生徒会のハーレム事情は時々常識を超える
この作品は、ふと思いついたことを速攻でまとめた作品となっています。
「入学おめでとう!えーっと……カタナ カナダくん?」
「ちがいます!田中 夏那太ですよ!会長。」
「そうだったか、ごめんごめん」
入学してからもう、2週間が過ぎるというのに
毎朝、会長に会うたび「入学おめでとう」って言ってくるし……。何にせよ、僕の名前を必ずと言っていいほど間違える。わざとなのかな?
だけど、あの時の会長は超が付くほどカッコよかったのに、いったい何があの生徒会長を変えてしまったのか逆に気になった。
生徒会長の馬締 真太郎先輩は中学時代も僕と同じ学校に通っていた。
今でも、生徒会長と初めて会った時のことを覚えている。
中学1年生の夏頃、僕はこんな性格のせいか、クラスの子たちにいじめられていた。そんないじめっ子の一人が突然、僕に変な言いがかりをつけてきた。
最初はすぐになんとかなると思っていた。
でも、事態は悪化し、その言いがかりを付けてきた子がその子の兄にデマ情報を流したらしい。
しかも、その子の兄はこの学校一の不良。
そして、その兄を利用して僕にとんでもない嫌がらせをしようとしているかもしれない。
幸い、しばらくは何も起こらなかったが、ある日の朝、下駄箱に差出人不明のラブレターらしき手紙が入っていた。
開けて読んでみると、「放課後、話があるので屋上に来てください」
僕はそんな手紙に期待して、浮かれてしまったのが間違いだった。でも、その時は知る余地もなかった。
放課後、手紙に書かれたように学校の屋上に行ってみた。
屋上のドアを開けると、「寒っ!」夏ももう、終わりを迎えていたので風が吹くとより寒気が増す。
辺を見渡しても、誰も見当たらない。こんなのよく考えただけでわかるのに……。だってこれはイタズラ。
でも、これだけで済めば1番よかったものの、事態は
より悪化した。
突然、誰かが屋上の階段を走って登る足音がドア越しに聞こえてきた。
一瞬、「この手紙、本当だったの⁉︎」そう驚きながらも、期待してしまった。
「ガチャッ!」
ドアを開けてこっちに向かって来るのは、学校一の不良である、浜岸先輩だった。
「お前かぁ!!!俺の弟に手を出したヤツは!!!」
「今日はタダで帰れるとは思うなよぉ!骨の1本や2本覚悟しろなぁ!」
と、浜岸先輩はすごい迫力で拳を振り上げる。
そして、思い切り力を込めて振り下ろす。
僕はもうだめだと悟って、諦めながら目を閉じた。でも、なぜか、浜岸先輩の拳は当たらない。
何が起こってるのかわからず、目を開けてみた。
すると、僕の前には
「生徒会長?」
生徒会長の馬締 真太郎 先輩が拳を受け止めていた。
「君、ここは俺に任せて逃げろ!俺は大丈夫だから。」
僕は言われた通り逃げた。「情けない」そう思いながらも必死に走って家まで逃げた。
後日、あの生徒会長がカッコよすぎて、会長のことを研究し始めた。
そうして、会長を追ってこの超難関進学校である、青空学園に入学することを決心。そして、無事に入学することができた。それで今に至るわけ。
でも、入学してからあの時のことを会長に聞くと、
「あぁ、あの時は生徒会の仕事をサボって屋上にいたら、たまたまやばそうな展開を目撃して………。」
でも、いったい何が原因なんだろう?
