手前もあって、名字で呼ばれているから。

「そんなに緊張するなよ」

「緊張してるわけじゃ」

「じゃあ、ドキドキ?」

「……またすぐそういうこと」


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