1章⑤「吹く風はどちらに」
@<ねこ飼いたい、でも仕事柄、お世話が・・あっ、前回の続きからです。
(注意)あくまでイラストはイメージとして、大らかに捉えて下さい♪
イラスト多用しますのでデータ量とかどうなんでしょ?むっちゃ心配なので、心当たりのある方はバックおーらいして下さい!!!
私の指示で『翡翠色の子猫ちゃん』に変身した翠を見た村長さんは・・
「なんとまあ、こんなにカワイイねこちゃんになれるとはぁ~♪」
最初の厳しい表情を見せていた同一人物とは思えない豹変ぶり・・あれだけ鋭かったまなじりが、トロ~ンとした目つきになっている・・翠、よくやったね♪
今までの情報から私は、この離れ=猫屋敷と見た!、たぶん中には他の猫ちゃんたちがいるんじゃないかな?・・で、中に私たちを入れなかったのは得体のしれないヤツ(失礼な!?)から、大事な猫ちゃんたちを守るためだったんだろう。
あっ、猫屋敷って聞くと何だか飼育崩壊してる悪いイメージがあるけど、多分、この村長さんに限ってそんなことはないだろうと思う・・たぶんね?
私は村長さんの筋金入りの『ねこ好き』に賭けて、更にアピール攻勢を掛ける!
次の一手は、ブータが翠と仲が良い=翠の親である私とも仲良いはず!・・今度は当てずっぽうで根拠が弱いけど、そう思って差し出した私の両手に・・
うにゃ~ん♪、うにゃにゃ~ん♪、うにゃにゃにゃ~ん♪
「どうですか、村長さん、私が言った通りでしょ?、翠は、こんなに可愛い猫ちゃんにもなれちゃうんですよ?、この可愛さは必ず守られなければなりません!」
力説する両手に、子猫の翠とブータが仲良く遊んでくれる♪・・現場の猫ヨシ!、この平和な光景を守りたいはず!、そうでしょ?、そうだよね、村長さん!?
「ご覧の通り、現実にあの子はいるんです!、生きているんです!」
この子の存在は、もう私の中では必然!、誰にも翠を否定させない!、どんなことがあっても守りたい!、この子を守ってくれる味方がほしい!、ぜひとも!
「今の私には村長さんしか信頼できる方がいないんです!、私だけでは、この可愛い娘を守り切れないかも知れません!、どうか、力を貸してくれませんか?、お願いします!・・ブータも遊び相手が出来て、と~っても嬉しそうですよ~?」
どうか、あの子を守りたいっていう私の強い気持ちを理解してもらいたい!
「うぅっ、あのブータが・・なんと羨ましい光景なんじゃ・・」
村長さんが心底、羨ましそうな声をあげている・・効いてる!、効いてる!
私は深々と村長さんに頭を下げる!&ブータのことも交渉材料に上げちゃう!
「うーん?、おかあさん?・・ブータ、ごめんね、ちょっとまってて?」
子猫ちゃんになった翠の口からニンゲンの声が出てる・・まあ以前、『パフェ』になっても喋ってたから・・うーん、摩訶不思議・・まあ、便利だからいいか。
・・とちとちとち・・
子猫ちゃんになった翠が、可愛らしい歩きで村長さんの足元に近付いていく。
「そんちょーさん、スイからもおねがいします!・・よくわからないけど?」
・・ぺこりっ・・
私の行動をマネして小さな頭を下げるネコ翠!、うぅん、何てお行儀よい子なんでしょう!、お辞儀してる子猫ちゃんって、すごい可愛い♪、イイヨ!、イイヨ!
「はあぁぁぁ~!?、なんと可愛らしきコトか!?・・いや、しかし・・」
その攻撃にたじろぎ、全身を震わせている村長さん!・・だが、しかし、まだ最後の一押しが足りないか!?、むむ~、難敵だ・・次の一手を考えねばならぬか・・
・・とちとちとち・・にゃぉ~ん♪・・すりすりすり~・・
「おぉぅっ!?、ぶ、ブータが初めてワシに甘えて来よった!?」
ここで強力な助っ人、いや、助っ猫が参戦してくれた!、ブータが村長さんに近付いて甘え始めた!・・ブータ、お前さん、私たちの会話がわかっているの?
