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教室冥土〜クラスメイド〜  作者: 無味無臭
2/15

解放

「大丈夫かい?お嬢さん?」

そう言いなが近づいてくる白髪の男は、整った顔をしており、ニヤついているのに光の灯っていない目をしている奇妙な男だった。

「はぁ、ここの家の持ち主とは仕事仲間だったんだけどな、あんな肉の塊になってしまったよ、はは」

男は声を上げて笑った。

「ところで君は?」

「…・ここの家の者です。」

「あーなんて言うか、ご愁傷さま?」

男は罰が悪そうに頭を掻きながら言う。

「名前は?」

「…・・霞です。」

「へーじゃあ霞ちゃん、これからどうするの?」

そう言われて、僕は困った。

何故なら、これからも何も死ぬつもりだった。親がいなくなってしまえばこの世界にこだわる理由もない。

「どうしましょうかね。」

僕は考えながら答えた。

「特に決まってないならさ・・・俺と一緒に来ない?」

男はニコッと笑って、そう提案した。

「は?嫌ですよ。」

「秒で嫌がるじゃん。いいじゃん、行くあて無いんでしょ?」

「あなたについて行くくらいなら死にますよ。」

「酷いなぁ」

男はしょんぼりしながら、だが口角は上げながらそう言った。

だが、意外とこのニヤつきは効果があるのかもしれない。

本当なら今にも泣き叫びたい気分なのに、この男の勢いにおされてついつい喋ってしまう。

(本当に不思議な男だ。)

「ところで、あなたは何なんですか?」

「あ一自己紹介まだだったか、俺は白波 黒、学校で先生やってまーす。」

「先生!?」

「見えないでしょー、結構強いんだよ一俺」

強さの問題じゃなく、性格の問題だと突っ込みたくなったが、無駄そうだったのでやめておいた。

「だからさ・・・うちの学校来ない?」

「学校・・・はもう行ってるので・・・」

「でも、もう親いないんでしょ?なら、学費払えないじゃん。それにこの家ももう使い物にならないし・・・」

何も反論出来なかった。

今まで親に甘えてきたせいでまともにこの世界のことも分からない。だからこそ、死んだ方が楽だと思った。

「うちの学校は全寮制!先生からの手厚いサポート!そして、何より推薦された生徒はタダ!タダなんだよ!?タダ!」

「いや・・・でも・・・」

「俺は君を推薦する!」

「無理です!!」

白波さんの熱量に圧倒されそうになったが、大声で勢いを止めた。

「じゃあ、1ヶ月体験入学してみない?嫌だと思ったらすぐにやめてくれて構わないし、俺はもう関わらない。どう?」

「..はぁ、1週間なら・・・」

押し切られた。

「よし!決まり!行こう!今すぐ行こう!」

「え?何処に?何処に!?」

半分誘拐状態で車に押し込まれる。

「何処に行くんですか?」

「もちろん学校、霞ちゃんのね。」

白波さんは運転しながら話した。

「は!?何でですか?」

「そりゃあ黙って他の学校の子を引き抜くのはダメでし

よ。」

「..そういうところはまともなんですね。」

「霞ちゃんって顔に見合わず毒舌だよね」


~霞の学校~

「着いたー!でけぇー!流石お嬢様学校!」

「あんまり近づかないでください。」

こんなのの知り合いだと思われたくない。

「あれ?小原さんじゃない?横のお方は?」

僕は今にも逃げ出したかった。この声はアイツだ・・・

「おお、霞ちゃんコイツ誰?」

「お初にお目にかかります。小原さんのクラスメイトの神崎と申します。どうぞお見知り置きを。」

白波さんの言葉遣いを見て神崎さんは面白いくらいに引きつった笑顔で笑って見せた。

きっとお気に召さない言葉遣いだったのだろう。

「小原さん。どうしたの?暗い顔して。」

「鬼魔が家に出て、父と母が…•・」

「あらーお気の毒に・・・それで、横のお方は?」

「親の知り合いらしいです。それで鬼魔から助けてくださって・・・」

「そうなの、で、何故ここに?」

「実はこの学校を辞めて、この方の学校に転校することになりまして・・・」

「それは残念・・・せっかく仲良くなれたのに・・・」

(よく言うよ)

「それでは」

僕は白波さんの手を引いて、逃げるようにその場を離れた。

ああいう奴とは関わらない方がいい。

「やっと出来損ないがいなくなるわね。せいせいするわ。」

奥からアイツの声が聞こえる。

ヒソヒソと仲間と喋っているのだろう。

「なんだアイツ陰口言いあがって。」

白波さんがイラつきながら言う。

「陰口だけじゃないですよ。でも、しょうがないですよ。実際私は出来損ないですし。それに、別にあの子だけじゃないんです。他の子達も少し隠すのが上手いだけで、同じようなことをしているんです。」

「いや、しょうがないとかじゃなく、霞ちゃんは嫌じゃないの?」

「え?」

少し驚いた。

考えたことがなかった。自分の感情なんて判断の基準に入れてなかった。

いつも一般的な考え方の真似をしているだけだった。

「で、嫌なの?」

「どちらかと言えば、嫌ですね。」

「へー、なら反抗すれば?」

「嫌ですよ、問題起こしたくないですし。」

「よく分からないな。」

僕にもよく分からなかった。これが悪魔と人の差なのだろうか?