謎が深まるばかり。
3日後、生徒会入会式の際に会長の謎を解明できそうなヒント、というより違和感を感じた。
「この学園の生徒会、会長以外女子?まさか…。」
まさか……こんなところでハーレムが成立していたなんて。
しかし、憧れの会長が
女子なんかに浮かれるとは……。
これまたあるとき、僕は会長に相談と言われて、生徒会室に呼び出されていた。
「はーい、紅茶入りましたよ〜。あとぉ、私のことはリオンって呼んでね♡」お茶を入れてきたのは何とも可愛らしい……じゃなくて、2年で生徒会副会長の佐藤 リオン 先輩。「あ、はい……」
僕は小声で返事をし、紅茶を一口飲んで、ティーカップを口から離したところで、話を切り出してみた
「会長〜、僕に相談って何ですか??」
「実はだな、来年俺が卒業したら生徒会長の座を君に譲りたいんだ。」
「知ってると思うが、この学園の生徒会長の決定方法は先代生徒会長の推薦のみで決定される。だから君を推薦したいと思っているのだよ!」
「僕にはそんな……務まりませんよ!きっと。」
「大丈夫だ!生徒会長であるこの俺が保証する。」
そんな会話も忘れた頃、僕たちはもう2年生になっていた。生徒会長になることを僕は確かに遠慮したはずだけど、なぜだろう……。
「生徒会名簿に僕の名前があるぅーーー!!」
「しかも会長だぁーーーマズイぞぉーー!」
ということは、今年の入学式は僕も大勢の前で……
でも、僕は会長に憧れて今に至る。こうなったらとことんやってやりますよ!僕は会長を超えた会長になってみせる!そう決心した。
その日の放課後、生徒会メンバーの親睦会として、近くのファミレスに来ていた。今年度の生徒会は会長に僕が就任。また、副会長にリオン先輩が就任、書記にはクラス替えをして今年から同じクラスになった小林さんが就任し、会計にはD組の川内 さんが就任した。こんなハーレムな生徒会には事情がある。
それはメンバーが個性派の人々で構成されているということ。
例えば、僕は見たまんまの人だし、リオン先輩はぶりっ子、小林さんは教室で見たときから様子がおかしい。それに邪気眼がどうのこうのとか言ってる時点で中二病確定。川内さんは無口で表情だけは達者。
そんなメンバーでのハーレム生徒会は一筋縄では行かなそう。やれやれ……
数日後、登校中にとあるものを目撃した。
それは、リオン先輩がぶりっ子感丸出しで男子中学生に絡んでいるところだった。
僕は生徒会長として生徒会メンバーのそういうところを見過ごすわけにはいかない。
「そこ、やめーい!」
突如、僕の口から出た言葉が僕じゃないみたいで、
僕までキャラがおかしくなっていることを実感させられたけど、負けないぞ!だって僕には、会長を超えるという夢があるから。
こんな日もあれば、これまたある日の朝のことだった。
登校中、後ろから急に呪文のような意味のわからない言葉が聞こえてきた。
振り返ると予想はついていたが、やはり小林さん。
「あの〜小林さん、その呪文は?あと、その眼帯も何?」
「我は思い出した。前世の記憶を……主と共に勝利した戦いのすえに得た記憶を。」
僕は聞き流すように、
「はいはい、記憶を書き換えるのやめようね。」
「でも、実際、夏那太 殿と今世で出会ったとき、我の邪気眼は共鳴した。」
そんなことを言われる日もあれば、さらにこれまたある日、登校中に川内さんに出会った。曲がり角でぶつかりそうになりながら、僕と目が合い、恥ずかしそうな表情をして走り去っていった。
ほんとに川内さんは表情が達者だな。この表情のおかげで無口だけど、きちんとコミュニケーションがとれる。ここでいかに人の表情が大切なのかを改めて実感した。
本当にこの生徒会はハーレムだけどそれぞれのメンバーに事情があるのだな。そこそこ常識外れだけど
まあ、このメンバーに常識という概念を求めることすら間違っているように感じられる。
だから、人間って面白いのかもしれない。
だって、会長が僕にしてくれた分のことは他の人への恩返しへと姿を変えて、卒業後も僕たちの糧として存在し続けるのだから。
いつかこの短編の続編を作ります。もしよかったら完成次第そちらもご覧ください。