「よしよ・・ぎゃぁっ!?・・うぅっ、なぜじゃ~?、なぜなんじゃ~?」
と思って、触ろうとした村長さんの手をシャキーン!っと引っ掻くブータ!?
『タダでは触らせないわよ?、そんな安いオンナじゃないのワタシ!』ってこと?・・村長さんの手の甲に痛そうな傷が・・ナント巧妙な飴と鞭の使い分けか・・ブータ、おそろしい子・・ブータがオスかメスか知らないけど。
「うーんとね?、ブータがスイたちに、きょーりょくしないとダメだって?」
翠が、村長さんにブータの言葉を説明してくれる・・動物と意思疎通が出来るなんてスゴイ!、また、この子の優秀な点が増えちゃったよ♪・・由来である装飾品の形が、獣の牙を模したもの=動物共感みたいな特性が発揮されているのかな?
「そう言うておるんか・・山野さんに協力せんと撫でさせてもらえんのか・・」
ガックリと残念そうな村長さん・・威嚇でもするように睨んでいるブータが、ナァーゴ!って鳴いてる・・間違いなく、その通り!って言ってるよね、これ?
ありがとう、ブータも協力してくれてるんだね?、この後で『にゃおんちゅーる』・・は手元にないからツナ缶かな?、差し入れに行くからね!
「はぁ~仕方ないのう・・ワシも人の親、子を思う親の気持ちは誰よりも分かるつもりじゃ・・この村長、山野さんたちを守る為、尽力すると約束しましょう!」
観念した村長さんが、私たちに協力してくれると約束してくれる!
「とりあえず、山野さんのお仕事の邪魔をしない様にと、住人たちへお宅に近づかない旨を周知いたしましょう・・あとは、ワシが信頼を置く筋に、事実は伏せたまま話を通しておきますか・・有事の際には、きっと悪いようにはしませんので」
額に皺を寄せ、忙しくなりそうだと思案顔の村長さん・・にゃ~ん♪、とブータが『ガンバレ』って、また村長さんの足元に、すりすりしに行く。
滅多にウチには人が来ないけれど、村長さんからそう伝えてもらえると、家の中だけでも翠に肩苦しい思いをさせず、私も少しは安心できる。
具体的な話は後で聞かせてもらえるだろう・・とりあえず、まず先に村長さんの協力へ私がお礼を言おうと・・
「実につまらないな~・・こんなに魅力的な原石が転がっているというのに~・・これじゃ~折角、この世に出しても~諍いの一つも起きないじゃないですか~」
突然、それを遮るように聞こえてきた、知らない第三者の声!?
・・そこにいたのなら、私たちが気付かないはずは無かった。
この離れに来るまで・・来てからも、私たち以外に人はいなかったはずだった。
その人物は、まったく隠れようとしていなかったのだから。
「誰じゃ!?」「あっ、ひかるかぜ!?」「シャァァー!」
その声と姿に反応して、三者(ネコも含む)も、それぞれの声を上げる!
被っていたフードを上げた声の主は、私たちに素顔を晒す。
男か女か分からない中性的で、とても整った顔立ち・・
ゆっくりとこちらに歩く、ぶれない体幹・・素人目にもただモノじゃないと映る。
だけど、私だけは声を上げられなかった・・何故なら・・
昼前の明るい光に照らされる、その長い髪と瞳の色が・・
・・『私の描いたイラスト』に、とても似ていたからだった・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・常識ではあり得ない、翡翠色の髪と瞳をそなえた、私の子とよく似た人物・・
「捉え所のない風に名を問うのですか~、それって意味がありますか~?、風によって吹かれて~、刹那の間に散るだけの~、無価値な只の塵なのに~?」
飄々(ひょうひょうとした)態度・・間延びした声で私たちに話しかけてくる。
緊張感も何もない、だらけた口調・・口元と瞳は笑みの形だけど、翠とは正反対の異質なモノを感じる気持ちを抑えられない・・何故なら、それが嘲笑の形だから。
裏表のない純粋な善意に対して、表も裏も窺い知れない悪意の塊・・
「おかあさん、あれが、びゅびゅ~ってふいた、ひかるかぜだよ!」
子猫からヒトの姿に戻る翠が、目の前の怪しい人物を『風」と呼んでいる。
余程に慌ててるのか、髪がボサボサだ・・私では感じられないモノを相手から感じてるみたい・・村長さんと会った時に吹いた『風光る』は、このことだった?