「まぁ、行くか。」

校長室に向かった。


コンココンコンココンコン


白波さんはリズミカルに校長室の扉ノックして入った。

笑いそうになった。

「「失礼します。」」

「小原さん。どうされましたか?」

校長先生はノックのせいで少し怒り気味に僕たちを見た。

「校長先生、私はこの学校を退学したいと考えています。退学した後はこの白波さんの学校に転校したいと考えています。退学する手続きを・・・」

「あーいいですよ。面倒くさい。辞めるなら早く辞めてください。正直言ってあなたにはうんざりしていたのですよ。」

鼓動が早くなる。

「初めの方は成績優秀だったのに、事故にあってからというもの、甘えていたのかは分かりませんが、成績は毎回最下位、それに普段の行動も・・・」

バン

白波さんが机を叩いた。

「うるせぇなあ!そんなん 辞める相手に言って何になるんだよ。面倒くさい。何だこの学校。生徒は性格悪いし、校長がこんなで、肥溜めみたいなところだな!」

「いいんです!白波さん!」

これ以上ここにはいたくなかった僕は早く話を切り上げようとした。

「それでは、私達はこれで・・・」

部屋を出て、扉を閉めた途端中から声が聞こえた。

「なんて礼儀のない野蛮な悪魔だ…・・せいせいするわ。」

白波さんは不機嫌そうに語り始めた。

「霞ちゃん、別に問題を起こしたくないという考え方は悪くない。何ならその生き方の方がきっと賢いのだろう。だがな、俺は逃げて後悔するくらいならその場でそいつをぶん殴るぞ。」

今日は驚きの連続だ。

僕が驚いたのは白波さんがまともなことを言ったからでは無い。自分の頬に水滴があったからだ。泣いていたのだ。

そして、気づいた。

とんでもなくイラついていたのだ。

ただでさえ、慕っていた親が殺され、その上にあの校長や神崎はクソみたいなことを言いやがる。怒りで泣いていたのだ。

ふつふつと湧いてきた怒りに、白波さんは油を注いだ。

「殺しちまえ。誰もお前を咎めない。咎めるやつは殺し

ちまえ。」

笑いながら白波さんは扉を蹴破った。

校長は豆鉄砲食らった鳩みたいな顔をしてこちらを見ていた。

「ごちゃごちゃごちゃごちゃ、うるせぇなぁ!てめぇがどう考えてるか知らねぇけどよ!そんなちっぽけな脳みそで考える言葉なんぞたかが知れてるんだよ!やめろ!?辞めてやるよ!お前はもう先生じゃない!偉そうにドブみてぇな匂いの口きいてんじゃねえぞ!」

自分でも驚くくらいの声と罵倒が出てきた。そして、声を荒げれば荒らげるほど、能力が暴れそうになっていた。どうにか理性で抑えていた。

「そんなやつ殺してもいい。殺してしまえ。」

白波さんの声が聞こえた。

身体中に縛り付けられていた鎖が外れたように、とても解放された良い気分になった。

その瞬間リミッターが外れ、抵抗する校長の能力を突っ切り、氷の矢が校長の腹を貫いた。

だが、まだ怒りは収まらない。校長を氷漬けにし、バラバラに壊した。

僕は能力を一気に使いすぎてしまい、気を失ってしまった。


目が覚めると、知らない部屋のベットの上にいた。

「お?目が覚めた?」

横には白波さんがいた。

「めちゃくちゃ強いじゃん!俺はやっぱり君を推薦したい!」

そう言った白波さんの目はキラキラしていた。

「まぁ、今日は休んで、明日から授業をしよう。」

そう言って、白波さんは部屋から出た。

「あーそうだ。それ入学祝いね。」

白波さんは扉を開けて顔だけ覗かせて指を指した。

指の先を見ると、机の上に箱があった。

中を除くと中には神崎さんの頭が入っている。

箱からは血が滴り、水溜まりのようになっていた。

狂ってる。この世界は狂ってる。

そう思った。

そして、この世界にいると私も狂っていく・・・

血が溜まり、赤い鏡のようになった机に写った私の顔はニッコリと笑っていた。

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