第七話 ミレイと言う女
めぐりは風の中、改めて目を見開き、強風吹き荒れる夜空、それによって霞む雲と星々の間に浮かぶその女を、できるだけまじまじと見てみる。
その服装は、めぐりから左腕を奪ったあの女神と言うよりかは、むしろさっきまで彼女に状況の説明をしていて(恐らく腕の手当てもしてくれたのだろう)、そして今、隣で悲痛の叫び声を投げかけている“ティバ”に似ている。
そしてやはり目のやりどころに困るような露出度の衣装と、美しくウェーブのかかった黒髪をもって、ティバと同程度の“凹凸”に富んだその身体を、包んで…いや…部分的に覆い隠していた。
メグリ
~月下の隻腕巫女~
「お願いだッッ」
「何が気に入らないのか、理由をッッ…私たちと話をッッ…!!」
ティバは風が吹き荒れる草原と夜空の中に叫んでいて、近くにはロカの姿も見える。やはり「これ」は過去の映像で、めぐりの姿は彼女たちには見えていないようだ。
それよりめぐりの関心事は、あの恥ずかしい衣装はひょっとして何かの義務なんだろうか…では無く、その“在りよう”と言うか…、“空の浮かび方”にあった。
あの時、言葉に表しようも無い空間で“月の女神”と対峙したのを思い出してみる。
女神はまるで、存在しない壁に釘づけされたかのようにピタァァッッと「静止」していた。空中に、完全に。
しかしこちらは良く見ると、手や足を絶えず小刻みに動かし、空中で姿勢を崩さぬようバランスをとっているように見える。
そしてその豊満な身体もわずかに揺れているのだ…ホバリング中のヘリコプターの如く…上下に。或いは花の蜜を吸うハチドリのように…左右に。
あまりに壮大で理解し難い光景が伝える数少ないその「情報」は
「…女神よりも、レベルが、低い…?」
めぐりにそう呟かせていた。
「どうか行かないでッ“ユタ・ウ・グワン”!!」
傍らのロカも叫び
「そうだッ行くなッ!!」
ティバも同調し、叫ぶ
それに対し女は
「ごめんなさい!“ここ”が嫌になったわけじゃない!でも…他にもっとやりたい事が見つかったの!巫女騎士なんかより…もっとッ!!」
そしてやがて「月の女神では無い黒髪の女」は、少しぎこちない動作で空中でくるりとティバたちに背を向け
「それじゃあティバ!ロカ!私はもう行きます!みんな元気で!」
そして
“サヨナラッ!!”
「!!!」
その別れの挨拶…!その言葉は!めぐりを驚かせるには十分なものであった!!
それはやはりと言うか、やっぱり「日本語」であり…
めぐり自身…今まで気付かぬうちに“エルフ族の言葉”でティバ、そしてロカと会話していた事を、彼女に再認識させたのであった。
「待ってくれッ…待って…」
ティバが声を振り絞って叫ぶ。
ミレイッッ!!!
「ハッッ!!!」
その「回想の中の声」によってめぐりは再び“引き戻された”。
めぐりは思わず自分の身体を抱きしめ、辺りを見回してみる
<後略>
第七話は以上となります。
続きは「ステキコミック」内で連載中の「メグリ~月下の隻腕巫女~」第七話をご覧ください!!