「あのかぜは、みどりいろなのに、いやなかんじ・・スイきらいかも・・」
相手が風使いとして・・今までのことから予想できるのは、瞬間移動と周囲に溶け込む能力?・・けど、この子がこんなに嫌うなんて絶対の悪人に違いない!
「あなたは一体誰!?、どうして、そんなに翠に似てるの!?」
・・一般市民の私が出来ることなんて、可愛い我が子を後ろ手に回すことしか出来ないけど・・でも、それが私の恐怖を抑えてくれている・・この子を守るっていう勇気をくれる!
「山野さん、スイちゃんの知り合いではないということであれば・・人の家に入り込んで名も名乗らない者は、不法侵入で警察に連絡するしかありませんな・・目的が何か話してもらえるならば、一考しても宜しいが、いかがかな?」
村長さんが、不審者から私たちを庇う為に前に出てくれる・・ここで何とかしないと相手は風・・逃げ隠れも困難だろう・・私も話し合いで解決したいけど・・
「ふむ、名乗るならば悪い魔女に囚われた姫君を助けにきたナイト・・では、どうでしょうか~?・・ふふっ、ははっ、僕ながら良い名乗りが出来たものです~」
名乗ると言いながら、ふざけたことを言って、更に自分で笑っている・・既に私の心の中では、アンタは『ナイト』じゃなくて『変質者』にクラスチェンジだ。
確かに、翠そっくりの容貌は同族?を思わせるけど・・絶対に翠は渡さない!、私は『自称:正義の味方』なんて言う嘘くさいヤツは信じないよ!
「内藤さん、ではなく時代錯誤も甚だしくも騎士とは・・山野さん、ここはワシが対応しますので、一度、ご自宅に戻ってもらえますかな?、委細は後ほど・・」
村長さんも相手を胡散臭いと感じたんだろう・・私よりも豊富な経験と的確な判断が、そう告げるのなら従う方が賢明かも知れないけど・・相手の目的が翠なら・・
「残念ですが、ご老体・・無価値なアナタの相手をするほど、僕も暇ではないのですよ~・・あくまで、この場で最も価値のあるのは、そちらの未だ定まらぬ原石ですから~・・他の何よりも、精査せよ、との命は厳守されねばなりませんので~」
やっぱり翠以外は眼中にない、話す価値もないと言うばかり・・
「どうやら、正体も目的も話すつもりは無い、と言うことですな?・・では、こちらも然るべき対応をさせていただきますぞ」
交渉は無理だと判断した村長さんが、ポケットからスマホを取り出そうとする・・となると次の相手の一手は・・
「やれやれ~、僕はちゃんと言われたとおりに~・・正式な名を名乗ったというのに~・・その対応とは全く残念ですね~・・後腐れ無く~全て吹き飛ばせば良いのですけど~・・それでは原石の価値が分からなくなってしまうので~」
突然、一陣の風が吹き、『ナイト』と名乗った者の腕の中に『黒々としたナニか』が現れる。
余りにも無骨というか、用途が知れないモノ・・筒にも柱にも見える・・だけど、それを携える相手に浮かぶのは、とても楽しそうな笑顔で・・
「っ!?・・翠!!!」
間違いなく、これは嫌なパターンに違いない!、私はそう直感して無駄かも知れないけど翠を庇い、相手に背中を向ける!!!
「その原石を刻み、削り、磨くのに適した場所に移りましょうか~・・」
・・コン!・・
背中を向けた私の耳が、石畳に何かが当たる音を捉えた・・次の瞬間・・
ごおおおおぉぉぉぅぅぅぅ!!!
「翠!」「おかあさん!」「うぉぉっ!?」「フギャー!?」
凄まじい轟音と暴風が吹き荒れた!!!
私は立ってられず座り込み、必死に腕の中の我が子が飛ばされぬように、離されぬように必死に抱きしめる!!!
「あぁ、言い忘れました・・返答は不要です」
その凄まじい轟音と暴風の中、『ナイト』の声だけがハッキリと耳に届いて・・
N卿<僕はちゃんと名乗ったのにね~?
@<大丈夫!、読者様はちゃんと理解されてるよ!(たぶん)
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