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また新しい1週間が始まった。
朝の保育補助の仕事を終えて、智也はいったん自宅に戻っていた。昼食まではまだ時間がるので、帰りがけに買ってきたアルバイト情報誌を眺める。
今の保育園での仕事は短時間且つアルバイトでしかないので、大きな収入にはならない。家賃はかからないとはいえ、祖母も年金暮らしの身分だし、それほど資産を持っているとも思えない。今まで育ててもらってきた分、今度は智也が祖母を支えていかなくてはと思うのだが、色の負担が重すぎて大きな会社では精神的に勤まらない。
せめて空いている日中の時間で、なにか簡単な作業のバイトがあればいいのにと、情報誌をパラパラをめくる。できれば今の保育園のように、短時間でも毎日仕事が入ったほうが、まとまった収入になるのだが。
そのとき、ひとつの記事が目に留まった。
『クリニックの受付募集』
アットホームなクリニックで働きませんか?
勤務時間/9:30~16:30(クリニックは19時まで診療。フルタイム希望の場合は応相談)
給与/○○○○円以上~(能力に応じて相談)
休日/木曜午後・日曜・祝日(その他:夏季と年末年始、有給休暇あり)
採用条件/性別年齢・経験不問。人柄重視の採用です。
一言/産休に入るスタッフの引継ぎをお願いします。家庭の都合考慮します。
×××××医療ビル6階 もえぎクリニック院長 黒川 基
「あーっ!」
思わず声が出てしまってから、ぐいっと顔を近づけて記事を凝視する。間違いない、黒川のクリニックの求人募集である。しかも、智也の希望する勤務内容に限りなく近い。通勤時間にしたって、あそこならば電車を使えば30分前後で通える。さすがに徒歩5分の保育園にはかなわないが、空いている日中に働くことを考えたら十分検討余地がある範囲だ。なんといっても、黒川がいる。
そこまで考えて、はっと気づく。もうすっかり黒川のところで働く気になっている自分に。