ゼロ章⑤ 『jade』
@<イラスト多用しますのでデータ量とかどうなんでしょ?むっちゃ心配なので、心当たりのある方はバックおーらいして下さい!&あくまでイメージなので大らかに捉えて下さい♪
・・そこは、光あふれる楽園であった・・
雲一つない天上からは、柔らかな光が絶え間なく地上を照らしていた。
それを受ける広大な樹木も、その光を全て遮るのではなく、優しい光に変えて地表に注いでいた。
草木は豊かな緑を示し、色とりどりの花が可憐な姿を競うように咲かせていた。
風は緩やかに吹き、川は清らかな水を停滞させることなく流していた。
・・寒くもなければ暑くもない、常に快適で完璧な環境・・
誰もが思い浮かべる楽園の姿がそこにあった。
その楽園の中にそびえる壮大なる白亜の巨城にて・・
「うむ、新たな柱も完成した!、これで我らが城の守りは一層、強固になったであろう!、がっはははっ!!!」
その広間に大きな声が響く。
「やはり、この世において最も優れた価値は固さである!・・固さとは重さ!、決して砕けぬ頑強さよ!・・そうは思われぬか、B殿よ!!!」
余りの声量に、広間の窓にはめられたガラスがビリビリと振動する。
間近に聞く者があれば、鼓膜を震わされ返答することもできないだろうが・・
「流石は、音に聞こえし堅牢さを誇るR様・・それも一理あることかと」
先ほどの大声量を意にせず涼やかに、それに応える声ひとつ・・
「されど、それだけでは俗衆は惑いましょう・・過剰な壁は幅を狭めることにも通じましょう・・ならば、濁りなき透き通った道こそ、最も肝要なことではございませんか?」
呼ばれたモノは丁寧で静かに諭すように・・しかし、自らの主張は押し通す意思を示していた。
「う~む?・・何を言っておられるのか、良く分からんが・・人の世に聞くであろう?、防御こそ最大の防御であると!、それが分からぬ訳ではあるまい!?」
すーっ・・
大声量の主は、強い口調で返答したモノに詰め寄っていく。
「ふふっ・・どうにも分厚過ぎる壁は、視界を塞ぐ障害になるとの考えが、貴公には及ばぬようでございますね?」
すーっ・・
その詰め寄る動作にも全く怯むことなく、むしろ、こちらの方が正しいのだと対する影・・どちらも一歩も引かず、このままでは両者が完全にかち合う。
「まあまあ~・・お二人とも今はそれぐらいに~しておかれては~?」
そこに突然、別の声と一陣の風が吹く・・
一陣の風は、緑の光を纏っており・・ソレが凝集し、形となって現れる。
「これから御前に向かうんですから~?・・僕としては~」
再び、間延びした声・・それは、ふたりの間に忽然に現れ出た。
「あの方の決められたことを~守らないモノは~」
緊張感も何もない、だらけた口調・・飄々とした態度・・
「・・処罰せねばなりませんよ~?」
・・だか、そこには鋭利な刃物を覗かせる危うさがあった。
「N卿か・・関心せぬな・・我らの間に入るとは・・」
「それには珍しく同感したします・・無作法というものではございませんか?」
その内なるモノに気付いたのか、一瞬のうちに、その場に満ちる緊迫した空気。
それぞれが作り出す、他者が関与できぬ三すくみの均衡。
無言の圧力が場を支配する。
「あっ、忘れていました~伝言です~・・庭園の君は欠席されるそうです~」
その状況を破ったのは、この均衡を生み出した元凶の風・・
風はすぐに別の所に移るのだ。
「ふむ・・いつものことであるか・・まあ、仕方あるまい・・」
「深きお考えがあるのでしょう・・まだ、ワタクシも及ばぬような・・」
残るふたつも雰囲気を和らげ、緊迫した空気が嘘のように溶けていく。
風の主が手を横に振るう。
「じゃ、時間も時間なんで~、僕が連れてちゃいますね~・・返答は不要です」
三者の周りに緑の風が吹き荒れ・・一瞬後には何も残っていなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
巨城の奥、天にも届く高さに位置する間・・
この楽園で最も高い場所であり、最も神聖な場所。
「先ほど陽の光の下、新たな原石が露わにされた・・」
その主は、朗々たる厳かな声を眼下のモノに発した。
恭しく傅くは、先ほどの三つの影。
「命を下す・・」
動くことは許されない、声を出すことは許されない。心を乱すことは許されない。
許されるのは・・ただ、その威厳に満ちた声に耳を傾けるのみ。
「精査せよ」
余りにも少ない言葉・・だが、それだけで三つの影には十分だった。
御声が唱えられたのならば、各々の解釈を出せばいい。
名に課せられた役割を果たすだけなのだ。
「ならば、重さを掛けようぞ!、弱きは砕け、強きは残る!、これぞ我が役目である!」
声の主は、両の手でナニかを挟み込む・・いや、押しつぶす仕草をした。
・・その頭には『塔』という字に似た冠をつけていた。
ただし、その手はヒトの指先を簡略したモノ。
あの方よりも器用であることを示すことなどあってはならぬことなのだ。
「ならば、光を当てましょう!、濁りは遮り、純ならば透す!、ワタクシの教えを!」
声の主は、恍惚とした表情で、光を強めた双眸を輝かせる。
・・その頭は『帽子』を被っていた。
両者ともヒトとは思えぬ色彩の異形・・ただ共通なのは、足が無いこと。
何故なら、足など必要ないからだ。
あの方よりも頭が高いことなどあってはならぬことなのだ。
宣言した、ふたりが発する圧で空気が揺らぎ始める。
「申し訳ありませんが、お二方~・・まずは、僕の仕事かと~」
またも、ふたりの間に入るのは、上半身だけをヒトに模した存在。
やはり、共通するのは足がないこと。
何故なら、あの方が治める盤上に、揺らぐ足など不要なのだ。
「まずは原石を刻み、削り、磨くこと・・それが必要なんじゃないですか~?」
その声の主は、筒にも柱にも見える『黒々としたナニか』を携えていた。
風は目元を赤らめながら、その愉悦を隠そうともせず黒々としたモノに頬ずりする。
「それに古来より探索は騎士の使命と決まっていますから~・・返答は不要です」
人の世に紛れるには、人に近いカタチが相応しい。
その言葉を残し、誰の意見も吹き去った風には届かない。
それを見届けた、残るふたりの姿も主に一礼し、その場から消えていく。
・・この巨城には新しくできた柱がある。
それを柱と見るかは、それを見たモノの裁定であろう。
それが何で出来ているのか知っているモノは、違う見方をするだろうか?
・・この楽園に生い茂る樹木がある。
それを樹木と見るかは、それを見たモノの裁定であろう。
それが何を苗床にしたのか知っているモノは、違う見方をするだろうか?
神聖なる間に残った主は、ゆっくりと左腕を掲げる。
庭園の君に会うためだ。
それを何かと似ていると見るかは、それを見たモノの裁定であろう。
@<全ては御心のままに・・
拙い作品ですが読んで頂いて、ありがとうございます。皆様の応援が生きがいです!
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