表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

車輪の記憶

作者: 祁答院 刻

汽車は走っていた


わたしひとりを乗せて


擦り寄るようにあつまった住宅街がきえていく

田園のカカシも

深海のシーラカンスも

鉄のにおいがしそうな まだらに錆びた看板も


わたしは

くぐもった窓から

流れ込んでは はける景色を

みていた


まるでサーカス小屋に迷い込んだ動物のように

総てがままならない まどかな瞳で


古びた汽車の

緩慢な老体にもたれかかって

かれがためいきを吐くかぎり

わたしは旅をした

ひるまの喧騒も

よるの静寂(しじま)も切り裂いて


どれくらい走っただろう


車輪のすべりが鈍くなった

何処かなごりおしそうに

足を引きずって歩くように


わたしは

きしまないていどに車体に寄りかかると

森羅万象のなかでかすかに寝息を立てた

かれの生きた

五百万分の一の(ねむ)


汽車はまた走っていた


わたしひとりを乗せて

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