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07美しい妹は美しい万華鏡がお気に入り

 セレスは言葉を食い入るように聞いていた。驚きと深い理解の光が浮かぶ。


「なるほど……あなたの言葉は知る魔法の理とは全く違いますが、腑に落ちる部分が多すぎる。フュリス様の魔法はこの世界の魔法とは異なる、新しい理で成り立っているのかもしれません」


 微笑んだ。現代知識とセレスの魔法の知識を組み合わせ、フュリスの魔法を完成させるための新たな研究を始めた。妹に安定させるために瞑想やヨガを教え、身体と心を調和させることに努めた。


 一方のエドウィンも黙ってはいない。フュリスの魔法を完成させようとしていることに気づき、王立魔法学院に、自分とセレスを危険な異形の魔法を研究している、などと告発したのだ。


 不躾にも王立魔法学院からの使者がやってきた。


「あなた方を危険な魔法の研究者として、ギルドへ報告されました。セレスの資格を剥奪し、フュリス様を王立魔法学院に保護します」


 使者の言葉に震えた。エドウィンは行動を先読みし、追い詰めるが、こちらは既に企みを見抜いていた。告発を、フュリスの魔法の秘密を暴くための口実として使おうとしていると。

 手口を逆手に取り、最後の戦いに挑む。セレスに一つの最後の賭けを提案した。


「エドウィンに私たちの計画をすべて見せましょう。彼を魔法の論理で、論破するのです」


 王立魔法学院の使者が屋敷に到着した時、エドウィンも彼らに同行していた。冷徹な勝利の笑みが浮かんでいる。


「セレス、君の資格は剥奪される。君たちが研究していた異形の魔法は、全て王立魔法学院が接収する」


 エドウィンはセレスを嘲るように言ったが、動じることなく応接間の扉を開けた。


「お待ちしておりました。あなたの言う通り、私たちの研究はもうすぐ完成します」


 セレスの言葉に使者たちは顔を見合わせた。エドウィンの顔から一瞬だけ笑みが消える。


「何を馬鹿なことを言っている?君たちの違法な研究はすでに告発されている!」


「違法な研究ではありません」


 はっきりと告げた。


「これは、私たち自身の、フュリスの魔法を完成させるための純粋な探求です」


 使者たちを広間に案内した。広間の中央にはフュリスが座っていた。フュリスの周りにはセレスが描いた、複雑な幾何学模様が広がっている。


「さあ、お見せしましょう。私たちの研究の成果を」


 セレスが顔を向けた。彼の指示に従い、フュリスにあることを質問する。


「フュリス、お兄ちゃんのこと、どれくらい好き?」


 フュリスは満面の笑みを浮かべる。


「フュリス、お兄ちゃんが無限に大好きだよ!」


 その瞬間、フュリスの周りの幾何学模様が一斉に光を放った。フュリスの体が淡い光を纏い、まるで星屑が降り注ぐようにキラキラと輝き始める。

 その光景はエドウィンと使者たちを驚かせ、彼らはフュリスの美しさが一瞬だけ見えた。


「ありえない……彼女の美しさは波動として、この空間に無限に広がっている……?」


 エドウィンは信じられないものを見たかのように呟いた。彼の研究では波動は有限のエネルギーしか持たないはずで、美しさは永遠に存在している。


「エドウィン様、あなたの研究は感情という、魔法の最も重要な要素を無視しています」


「な!」


 エドウィンの顔が驚きと怒りで歪む。


「フュリスの美しさは彼女が持つ、純粋な感情と結びついています。彼女が私を愛する気持ちはエネルギーとなり、美しさを空間に存在させています」


 エドウィンの論理を根底から覆していた。研究はフュリスの美しさを、物質的なエネルギーとしてしか捉えていない。


「そんな馬鹿な!魔法は科学ではない!」


 エドウィンは叫んだ。しかし、使者たちの顔にはすでにエドウィンに対する疑念が浮かんでいた。フュリスの美しさがエドウィンの研究とは全く異なる、新しい魔法の理で成り立っていることを理解する。研究しているからこそわかるもの。


 その日、エドウィンは王立魔法学院に告発した罪で、資格を剥奪された。フュリスの美しさの真の秘密を知る、唯一の魔法使いとなったセレスにひざまずき、頭を下げる。


「負けだ。君は魔法を新しい次元へと導いた」


 エドウィンは去っていった。


「はぁ〜」


 ライジオネルとの一件、エドウィンとの戦いを終え、穏やかな日常を取り戻した。


「お疲れ様です」


 エドウィンとの戦いを終え、フュリスももう魔法に頼らずとも、人と笑顔で話せるようになっていた。だが、今でも家族の心に小さな傷跡が残っている。フュリスなど時々、独り言を呟くようになった。


「美しさ、もういらない」


 自分の美しさがライジオネルやエドウィンといった人を狂わせた原因だと、無意識のうちに感じていたのだろう。傷を癒すために何かできないかと考えた時、知識が一つのアイデアを閃かせた。


 万華鏡。光と鏡の反射によって、美しい幾何学模様を生み出すシンプルな玩具。美しさを、誰にも危害を加えることなく自身の中だけに留めておくことができる。

 セレスに万華鏡の話をしたら興味を示し、すぐに協力してくれた。


「面白いですね。フュリス様の美しさの波動を鏡の反射で増幅させ、彼女自身の目で見せる……魔法の理にも通じる素晴らしい発想です」


 万華鏡の材料を探すために街に出かけ、ガラス職人の工房で小さな鏡の破片を買い、宝石商から色とりどりの小さなガラス片を分けてもらった。

 屋敷に戻り万華鏡を作り始め、筒の作り方を教え、セレスは鏡の角度やガラス片の配置について魔法の理を応用して、助言する。作っている姿を見て目を輝かせていた。


「お兄ちゃん、お姉ちゃん。それ、何?」


 フュリスの問いに微笑んで答えた。


「これはねフュリスだけの秘密の宝物」


 フュリスは万華鏡を作るのを真剣な顔で見つめていた。作り方を教えるとフュリスは不器用な手つきで、小さなガラス片を筒の中に入れていく。


 数日後、時間をかけて万華鏡を完成させた。妹へ完成した万華鏡を差し出すと、フュリスは万華鏡を手に取ると、恐る恐る目を当てる。


「!……わぁ……すごぉい」


 フュリスの小さな口から驚きの声が漏れた。万華鏡の中には光と鏡の反射によって、無限に広がる美しい幾何学模様の世界が広がる。

 美しさが誰にも危害を加えることなく、彼女自身の中で輝いている姿。覗き込みながら何度も何度も、驚きの声をあげた。


「お兄ちゃん、フュリス、この宝物、大好き!」


 満面の笑みを浮かべた。笑顔はライジオネルや、エドウィンの脅威に晒されていた頃とは比べ物にならないほど可愛い。万華鏡を通して傷が少しずつ癒されていくのを感じた。


 夜になると万華鏡を手に穏やかな顔で眠っているのを見た。すやすやと寝息を立てる彼女の枕元には小さな紙切れが置かれ、フュリスの字で書かれていた。


「キラキラ、お兄ちゃんとお揃い」


 紙切れを見て胸が熱くなった。心の傷を癒し、彼女に新しい美しさの形を与えてくれた万華鏡はセレス、フュリス、家族全員の絆をより深く結んだ。


 嬉しくなりながらおやすみと妹の頭にキスを送った。

最後までお読みいただきありがとうございました⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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2025/11/20 05:59 コペルニクスの使徒
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